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後日譚・番外編
IF編 ラセルルート ―シリルが来なかった世界/レオナルト×ラセル(ラセル視点)
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この世界に、シリルは現れなかった。
召喚は失敗した。
それでも俺は、あきらめなかった。魔法で黒猫に変身し、推しのレオナルトに出会い――辛抱強く、そばにいた。
撫でてもらうことで、彼を癒していった。
俺を可愛がることで、彼は少しずつ、休息の時間を持つことになった。
ゆっくりと猫を撫でる、癒しの時間。
あの人は、いつだって孤独だった。
誰も、心を許せる人がいなかった。
人間に裏切られ続け、誰も信用できなくなっていたから。
だけどレオナルトは、黒猫の俺に話しかけるようになっていた。
低く優しい声で、ゆっくりと温かい大きな手で俺を撫でながら、今まで誰にも言えなかっただろう、いろんなことを話してくれた。
レオナルトは、剣を振るいながら、心を凍らせていた。
けれど俺は、猫として、少しずつその心の隙間に入り込んで――そして、人間の姿に戻ってからも、側に居続けた。
◆
人間の姿に戻った夜――月の光が差し込む窓辺で、俺はそっと、あの人に声をかけた。
「……レオナルト」
その瞬間、彼は身を強張らせて振り返った。
俺が猫だったとき、同じ気持ちで「にゃぁ」と鳴いて呼びかけたときは、あんなに優しく顔をほころばせて、振り向いてくれたのに。すぐさま、しゃがみこんで、俺を抱き上げてくれたのに。そして優しく何度も撫でながら、話しかけてくれたのに。
だけど、人間の俺に対して、彼は、鋭い目つきで、にらみつけ、剣の柄に手をかけかけて、今にも抜刀しそうな姿勢になった。でも、すぐに止めた。俺が全く無防備だったからだろう。
驚きと警戒――そして、いぶかしむような、確かめるような目。
猫だったときは、あんなに俺を信頼してくれて、優しい目で見つめてくれたのに。今、同じ人の、その目は、疑いに満ちていた。
だが今も確かに、彼の紫色の瞳は、俺を映していた。
「お前は……魔法の国の王太子、ラセル……?」
彼の唇が、俺の名を呼ぶのを、俺は、うっとりと眺めた。俺は、ゆっくりと頷いた。彼のまなざしから、目を逸らさずに。彼の美しい目から、一秒たりとも目をそらしたくなかったから。
「なぜ、ここにいる」
「ずっと、そばにいたよ。黒猫の姿で」
彼は一歩、近づいた。そして、もう一歩。
「……お前が……あの猫……だったって?」
俺の前に立った彼は、何かを信じたいような、まだ信じきれないような顔で、俺の顔に手を伸ばしかけ、止めた。
だけど、俺が、その手を取った。
「君を癒したかったから。……君を、助けたかったから。愛しているんだ、君を……レオナルト」
そのとき、彼の瞳が揺れた。
「嘘を言うな。そんなことを言って、俺を油断させ、俺に魔法をかける気だな。少しでも、不審な動きをして見ろ、お前を、叩き斬る」
低い声が、少しだけ震えていた。そんな脅しをかけながらも、彼が動揺しているのがわかった。
「嘘じゃないよ。黙ってて、本当に、ごめんなさい。あなたのことが好きすぎて、どうしたらいいか、わからなかったんだ。だからといって、許されることじゃない。好きだからって。俺のやり方は、卑怯だと思うよ。あなたを騙すみたいなこと。俺をぶってもいい。でも、斬らないで。外交問題になるから」
「なんで、猫なんかに……」
「あなたに撫でてほしかったから」
「俺に? なぜ……?」
「……す、好きだから……子どもの頃、最初、あなたと会ったときから、ずっと憧れてたから……」
「……」
「俺が猫だったこと、信じてくれる? 怒ってる?」
「怒ってるさ。重大な機密事項を、敵国の王太子に話してしまったんだからな」
「俺のこと……斬る?」
答えの代わりに、彼は俺の頬に触れた。
ごつごつした手が、優しく髪を撫でた。
それは、俺が猫だった頃とまったく同じ手の動きで――
「……お前が本当に猫だったというなら、撫でさせろ。お前が猫だったときのように。今度は、俺の意思で」
そう言って、彼は俺の髪をゆっくりとなぞった。
その仕草が、何よりの許しだった。
