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後日譚・番外編
番外編(猫時代のラセル視点)推し活地獄
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この物語は、俺がまだ“黒猫”だった頃の話だ。
ある日、人間の姿を捨てて、魔法で変身した俺は、剣の国の城下町に潜り込み、そして――ついに再会した。
それは、運命の男、レオナルト・ヴァイス。
冷たい紫の瞳、深く刻まれた孤独の匂い、重い責任を背負ったその背中……憧れの人。
気づいたら……拾われて、彼の屋敷にいた。
「よし、名前をつけるか。……黒いし、“クロ”でいいか」
(シンプルすぎるっ!!)
でも、嬉しかった。
腕の中であたたかく抱かれたあの日、俺は確信した。
(ああ――この人は冷酷な戦鬼なんかじゃない。温かいこの手は、剣より、猫を撫でている方が似合う)
ただの猫として、傍にいる日々は、幸せそのものだった。
だけど……試練も多かった。
【試練その①:なでられる】
「よしよし……今日も無事でよかったな、クロ」
(あああああ、推しの手が、推しの手がぁああ……!)
心臓が爆発する。
のたうちまわりたい。
でも猫だから、喉をゴロゴロ鳴らす以外できない。
(尊死……これは尊死……)
【試練その②:ひざの上】
「ちょっと動けないな……クロ、降りてくれないか?」
(降りるもんか)
居座り続ける。
これは合法。
猫って、そういうものでしょ?
【試練その③:お風呂】
「クロも少し汚れてきたな。……よし、一緒に洗うか」
(やめてくださああああい! 推しといっしょにお風呂なんて~! 嬉しいけど、恥ずかしい~!)
そして何より、最強の天敵――“シリル”の召喚で、全てが狂っていった。
(……まさか、彼が、レオナルトと、そんなことになるなんて……!)
だが、思ってしまった。
(もし、彼が誰かと結ばれるなら、それがこの青年でも、仕方ないかもしれない)
それほどまでに、彼は真っ直ぐだった。
レオナルトに向ける目が、誰よりも純粋だった。
だけど、ねえ、レオナルト。君は、気づいてた?
俺が撫でられるたびに、喜びに震えていたこと。
名前を呼ばれるたびに、生きててよかったって思っていたこと。
……ただの猫じゃなくて、“君を愛した人間”だったこと。
ある日、人間の姿を捨てて、魔法で変身した俺は、剣の国の城下町に潜り込み、そして――ついに再会した。
それは、運命の男、レオナルト・ヴァイス。
冷たい紫の瞳、深く刻まれた孤独の匂い、重い責任を背負ったその背中……憧れの人。
気づいたら……拾われて、彼の屋敷にいた。
「よし、名前をつけるか。……黒いし、“クロ”でいいか」
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でも、嬉しかった。
腕の中であたたかく抱かれたあの日、俺は確信した。
(ああ――この人は冷酷な戦鬼なんかじゃない。温かいこの手は、剣より、猫を撫でている方が似合う)
ただの猫として、傍にいる日々は、幸せそのものだった。
だけど……試練も多かった。
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「よしよし……今日も無事でよかったな、クロ」
(あああああ、推しの手が、推しの手がぁああ……!)
心臓が爆発する。
のたうちまわりたい。
でも猫だから、喉をゴロゴロ鳴らす以外できない。
(尊死……これは尊死……)
【試練その②:ひざの上】
「ちょっと動けないな……クロ、降りてくれないか?」
(降りるもんか)
居座り続ける。
これは合法。
猫って、そういうものでしょ?
【試練その③:お風呂】
「クロも少し汚れてきたな。……よし、一緒に洗うか」
(やめてくださああああい! 推しといっしょにお風呂なんて~! 嬉しいけど、恥ずかしい~!)
そして何より、最強の天敵――“シリル”の召喚で、全てが狂っていった。
(……まさか、彼が、レオナルトと、そんなことになるなんて……!)
だが、思ってしまった。
(もし、彼が誰かと結ばれるなら、それがこの青年でも、仕方ないかもしれない)
それほどまでに、彼は真っ直ぐだった。
レオナルトに向ける目が、誰よりも純粋だった。
だけど、ねえ、レオナルト。君は、気づいてた?
俺が撫でられるたびに、喜びに震えていたこと。
名前を呼ばれるたびに、生きててよかったって思っていたこと。
……ただの猫じゃなくて、“君を愛した人間”だったこと。
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