拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可

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第1話 出会い

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《登場人物》
 セナ・フェルン
  年齢:16歳
  身分:子爵家三男(実質ほぼ平民暮らし) 
  所属:王立貴族学院・魔法理論科
  立場:奨学生 
  前世:限界社畜サラリーマン(30代) 
  外見:身長は平均より少し低め。細身・華奢 
   髪:柔らかい茶~金の中間色 
   瞳:淡い金色(光が差すと透明感が増す)
  性格:地味で控えめ/真面目/感情を外に出すのが苦手
 スキル:希少な癒やしの光魔法(秘匿している)

 アレクシス・ヴァルデリオ
  年齢:17歳 
  身分:公爵家次男 
  所属:王立貴族学院・騎士/魔法複合科 
  立場:名家の問題児  
  外見:高身長で鍛えられたがしなやか 
   髪:濃い金髪 
   瞳:鋭い蒼
  服装:制服は着崩しがち
  性格:観察眼が鋭い、人の嘘や媚びにすぐ気づく
     口は悪いが実は誠実、独占欲が強い



王立貴族学院の補習室は、いつ来ても落ち着かない。
廊下の奥、普段使われることのない部屋。罰を受けた生徒か、教師に目を付けられた者だけが呼び出される場所だ。

セナは窓際に立ち、校舎裏の庭を眺めていた。
風に揺れる木々。規則正しく刈り込まれた芝。遠くから聞こえる剣戟の音。――すべてが、ここには自分の居場所がないことを静かに教えてくる。

(……補習、か)

ため息はつかない。癖になってしまうからだ。
ただ、胸の奥で小さく息を整える。

今回の呼び出し理由は明白だった。
提出課題の評価が「優秀」すぎた。

――まただ。
目立たないように、平均よりほんの少し上。そう計算していたはずなのに、気が緩んだらしい。仕事や課題を真面目に取り組んでしまう性格は、前世から変わらない。

(期待されると、面倒になる)

セナは無意識に指先を握った。
前世で何度も味わった感覚。評価され、任され、断れず、壊れた記憶。

今世では、同じ失敗はしないと決めている。
だから――静かに、何事もなく、卒業したい。

扉が開く音がした。

反射的に振り向きそうになって、セナは動かなかった。
視線を向ければ、何かが始まってしまう気がしたからだ。

入ってきた気配は一人分。
足音は迷いなく、遠慮がない。

(……貴族だ)

それだけで分かる。
空気を押し分けるような存在感。慣れきった歩調。

「……ここか」

低く、少し気だるげな声。
セナは窓の外を見つめたまま、反応しなかった。

沈黙が落ちる。

数秒。あるいは十数秒。
居心地の悪さが、じわじわと皮膚を這う。

(話しかけないで。どうか、そのまま――)

だが、そう願ったところで、世界は都合よくできていない。

「……おい」

声が近づいた。
セナは、ゆっくりと息を吸う。

そのとき、扉が再び開いた。

「二人とも、揃っているね」

教師の声だった。
救われた、と思った自分に、セナは少しだけ嫌悪を覚える。

「今回の補習は、課題の共同提出だ。ペアで取り組んでもらう」

共同。
その単語だけで、胸がきゅっと縮んだ。

「――セナ・フェルン君、君はとても優秀だ。一方、アレクシス・ヴァルデリオ君は今学期課題を一切提出していない。申し訳ないが、彼の指導役をお願いしたい」

名前を呼ばれて、セナはようやく視線を教師のほうへ動かした。

「……指導、ですか。学年も僕のほうが下ですが……」

「魔法理論については君に勝てる生徒は今いないよ」

「……そんなことは」

ふと、初めて視線を彼の方へ向けた。

そして、真正面に立つ少年と、目が合った。

淡い金色の視界に、鋭い蒼が飛び込んでくる。
強く、冷たく、まっすぐな瞳。

――綺麗。

そう思った瞬間、自分の感情に驚いた。
人を見て、綺麗だなどと感じることは滅多にない。

だが、その一瞬のためらいが、致命的だった。

アレクシスは、はっきりと見たのだ。
セナの瞳が、自分を映した瞬間に、わずかに見開かれたことを。

(……なんだ、今の)

