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第10話 再会と謝罪
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穏やか日常が戻ってきたある日、セオドア・ラインハルトはレオナード・フォン・グランツと共に王城の応接間に向かった。
重々しい扉が開かれると、その先に立っていたのは――クリストフ・フォン・グランツ。
「……会長」
セオドアの胸がきゅっと締め付けられる。懐かしさと安堵、そして言葉にできない負い目が一度に押し寄せた。
「殿下……」
セオドアはレオナードを見上げると、顎で促され、小さく苦笑を浮かべた。
クリストフの前に立つと、セオドアは真っ先に深々と頭を下げた。
「……会長、本当にすまなかった」
「……」
クリストフは目を細めてセオドアを見つめ、口を開かずに耳を傾ける。
「副会長として、側近として会長を支えるべき立場だったのに……何も言えずに、勝手に姿を消した。生徒会のみんなにも……迷惑をかけた」
声が震え、言葉が途中で途切れた。
クリストフは深く息を吐き、やっと口を開いた。
「……兄上が、お前を離さなかったんだろう?」
セオドアの目が大きく見開かれる。
「だから気にするな。お前が悪いわけじゃない」
クリストフの声は冷静だったが、その奥には確かな温かさが滲んでいた。
「それより……大丈夫なのか? 暗殺されかけたって聞いた」
「……っ」
セオドアの胸の奥に、言いようのない痛みが広がる。
「俺はずっとセオドアのことが気になっていた。……無理をしていないか、兄上に無茶をされていないか」
セオドアは思わず苦笑し、視線を逸らした。
「……心配ばかりかけてるな、俺は」
クリストフは短く言い切る。
「――お前が無事なら、それで十分だ」
その一言に、セオドアの胸がじんと熱くなった。
小さく息を吐き、セオドアは絞り出すように呟いた。
「……ありがとうございます、会長」
話し終えると、セオドアが退室し、応接室にはレオナードとクリストフだけが残された。
重い空気が流れる。
「……会わせてくれて、ありがとうございます」
クリストフが先に口を開いた。
「責任感の強い彼のことです……ずっと気にしていたでしょうから」
レオナードは腕を組んだまま、弟を真っ直ぐに見やる。
「別にいつでも会いにくればいい……ただ、セオドアは俺のそばに置く。それを忘れるな」
率直すぎる宣言に、クリストフは眉をわずかに寄せる。
「兄上。彼は確かに今は兄上の傍にいます。しかし……今まで彼が俺を支えてくれていたのも事実です」
金の瞳と金の瞳が正面からぶつかる。
「俺は彼に感謝しているし、信頼もしている。正直渡したくはありません。それでも――兄上が本気で大事にしてくださるのなら、何も言いませんが」
一拍置いて、クリストフは低く続けた。
「もし……手を離すようなことがあれば、その時は取り返しますので」
その真剣な声音に、レオナードの唇がわずかに吊り上がった。
「はっ、……生意気なことを」
「セオドアを取られたんです、これくらい言わせてください」
クリストフも視線を逸らさずに答える。
張り詰めた空気の中、それでも互いに相手の“真剣さ”を認め合う気配があった。
そのやり取りを、ドアの隙間から耳にしてしまったセオドアは、額に手を当てていた。
(……俺、二人の王子にここまで思われているのか……)
顔を赤らめ、小さくぼやく。
「……幸せ者だな、俺……」
その声は誰にも届かず、静かな廊下に溶けていった。
重々しい扉が開かれると、その先に立っていたのは――クリストフ・フォン・グランツ。
「……会長」
セオドアの胸がきゅっと締め付けられる。懐かしさと安堵、そして言葉にできない負い目が一度に押し寄せた。
「殿下……」
セオドアはレオナードを見上げると、顎で促され、小さく苦笑を浮かべた。
クリストフの前に立つと、セオドアは真っ先に深々と頭を下げた。
「……会長、本当にすまなかった」
「……」
クリストフは目を細めてセオドアを見つめ、口を開かずに耳を傾ける。
「副会長として、側近として会長を支えるべき立場だったのに……何も言えずに、勝手に姿を消した。生徒会のみんなにも……迷惑をかけた」
声が震え、言葉が途中で途切れた。
クリストフは深く息を吐き、やっと口を開いた。
「……兄上が、お前を離さなかったんだろう?」
セオドアの目が大きく見開かれる。
「だから気にするな。お前が悪いわけじゃない」
クリストフの声は冷静だったが、その奥には確かな温かさが滲んでいた。
「それより……大丈夫なのか? 暗殺されかけたって聞いた」
「……っ」
セオドアの胸の奥に、言いようのない痛みが広がる。
「俺はずっとセオドアのことが気になっていた。……無理をしていないか、兄上に無茶をされていないか」
セオドアは思わず苦笑し、視線を逸らした。
「……心配ばかりかけてるな、俺は」
クリストフは短く言い切る。
「――お前が無事なら、それで十分だ」
その一言に、セオドアの胸がじんと熱くなった。
小さく息を吐き、セオドアは絞り出すように呟いた。
「……ありがとうございます、会長」
話し終えると、セオドアが退室し、応接室にはレオナードとクリストフだけが残された。
重い空気が流れる。
「……会わせてくれて、ありがとうございます」
クリストフが先に口を開いた。
「責任感の強い彼のことです……ずっと気にしていたでしょうから」
レオナードは腕を組んだまま、弟を真っ直ぐに見やる。
「別にいつでも会いにくればいい……ただ、セオドアは俺のそばに置く。それを忘れるな」
率直すぎる宣言に、クリストフは眉をわずかに寄せる。
「兄上。彼は確かに今は兄上の傍にいます。しかし……今まで彼が俺を支えてくれていたのも事実です」
金の瞳と金の瞳が正面からぶつかる。
「俺は彼に感謝しているし、信頼もしている。正直渡したくはありません。それでも――兄上が本気で大事にしてくださるのなら、何も言いませんが」
一拍置いて、クリストフは低く続けた。
「もし……手を離すようなことがあれば、その時は取り返しますので」
その真剣な声音に、レオナードの唇がわずかに吊り上がった。
「はっ、……生意気なことを」
「セオドアを取られたんです、これくらい言わせてください」
クリストフも視線を逸らさずに答える。
張り詰めた空気の中、それでも互いに相手の“真剣さ”を認め合う気配があった。
そのやり取りを、ドアの隙間から耳にしてしまったセオドアは、額に手を当てていた。
(……俺、二人の王子にここまで思われているのか……)
顔を赤らめ、小さくぼやく。
「……幸せ者だな、俺……」
その声は誰にも届かず、静かな廊下に溶けていった。
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