それからの俺たちは、もう二度と離れなかった。
◆
「なぜ、お前は俺のそばにいる?」
そう訊かれた夜があった。
月の光の下で、レオナルトが、珍しく真っ直ぐに俺を見た夜。
「忠誠心か?」
「違うよ。君だからだよ」
「……俺に惚れてると?」
「うん。めちゃくちゃ。……前にも言ったでしょ? わかってるくせに……それとも、確かめたいの? 何度も言ってほしい? 言うけど。言ってほしいなら、何度でも言うけど。あなたが好きだって……」
彼は、微笑んだ。
初めて見せたような、柔らかな笑みだった。
「惚れられるのに慣れてないんだ、俺は」
「じゃあ、慣れるまで、傍にいてもいい?」
「……いい」
その日、彼の指が俺の髪をなぞった。
もう猫じゃないのに、その手の温かさは、ずっと変わらなかった。
――戦争は終わった。
レオナルトが王になることはなかった。代わりに、彼は剣を置いた。
家を出て、小さな村の領主になった。
それは、剣の国でも辺境と呼ばれる場所だったけど、そこには、花畑と小川と、静かな暮らしがあった。
【ある日の夕暮れ】
「ラセル、夕飯は?」
「今日は俺が作る。君の好きな鹿肉のシチュー」
「豪勢だな」
「あなたは細いから、もっと太れ」
「……ふむ」
静かな、穏やかな暮らし。
王にもならず、英雄にもならず。ただ一人の男として、“推し”として“恋人”として、過ごす日々。
【ある夜、寝台の上】
「後悔してる?」
「何を?」
「王にならなかったこと。世界を救わなかったこと」
「――お前を抱きしめられる世界なら、それでいい」
そう言って、レオナルトは俺を腕に引き寄せた。
広くて、あたたかい胸の中で、俺は笑って、目を閉じた。
(この人が幸せなら、それが“世界が救われた証”だ)
シリルが来なかった世界は、たしかに少し寂しかった。
でも、それでも――俺の愛は、この人に届いたんだ。
そして、俺たちは、静かに、愛し合ったまま、穏やかに歳を重ねていった。
◆
……そこまで書いて、俺はペンを置いた。はあ、とひとつ、ため息がこぼれる。
「――こうだったら、よかったのにな」
黒猫の姿のまま、レオナルトの膝にいた日々を思い出す。
魔法を使えば、こういう“世界”に書き換えることも、もしかしたら、できるのかもしれない。
でも――
「まあ、いいか」
彼の本当の幸せを願うなら。それで、いいのかもしれない。
召喚は失敗した。
それでも俺は、あきらめなかった。魔法で黒猫に変身し、推しのレオナルトに出会い――辛抱強く、そばにいた。
撫でてもらうことで、彼を癒していった。
俺を可愛がることで、彼は少しずつ、休息の時間を持つことになった。
ゆっくりと猫を撫でる、癒しの時間。
あの人は、いつだって孤独だった。
誰も、心を許せる人がいなかった。
人間に裏切られ続け、誰も信用できなくなっていたから。
だけどレオナルトは、黒猫の俺に話しかけるようになっていた。
低く優しい声で、ゆっくりと温かい大きな手で俺を撫でながら、今まで誰にも言えなかっただろう、いろんなことを話してくれた。
レオナルトは、剣を振るいながら、心を凍らせていた。
けれど俺は、猫として、少しずつその心の隙間に入り込んで――そして、人間の姿に戻ってからも、側に居続けた。
◆
人間の姿に戻った夜――月の光が差し込む窓辺で、俺はそっと、あの人に声をかけた。
「……レオナルト」
その瞬間、彼は身を強張らせて振り返った。
俺が猫だったとき、同じ気持ちで「にゃぁ」と鳴いて呼びかけたときは、あんなに優しく顔をほころばせて、振り向いてくれたのに。すぐさま、しゃがみこんで、俺を抱き上げてくれたのに。そして優しく何度も撫でながら、話しかけてくれたのに。
だけど、人間の俺に対して、彼は、鋭い目つきで、にらみつけ、剣の柄に手をかけかけて、今にも抜刀しそうな姿勢になった。でも、すぐに止めた。俺が全く無防備だったからだろう。
驚きと警戒――そして、いぶかしむような、確かめるような目。
猫だったときは、あんなに俺を信頼してくれて、優しい目で見つめてくれたのに。今、同じ人の、その目は、疑いに満ちていた。
だが今も確かに、彼の紫色の瞳は、俺を映していた。
「お前は……魔法の国の王太子、ラセル……?」