胸の奥が、唐突にカッと熱を帯びた。

今まで何百人と向けられてきた視線とは違う。
媚びも、恐れも、興味もない。
ただ――静かで、深くて……、思わず見入ってしうような。

「……あの、よろしくお願い致します」

セナが先に頭を下げた。
声は抑えめで、丁寧で、感情がない。

それが、妙に腹に落ちなかった。

「あ、あぁ……アレクシスだ」

自分でも驚くほど、素っ気ない声が出た。
目の前の奨学生は、再び視線を逸らし、机に向かう。

教師が説明を始める中、アレクシスはちらりとセナを盗み見た。
細い肩。整えすぎていない髪。無駄のない動き。

目立たない。
けれど、なぜか目が離せない。

(……面白い)

その感情が何なのか、まだ分からない。
ただ一つ確かなのは、この出会いが自分の退屈な学院生活を変えてくれそうな気がした。

教師が補習の詳細を説明し終えると、早々に退出した。重い扉が閉まる音が補習室に響き、再び静寂が訪れる。セナは机に向かったまま、配布された課題用紙をじっと見つめている。

共同課題――この言葉が頭の中でぐるぐると巡り、前世の記憶がちらつく。

(共同作業……あの時もそうだった。プロジェクトリーダーに任命され、メンバーの期待を一身に背負い、そして――)

「おい」

突然の声に、セナははっと我に返った。振り向くと、アレクシスが思っていたより至近距離に立っていた。蒼い瞳が細められ、興味深げにセナを観察している。

「ずっと黙ってたけど、何を考えていた?」

「……課題のことを、考えていました」

「へぇ?で、その課題だが」

アレクシスがセナの隣の席に腰を下ろす。皮革の匂いと、ほのかな汗の気配が漂ってきた。訓練の後なのだろう、制服の上着は脱ぎ、白いシャツの袖まくりたくし上げている。鍛えられた腕が、セナの視界の端に映る。

「俺はあの教師の言ってること、ほとんど聞いてなかった。説明してくれ」

セナは少し目を丸くした。公爵家の息子が、教師の指示を聞いていないとは。それもこれほどあからさまに。

「……共同課題は、魔法理論「魔力消費」についての論文です。二週間後の提出で、評価が合格点に満たない場合、追加の補習が――」

「詳細はいい。で、お前、できるのか?」

アレクシスの問いかけは直接的だった。セナは無意識に眉をひそめかけたが、すぐに平静を装う。

「……できるように、努力します」

「努力、か」

アレクシスが嘲笑うように口端を歪めた。

「お前、セナ・フェルンって言うんだよな。魔法理論科の首席だと聞いたが」

冷や汗が背中を伝う。できるだけ目立たないようにしてきたのに――知られたくなかった。

「……たまたまです。運が良かっただけ――」

「運で首席は取れねえよ」

アレクシスが遮る。その声には、なぜか苛立ちが滲んでいた。

「俺を見ろ。話してる時は相手の目を見るのが礼儀だろう?」

「……すみません」

仕方なく、セナはゆっくりと顔を上げた。淡い金色の瞳が、再び鋭い蒼と向き合う。心臓がばくばくと騒ぎ出すのを感じる。

(落ち着け……大丈夫、ただの共同課題だ。終わればもう関わり合いはない)

「その瞳……」

アレクシスが呟く。声は先ほどより幾分か柔らかく、しかしそれ以上に危険な感触があった。

「金色だな。珍しい色だ」

「……ありがとうございます?」

「褒めてねえよ」

アレクシスはからかうように笑った。その笑顔は、さっきまでの冷たさとは違って、どこか本物の興味に満ちているように見えた。

「で、論文だが、俺は書く気はない。お前が全部やれ」

「……それは、困ります」

思わず、セナは強く言ってしまった。共同課題なのに、一方が全てをやるわけにはいかない。何より――

(また、自分だけが負担を背負うのか)

