転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー

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後日譚・番外編

「異世界に、もう一人呼ばれた」 (シリル元同僚召喚/ラセルファン/読者ふたりの邂逅)

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 その日、俺たちは、
 王都郊外の夏の離宮で、のんびりと昼寝をしていた。

 レオナルトは俺の膝枕で読書。
 俺は、王配というより、癒やし系枕と化している。

「……ん? 空、なんか光ってない?」

「まぶしいな。雷雲でも来たか?」

 空間がねじれ、突然、光が弾けた。

 ピシィッという破裂音。
 まさかの、魔法陣が開いた。

(……え、召喚魔法!?)

 何かが地面に落ちるように“着地”して、
 そこに現れた人は俺を見て開口一番――

「……は? え? ちょっと待って、フォードさん!?」

 フォードというのは俺のあだ名だ。俺は日本人だし、ビジネスネームというようなかっこいいものでもない。
 表紙に美麗なイケメンのイラストがある本をうっかりカバンから出してしまい、
「なにその外国人の男」
と言われ、
「フォードさん……」
と答えたのが始まりだ。
「なに、フォードさんって」
と散々からかわれ。まあ、BLじゃなくて、普通のファンタジー小説だったからよかったけど。
「このイケメンが好きなの?」
とか、なぜか言われて、
(いや、そこまで好きじゃないけど……)
「あ、返事につまった。好きなんだ? フォードさん?」
となって、あだ名が、フォードさんになってしまった。
(ちなみに今いる世界の原作小説も、BLではなくて、ファンタジー小説だったと思うのだが……。どうして今のような状況になったのか、よくわからない。間違ってファンタジー系BL小説を買ったのか?)

 俺は、目を疑った。

 その声、その顔、その鋭い目元。
 会社のデスク向かいに座っていた同年代の女性。

「ちょ……西原さん!? え、ええ!? なんでこっち来たの!?」

 ――召喚されてきたのは、
 現実世界での俺の元・同僚女性の西原さんだった。

「え、あなた、フォードさんって……やっぱりシリルだったの!?」

「え? やっぱりって? シリルって、なんで知ってる!? なんで異世界来たの!?」

「知らないよ! こっちが聞きたい! 本読んでたら、急に……!」

 状況が混沌としてる中、
 背後からラセルの驚きの声が飛んだ。

「……ま、まさか……!」

 ラセルの瞳がキラキラ光る。
 魔法陣のエネルギーがまだ残っているせいか、髪がサラッとなびいている。

「この魔力の波動、感じたことある! いや、感じたいと願っていた!」

「君、ラセル推しの読者でしょ!?」

「えっっ!? え、ちょっ、何その夢のような問いかけ!?
 え、正直に答えていいやつ!? えっ、はい、そうです!!」

(おいおい、なんだこの異常な盛り上がりは)

「見てました!? 王子時代!? 黒猫モードも!?
 涙の旅立ちシーン、読みました!?
 “推しは世界を超えて報われて”って願ってましたよね!?」

「読んだ読んだ読んだぁぁぁ!!
 しかも“レオナルト様とくっつかなかったけど、その分成熟した大人の恋人が現れる”ルート希望って、コメント書いたの私です!!」

 え? コメント……?
 ということは――

「ねえシリル、俺たちのいた世界、やっぱり“物語”だったってことか……?」
 レオナルトがぽつりと呟く。

「うん……どうやら、俺が読んでた物語の“続編”が展開中みたいだよ……」
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