彼の唇が、俺の名を呼ぶのを、俺は、うっとりと眺めた。俺は、ゆっくりと頷いた。彼のまなざしから、目を逸らさずに。彼の美しい目から、一秒たりとも目をそらしたくなかったから。
「なぜ、ここにいる」
「ずっと、そばにいたよ。黒猫の姿で」
彼は一歩、近づいた。そして、もう一歩。
「……お前が……あの猫……だったって?」
俺の前に立った彼は、何かを信じたいような、まだ信じきれないような顔で、俺の顔に手を伸ばしかけ、止めた。
だけど、俺が、その手を取った。
「君を癒したかったから。……君を、助けたかったから。愛しているんだ、君を……レオナルト」
そのとき、彼の瞳が揺れた。
「嘘を言うな。そんなことを言って、俺を油断させ、俺に魔法をかける気だな。少しでも、不審な動きをして見ろ、お前を、叩き斬る」
低い声が、少しだけ震えていた。そんな脅しをかけながらも、彼が動揺しているのがわかった。
「嘘じゃないよ。黙ってて、本当に、ごめんなさい。あなたのことが好きすぎて、どうしたらいいか、わからなかったんだ。だからといって、許されることじゃない。好きだからって。俺のやり方は、卑怯だと思うよ。あなたを騙すみたいなこと。俺をぶってもいい。でも、斬らないで。外交問題になるから」
「なんで、猫なんかに……」
「あなたに撫でてほしかったから」
「俺に? なぜ……?」
「……す、好きだから……子どもの頃、最初、あなたと会ったときから、ずっと憧れてたから……」
「……」
「俺が猫だったこと、信じてくれる? 怒ってる?」
「怒ってるさ。重大な機密事項を、敵国の王太子に話してしまったんだからな」
「俺のこと……斬る?」
答えの代わりに、彼は俺の頬に触れた。
ごつごつした手が、優しく髪を撫でた。
それは、俺が猫だった頃とまったく同じ手の動きで――
「……お前が本当に猫だったというなら、撫でさせろ。お前が猫だったときのように。今度は、俺の意思で」
そう言って、彼は俺の髪をゆっくりとなぞった。
その仕草が、何よりの許しだった。
それからの俺たちは、もう二度と離れなかった。
◆
「なぜ、お前は俺のそばにいる?」
そう訊かれた夜があった。
月の光の下で、レオナルトが、珍しく真っ直ぐに俺を見た夜。
「忠誠心か?」
「違うよ。君だからだよ」
「……俺に惚れてると?」
「うん。めちゃくちゃ。……前にも言ったでしょ? わかってるくせに……それとも、確かめたいの? 何度も言ってほしい? 言うけど。言ってほしいなら、何度でも言うけど。あなたが好きだって……」
彼は、微笑んだ。
初めて見せたような、柔らかな笑みだった。
「惚れられるのに慣れてないんだ、俺は」
「じゃあ、慣れるまで、傍にいてもいい?」
「……いい」
その日、彼の指が俺の髪をなぞった。
もう猫じゃないのに、その手の温かさは、ずっと変わらなかった。
――戦争は終わった。
レオナルトが王になることはなかった。代わりに、彼は剣を置いた。
家を出て、小さな村の領主になった。
それは、剣の国でも辺境と呼ばれる場所だったけど、そこには、花畑と小川と、静かな暮らしがあった。
【ある日の夕暮れ】
「ラセル、夕飯は?」
「今日は俺が作る。君の好きな鹿肉のシチュー」
「豪勢だな」
「あなたは細いから、もっと太れ」
「……ふむ」
静かな、穏やかな暮らし。
王にもならず、英雄にもならず。ただ一人の男として、“推し”として“恋人”として、過ごす日々。
【ある夜、寝台の上】
「後悔してる?」
「何を?」
「王にならなかったこと。世界を救わなかったこと」
「――お前を抱きしめられる世界なら、それでいい」
そう言って、レオナルトは俺を腕に引き寄せた。
広くて、あたたかい胸の中で、俺は笑って、目を閉じた。
(この人が幸せなら、それが“世界が救われた証”だ)
シリルが来なかった世界は、たしかに少し寂しかった。
でも、それでも――俺の愛は、この人に届いたんだ。
そして、俺たちは、静かに、愛し合ったまま、穏やかに歳を重ねていった。
◆
……そこまで書いて、俺はペンを置いた。はあ、とひとつ、ため息がこぼれる。
「――こうだったら、よかったのにな」
黒猫の姿のまま、レオナルトの膝にいた日々を思い出す。
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