前世の記憶が疼く。あの頃も、そうだった。能率が良いからと仕事を押し付けられ、断れず、最後は潰れて――

「なぜ困る?」

アレクシスが尋ねる。その瞳は真剣で、セナの反応を逐一追っている。

「共同課題です。二人で分担するべき――」

「お前が書く方が効率がいいだろう。俺は魔法実技が専門だ。理論なんてつまらん」

「ですが――」

「ただし、条件がある」

アレクシスがセナの言葉を遮り、身を乗り出した。距離が近すぎる。セナは思わず後ずさりかけたが、机に阻まれる。

「お前、俺と一緒に作業しろ。放課後、な」

「……なぜですか? 僕一人で書いた方が、アレクシス様の時間も節約できるでは――」

「ダメだ、俺がそうしたいと言ってる」

その言葉は、全てを飲み込む力を持っていた。貴族の子弟らしい、傲慢でわがままな言い分。しかし、アレクシスの瞳には、それ以上の何かが潜んでいるように感じられた。

「……わかりました」

抵抗しても無駄だと悟った。セナはうつむき、課題用紙を整えるふりをした。

(二週間だけだ。我慢すればいい)

「よし、それで決まりだ」

アレクシスは満足げに席に戻った。しかし、その視線は依然としてセナから離れない。

「で、いつから始める? 今日からでいいな?」

「……今日は少し――」

「今日からだ」

またしても遮られた。セナは内心で舌打ちしたい衝動を抑える。

(どうして、こんなに押しが強いんだ?)

「では、まずは資料集めから始めましょう」

セナがようやく落ち着いた声で言う。共同作業を避けられないなら、せめて効率的に進めたい。

「図書館に行く必要があります。参考文献を――」

「図書館か。案内しろ」

「……アレクシス様もご存じでしょうに」

「行ったところで、どこに何があるかもわからん」

セナはため息をつきそうになるのを堪え、立ち上がった。

「では、ご案内します」

図書館への道中、セナはできるだけ早足で歩いた。アレクシスがすぐ後ろにいるのが感じられる。存在感が強すぎて、背中が痒くなるようだった。

「おい、もう少しゆっくり歩け。俺はお前の護衛じゃないぞ」

「……そんなつもりでは!」

歩調を緩める。アレクシスが並んで歩きだす。周囲の生徒たちが好奇の視線を向けてくるのを感じる。

(目立ってしまう……)

セナはうつむき気味に歩いた。できるだけ目立たないように、存在を消すように。

「なぜそんなに俯いて歩く?」

「……癖です」

「直せ」

「え……」

「ほら、前をちゃんと向け」

ますます居心地が悪くなる。アレクシスのわがままさに、内心で苛立ちを覚えつつも、表には出せない。

図書館に着くと、セナは慣れた様子で魔法理論の書架へ向かった。アレクシスは珍しそうに館内を見渡している。

「ずいぶんと詳しいな。よく来るのか?」

「……はい、勉強する時に」

「で、どの本が必要なんだ?」

セナは何冊かの分厚い文献を選び出した。アレクシスはそれらをちらりと見て、眉をひそめる。

「全部読むのか?」

「必要な部分だけを参照します。共同課題のテーマは『魔力消費の効率化と応用』ですから――」

「退屈なテーマだな」

アレクシスが嫌そうに言う。

「そんなもの研究して何になる?」

「魔法運用の効率化に――」

「実戦で役立つのか?」

突然の質問に、セナは少し考え込んだ。

「間接的には、役立つと思います。魔力の消耗を抑えられれば、長時間の戦闘も――」

「お前、実戦の話ができるのか?」

アレクシスの瞳が興味深く輝いた。

「奨学生で、魔法理論科の割には、なかなかやるな」

「……本で読んだだけです」

セナは慌てて弁解する。

(危ない……気を付けなければ)

