【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸

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第一章 前半

第21話:神獣の使徒

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 ◆◇◆◇ 時は少し遡り、リリー視点 ◆◇◆◇


 私たちはコウガと別れた翌日、北門の側にあるとある宿に向かっていました。

「コウガと出会って、やっと可能性が出てきたのに『神獣の試練』を早めるだなんて……」

「うん。『堕ちた獣』を倒す希望がようやく見えたのに……」

 向かう理由は、この街に来ている灰色狼の獣人『カウス』という人物と会うためです。
 灰色狼の獣人族と私たち白き獣の獣人族とは不仲なのですが、カウスは比較的話の通じる相手なのがまだ救いでしょうか。

「ここで連れ戻されるわけにはいかない。カウスならわかってくれるはず……」

「ようやく使徒になってセツナ様にお仕えすることになったのに……」

 神獣『セツナ』様、それは私たち獣人族が暮らす『猛き森』の守り神。

 このセツナ様に仕えるのが『神獣の使徒』。
 私たち『白き獣』の獣人族代表に代々受け継がれている称号です。
 この称号は、族長の娘であるリリーとルルー私たちが受け継ぐことになっていました。

 いいえ、確かに受け継ぎはしたのです。

「今の私たち二人だけで挑んでも『神獣の試練』を乗り越えられるとは思えない……」

「堕ちた獣に打ち勝つにはまだまだ力が足りない……」

 称号を持つ者は『神獣の試練』にて『堕ちた獣』に挑むことが許されており、見事乗り越えれば『神獣の加護』を授かることが出来ると言われています。

 しかし、それが本当かどうかはわかりません。
 なにせ、もう長い間この試練に打ち勝ったものはおらず、私たちの母や祖母も力及ばず敗れてしまっているからです。

 ただ、セツナ様の助力により、母も祖母も命は失わずにすみました。

 しかし今回は……。

「なんでいなくなっちゃったんだろうね……」

「うん……」

 ことの発端は三ヶ月前。
 私たち姉妹が『神獣の使徒』となる儀式が行われるはずだったその日、神獣『セツナ』様が忽然と姿を消されたのです。

 私たちは白き獣の一族総出で探しましたが、見つけることはできませんでした。

 そしてセツナ様が姿を消された数日後。
 急遽開かれることになった族長会議の場にて、灰色狼の獣人族族長『ゲウロ』が「セツナ様が姿を消されたのはお前たち姉妹の力が足りないからだ。だからその強さの証を立てろ」と、無理やり一年後に『神獣の試練』を受けることを承諾させられてしまったのです。

 セツナ様が姿を消されたタイミングがタイミングだけに、私たちも責任を感じてその要求を受けるしかありませんでした。

 しかし、セツナ様が不在の今、もし挑戦して敗れれば命はありません。
 そのため私たちは、すこしでも早く強くなるために冒険者になったのです。

 正直、たった一年でどこまで強くなれるのか不安で仕方ありませんでした。
 だけどコウガと出会ったお陰で冒険者生活は順調に進み、日々強くなっていくのを感じてようやく希望が見えてきていました。

 それに神獣の試練にはつがいになる者も一緒に挑めます。
 ルルーにはまだ話していませんが、きっとルルーも気持ちは……。

 いいえ、この件は置いておきましょう。
 それより今は、目の前の問題をなんとかしなくてはいけません。

「だというのに、いきなり次の『双生の満月』の日に試練を行うとか急すぎます……」

 そんな矢先、ゲウロから手紙が届きました。
 内容は、次の『双生の満月』、今日からだと三日後になるのですが、その日に『神獣の試練』を行うから迎えをやると書かれていたのです。

 約束が違います!
 いくら順調にいっているとはいっても、まだ冒険者になって半年も経っておらず、さすがに今試練に挑んで打ち勝てる可能性はほぼないでしょう。

 ここはなんとしてでも、この無茶な要求をはねのけ、当初の予定通り一年後の挑戦で納得してもらわなければなりません。

 そんなことを二人で話し合っているうちに、どうやら目的の宿に着いたようです。

「ごめんください……にゃ」

「失礼。ここにカウスという者が泊っているかと思うのです……にゃ」

 ルルーが言葉足らずに宿の主人に尋ねると、一瞬値踏みするような視線をこちらに向けてから笑顔になり……。

「カウス様は奥の部屋でお待ちです。お二人が訪ねてきたら案内するように仰せつかっておりますので、どうぞこちらに……」

 と、奥の広間に案内してくれることになりました。

 この宿の主人は、あまり見かけない灰色の犬・・・・の獣人のようです。

 しかし、ここで違和感に気付くべきでした。
 案内されるままに入った部屋には、誰もおらず……。

「「ん? 誰もいない……にゃ」」

 待っていると言っていたはずだが……そう思い、案内してくれた宿の主人に訪ねようとした時でした。

「やぁ、リリー様、ルルー様。お迎えにあがりましたよ」

 背後からかけられたのはカウスの声。

 私たちに気配を察知させずに後ろに回り込むなんて!?
 突然現れた気配に慌てて振り向こうとしましたが、後頭部に衝撃が走り……私たちはそこで意識を失ってしまったのでした。
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