転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー

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後日譚・番外編

番外編 魔法王子ラセル、推しのためなら笑顔で他国を詰める(ラセル視点)

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 俺は、魔法の国の元王太子。
 今は、剣の国に半ば亡命し、レオナルト王と王配シリルの外交顧問を務めている。

 ……で、今日は、隣国から使節団が来てるわけだけど――


「ご無礼を承知で申しますが、剣の国は“内部崩壊”の危険性を孕んでいるのでは?」

(あ、この人、無事に帰れると思ってるんだ……)


「我が国としては、王配が“異世界人”である点も不安材料であり――」

(おやおや、レオナルト様とシリル様の政略を疑ってる? そっか、命知らずか~)


 俺はにこっと笑って、控えめに紅茶を啜った。

 会場は、外交晩餐会。にぎやかなはずの場なのに、俺が話すたびに、周囲の空気がピシッと凍るのはなぜだろう?


「ご懸念、ごもっともです。……ですが、貴国が“口を出せる立場”であるかどうかは、よーく考えられた方がよいかと……」

 にこにこ。にこにこにこ。

(※笑顔で牽制)


 使節たちが、苦笑して言う。

「なるほど、さすがは元・魔法の国の王子殿下――」

「いえ、剣の国がすごいんです。王がすごくて。王配がすごくて。だから俺、ここに居るんです」


(お前たちには、“推し”のすごさ、わかんないでしょ? わからなくていいけど、“邪魔”したら外交的に粉砕するからね?)

 レオナルトは無駄口を叩かない。でも、俺は違う。俺は、推しのためなら口も手も動かす系臣下。


【後日】

「ラセル、また外交席で使節黙らせたらしいな」

「はい。皆さん、非常に礼儀正しくなって帰りました」

「……なぜだろうな。君がいると、皆、目を合わせなくなるんだが」

「謙遜しすぎでは? きっと皆、貴方のオーラに圧倒されてるんです」

(※実際は、魔力の圧も使ってます)


「シリル、どう思う?」

「たぶん、“推しの国”にケチつけたら、ラセルが“笑顔で国家レベルの報復を検討する”からじゃない?」

「そういうことか……」



【エピローグ】

 外交の場で、「剣の国に関わるとやけどする」という噂が、ゆっくりと周辺国に広がっていく。

 それは、レオナルト王の剣でもなく、シリル王配の叡智でもなく――

 “ラセル王子の笑顔”によるものであった。

 「推しのために、世界を動かす。そんな外交官が一人くらいいても、いいでしょ?」
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