「本で、か。まあいい」

アレクシスは選ばれた文献を手に取ると、近くの閲覧席へと歩き出した。

「早く始めるぞ。時間の無駄だ」

席に着くと、セナは論文の構成を考え始めた。アレクシスは向かい側に座り、選んだ文献のページをめくっているが、どうにも不慣れな様子だ。

「……どこから手を付ければいい?」

意外な質問に、セナは顔を上げた。

「まずは共同で概要を考え、その後で分担するのが効率的かと――」

「じゃ、お前が概要を考えろ。俺は見ている」

またか、とセナは内心で思った。しかし反論しても無駄だと悟り、黙ってペンを握った。

しばらくの間、閲覧室にはペンの走る音だけが響いていた。セナは没頭すると、周囲が見えなくなる癖がある。意識の全てを課題に集中させ、時間の経過も忘れてしまう。

ふと我に返ると、アレクシスがじっと自分を見ているのに気づいた。蒼い瞳が、驚くほど真剣な表情でセナを観察している。

「……な、何か?」

思わず聞いてしまう。アレクシスは少し笑ったが、その笑みはいつもの嘲笑とは違った。

「お前、書き出すと別人のようになるな」

「……そう、ですか」

「無表情で、感情が読めないくせに、ペンを握ると急に生き生きとする。面白い奴だ」

セナは少し照れくさくなり、再びうつむいた。

「……課題に集中しているだけです」

「他のことには集中しないのか?」

「……あまり」

「恋愛とか、遊びとかは?」

突然の個人的な質問に、セナはたじろいだ。

「……そんな余裕はありません」

「ふーん。で、お前には恋人がいるのか?」

「い、いません!」

「好きな奴は?」

「……いません」

アレクシスは満足げに頷いた。

「ふ、それでいい」

(何がいいんだ?)

セナは内心で首を傾げたが、質問する勇気はない。

「で、概要はできたのか?」

「……あ、はい、一応」

セナは書き上げたメモを差し出した。アレクシスはそれを受け取ると、真剣な表情で読み始めた。

「へぇ……なるほど。お前、本当にできるな」

「……ありがとうございます」

「褒めてるわけじゃない。事実を言ったまでだ」

またしても素っ気ない言い方だが、セナは奇妙な感覚を覚えた。アレクシスは、自分を評価している――しかし、それは前世のそれとは違う。利用しようとする打算的な評価ではなく、純粋な認め方のように感じられた。

(錯覚だ……きっと)

「では、分担しましょう」

セナが切り出す。早く役割を決め、別れたい。

「導入部分と理論背景を私が、実践応用と考察をアレクシス様が――」

「いや、全てお前が書け」

「……ですが、さっき――」

「書くのはお前だ。ただし、俺は横にいる」

理解できない。セナは顔を上げ、アレクシスを真っ直ぐ見つめた。

「……なぜですか? それでは共同作業になりません。 二人で分担した方が――」

「俺がお前の書くものを見たいからだ」

またしても、全てを飲み込むような宣言。セナは言葉を失った。

「……ぼ、僕の書くものなど、つまらないものです」

「つまらないかどうかは、俺が決める」

アレクシスは立ち上がり、セナの側に来ると、その肩越しにメモを見下ろした。

「お前の思考過程を見てみたい。お前がどうやって論文を書くのか、俺が知りたいんだ」

近すぎる。アレクシスの息が髪に触れるのを感じ、セナは硬直した。

(離れて……)

