転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー

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後日譚・番外編

番外編「彼女候補読者、異世界に降臨」

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「読んだ読んだ読んだぁぁぁ!!
 しかも“レオナルト様とくっつかなかったけど、その分成熟した大人の恋人が現れる”ルート希望って、コメント書いたの私です!!」

「まじで!?」

 ラセルの目は、キラキラを通り越してギラギラしていた。
 魔力を無駄にまとって、見た目まで若干発光している。

「き、君、マジで運命じゃん……! 公式彼女候補じゃん……!
 ていうか公認じゃん、読者的に!?」

「わ、わあ……え、あ、はい、恐縮です……えっ、なにこれ、尊い……!?」

(なにこれ、って俺のセリフだよ)

 シリルは思わず手で顔を覆った。
 なにがどうなって、自分の元同僚が“推しに見初められている”のだろうか。

「……また増えたのか、異世界人が……」

 胃を押さえながら、レオナルトが低く呻いた。
 顔がやや青い。

「しかも、なんかすごく盛り上がって推し語りしてるし……。
 俺の知らんところで、王子と俺の人生、連載されてたのか……」

「うん……どうやら、俺が読んでた物語の“続編”が展開中みたいだよ……」

 シリルは、自分の頭を抱えながら、ようやく西原さんを振り返る。

「ていうか西原さん、なんで俺ってわかったの? 見た目も変わってるんだから、わかんなくない?」

「ああー……最初はまさかって思ったけど、
 読み進めるうちに、“この感じ、絶対あの人だ”ってなってさ」

「“この感じ”ってなに!?」

「仕事ぶりとか、発言の空気感とか、どこかで知ってる気がするなって思って。
 Slackでもね、“伏線神”って言われてたから」

「――――は??」

「伏線……神?」

「そう」

「え、伏線って……俺、作者でもなんでもないんだけど……」

「違うの、ほら、あの社内プロジェクトのとき、“どうせ使わないだろうけど一応整備しときますね”って言って、
 シリルさんが細かい設定詰めてたの、全部あとから活きてきてさ」

「え、あれって……」

「“未来が見えてるのか?”ってSlackでめっちゃ騒がれてたよ。
 “あの人いなかったら破綻してた”って、
 “まるで伏線張って回収する作家みたいだ”ってことで――」

「“伏線神”になった」

「伏線神フォードさん、って伝説の人になってるよ。人っていうか神?」

 シリルは、目を見開いたまま、ぽかんと口を開けた。
 そのまま、ぽたぽたと、涙を流し始めた。

「……泣いた」

 レオナルトがそっと背後に立ち、手のひらをシリルの背に置いた。

「……よかったな」

「う、うん……俺……評価されてたんだ……知らなかった……」

「君のやってきたこと、ちゃんと見てる人がいたんだな」

 西原さんがにこっと微笑み、ふわりとスカートを揺らした。

 その横で、ラセルがさらにキラキラしていた。
 推しに会えた読者が、公式に祝福されて泣いてるとか、もう尊すぎて逆に情緒が限界らしい。

「うっわ、えっぐいなこれ……語彙失った……語彙の墓場……」

「ラセル、落ち着いて。魔力暴走してる」

「すまん……尊すぎて世界が尊厳になった……」

「何言ってるのかよくわからんけど、とにかく元気そうで何よりです」
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