君に可愛いがられたい

結衣可

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第1話 はじめまして、生徒会長

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《登場人物》

椎名 遼(しいな りょう)
 高校2年生・生徒会長
・明るく素直な性格で、誰にでも愛想がよい
・周りに可愛がられるタイプ

高峰 孝一(たかみね こういち)
 高校1年生・新入生
・無口で体が大きいので、よく怖がられるが、
 本当は誠実で面倒見のいい性格
・4人兄弟の長男で、つい世話を焼いて
 しまうタイプ




春の光が差し込む校舎の廊下に、真新しい制服を着た新入生たちが緊張した面持ちで並んでいた。
窓の外では桜の花びらがまだ少し残り、校庭にちらちらと舞っている。グラウンドの端では野球部が声を張り上げていて、校舎の中にもその活気が響いてきた。

「じゃあ、順番に案内を受けて、教室に向かってくださいねー」

担任の先生が声をかけると、前に立っていたのは整った制服姿の先輩だった。
姿勢がすっと伸びていて、明るい雰囲気をまとったその人に、自然と新入生たちの視線が集まる。

「椎名遼です。生徒会長をしています。分からないことがあれば、気軽に声かけてくださいね」

――生徒会長は、まるでアイドルみたいだった。
明るくて、優しそうで、にこにこしていて。
自分の前に立ったとたん、その笑顔が、ほんの一瞬だけ止まった気がした。

「……えっと、高峰くん?」

「……はい」

「そっか、高峰くん。……じゃ、行こっか」

遼はそう言って歩き出す。
廊下には、部活動の勧誘ポスターが色とりどりに貼られていて、新入生を迎える空気に満ちていた。

(……でかいな、この子)

新入生代表を務める高峰孝一は、無口な1年生だった。背が高く、体つきもしっかりしていて、長めの髪に鋭い目つき。
正直、見た目だけなら“ちょっと怖い人”だ。

黙って遼の後ろをついてくる足音は静かで、肩が触れそうになるたびに、さりげなく一歩引いてくれる。しかも、ほんの少し歩幅を狭めたように感じた。

(僕に合わせてくれてる……のかな?)

階段を上りながら、遼はちらりと振り返った。
窓から差し込む光に孝一の横顔が照らされ、真面目さがにじみ出ているようだった。

「緊張してる?」

「……はい」

「ふふ、大丈夫だよ。ここ、みんな優しいから」

――その時だった。

「椎名先輩だけでいいです」

小さな声だったけど、確かに聞こえた。

「……えっ?」

顔を向けると、孝一はすぐに視線をそらしてしまった。
表情は硬いのに、その頬がほんのり赤いように見える。

(……な、なんだろ)

遼は胸の奥がくすぐったくなるのを感じて、思わず心臓のあたりを押さえた。

――どうして?

***

孝一の案内が終わり、生徒会室に戻った。
窓から見える校庭には、新入生たちが集まって部活動の勧誘を受けている。
そのざわめきを聞きながら、遼は軽くため息をついた。

(……変な子だったなぁ)

いや、変というより、不思議な雰囲気の子。あんな無表情なのに、唐突に「椎名先輩だけで」とか言ってくるあたり、やっぱり読めないタイプだ。

――だけでいいって、どういうことなんだろう。

と、そこへ。

「失礼します」

ノックもそこそこに扉が開き、入ってきたのは孝一だった。
背の高さのせいか、生徒会室のドアが少し狭く見える。

「あ……高峰くん?」

「担任に、生徒会から書類を受け取るように言われました」

そう言って差し出された手は大きく、遼はそのまま見入ってしまった。
体格に似合わず指先はきれいで、意外と丁寧に扱ってくれそうな手。

(って、何考えてんだ、僕……)

「あ、うん、これかな。はい、どうぞ」

手渡すとき、指がかすかに触れ、遼の心臓が「ドクン」と跳ねた。

「……っ、あ、ごめん!」

「いえ……」

顔を上げると、孝一の表情はやっぱり読みづらい。
でもよく見ると、ほんの少しだけ口元がやわらかくなったように見えた。

(あ、なんか、ふわってする)

「他に何か、お手伝いすることはありますか?」

「えっ?」

唐突な申し出に、遼は瞬きをした。

「いえ、その……椎名先輩、忙しそうだったので」

「…………」

しばらく何も言えなくなり、遼は慌てて真面目な顔を作った。

「う、うん。じゃあちょっとだけ手伝ってくれる?」

孝一の目が、ほんの少しだけ柔らかくなった。
その表情に遼は思わず、見入ってしまった。
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