しかし、声に出せない。貴族に対してそんなことを言えるわけがない。

「ほら、早く書き始めろ」

アレクシスはセナの隣の席に座り、相変わらず観察を続ける。居心地の悪さに、セナはほとんど何も書けなかった。

「おい、止まるな。さっきまであれだけスラスラ書いていたじゃないか」

「……アレクシス様が見ていると、緊張して」

思わず本音が零れた。アレクシスは少し驚いた表情を見せた後、笑い出した。

「ははっ、そうか。俺が緊張させるのか」

「……すみません」

「謝るな。面白いじゃないか」

アレクシスはますます楽しそうだ。

「お前、なかなか正直な奴だな。表面は大人しいくせに」

セナは返事ができず、ただ俯くしかなかった。

しばらくして、アレクシスが突然立ち上がった。

「今日はここまでだ」

「……ですが、まだほとんど――」

「いいから、終わりだ」

アレクシスはそう言うと、セナの書いたメモを手に取った。

「これは俺が預かる。明日の放課後、またここに来い」

「……明日もですか?」

「二週間連続だ。忘れるな」

セナは絶望的な気分になった。これから二週間、毎日アレクシスと共に過ごさなければならないのか。

(最悪だ……)

「は、はい。では、失礼します」

早く逃げ出したい一心で、セナは立ち上がり、一礼すると図書館を後にした。

廊下を歩きながら、胸の鼓動が激しいのに気づく。アレクシス・ヴァルデリオ――公爵家の息子で、学院きっての問題児。なぜそんな人物と共同課題をしなければならないのか。

(目立たないようにしてきたのに……)

ふと、振り返ると、アレクシスが図書館の入り口に立って自分を見送っているのに気づいた。蒼い瞳が、遠くからでもはっきりと輝いている。

(見ている……?)

慌てて視線を逸らし、セナは早足でその場を離れた。

寮に戻る道すがら、セナは今日の出来事を反芻した。アレクシスの態度は不可解だった。わがままで傲慢なのに、どこか純粋な好奇心に満ちている。

(なんで……?)

自分にはこれといった取り柄がない。地味で、目立たない奨学生に過ぎない。前世でも、特に人から好かれるタイプではなかった。むしろ、利用されやすいとよく言われた。

寮に戻ると、隣室のルカが談話室で読書をしていた。

「おかえり、セナ。今日は遅かったね」

「……補習があって」

「珍しいね、セナが補習なんて。大変だった?」

ルカは心配そうに顔を上げる。セナはうつむきながら鞄を片付けた。

「うん、まあ……」

「どんな 補習なの?」

「……共同課題を命じられた」

「共同 !? 誰と?」

ルカの声が少し高くなる。興味津々だ。

「……アレクシス・ヴァルデリオ様と」

「まさか! あの問題児の?」

ルカは驚いて目を見開いた。

「なんでセナが?……大丈夫だった? 無理難題を吹っかけられたりしなかった?」

「……今日のところは、なんとか」

セナは心配させないように答えた。アレクシスの奇妙な好奇心については話さない方がいいだろう。

「でも、二週間連続で共同作業だって」

「ええっ? それは大変だ! セナ、気を付けてよ。あのアレクシス様、女子にも男子にも手を出すって噂だし」

「ぼ、僕なんかそういう対象にもならないよ!……そんなことより、課題の方が」

セナはそっと言い放った。本当は、アレクシスとの関わりそのものが何よりも憂鬱だった。

「そんなことはないと思うけど……。まあ、何かあったら言ってね。いつでも力になるから」

ルカの優しい言葉に、セナはほっとした。

「ありがとう、ルカ」

その夜、セナはなかなか眠れなかった。窓の外には満月が輝き、部屋の中を淡い光で満たしている。ベッドの中でじっとしていると、アレクシスの蒼い瞳が思い出された。

(綺麗だ、と思ってしまった……)

あの瞬間の感情は、自分でも説明がつかない。人に対してそんな風に感じたことは、前世今生を通じて初めてだ。

(ダメだって……深い関わりは避けないと)

そう自分に言い聞かせ、セナは目を閉じた。できるだけ早くこの共同課題を終わらせ、元の静かな日常に戻りたい。それだけを願って。
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