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滝口くんとラセル
ラセルへの贈りもの〜その心に、ひとつの灯火〜
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ラセルは、夜の静けさの中で、ひとり月を見上げていた。
「……やっと、あの人の未来が、動き出したんだね」
レオナルトを想い、静かに呟いた声は、自分自身に言い聞かせるような、ほっとした響きだった。
「本当に……よかった」
けれど、安堵のあとには、やっぱりすこしだけ、さびしさが残る。
「もう、俺の役目は終わったんだね」
手のひらをかざせば、かつて大きな魔法を編んだ痕跡は、傷跡として、まだ肌の奥に微かに残っていた。心臓の奥が、やさしく熱い。
そのとき――
「……また、独りで泣いてるのか?」
背後で急に声がして、ラセルは、びくっとして振り向くと、そこに立っていた黒髪イケメン。
「た、滝口くん……!? どうしてここに……僕、召喚してないよ、ね?」
「まあ、来たくなっちゃってね。こっちの世界の夜風が、恋しくて」
滝口は、にっと笑って、窓辺に並んで腰を下ろす。
「君の魔力、まだちょっと余ってたでしょ? 微弱な残留魔素に同調して、こっちに来れたんだ。夢を見たら」
「え……ほんと……?」
「読者の奇跡、ってとこかな」
滝口は、ふっと微笑んだ。
「本を読んで、君のこと何度も思ったよ。“この子、本当の意味で、救われてほしいな”って。自分を犠牲にして、誰かを幸せにしようとするなんて、よくないよって」
「……俺、よくない?」
「うん。優しすぎ。見てる方が切なくなるくらい」
ラセルは目を伏せる。少しだけ顔が熱い。
「……なんか、滝口くんってば、ほんと……」
「でも、俺もね。救われてたんだ。君の物語に。……だから今度は、君がちょっとくらい、誰かに頼ってもいいんじゃない?」
滝口は、そっとラセルの肩に手をのせた。その温度に、ラセルは肩を震わせる。
「……うん。じゃあ、ちょっとだけ、甘えていい?」
「もちろん。今日は、読者じゃなく、ただの俺だから。君に幸せになってほしいひとりの人間だから」
その言葉に、ラセルは、そっと目を閉じた。夜風が、ふたりの髪をなでて通り過ぎていく。
やっと、ラセルの胸にも、本当の意味で誰かに愛される実感が降りてきた気がした。
魔法ではなく、このぬくもりで、やっと救われたのかもしれない。
月が、塔の上にまあるく浮かんでいた。
「……やっと、あの人の未来が、動き出したんだね」
レオナルトを想い、静かに呟いた声は、自分自身に言い聞かせるような、ほっとした響きだった。
「本当に……よかった」
けれど、安堵のあとには、やっぱりすこしだけ、さびしさが残る。
「もう、俺の役目は終わったんだね」
手のひらをかざせば、かつて大きな魔法を編んだ痕跡は、傷跡として、まだ肌の奥に微かに残っていた。心臓の奥が、やさしく熱い。
そのとき――
「……また、独りで泣いてるのか?」
背後で急に声がして、ラセルは、びくっとして振り向くと、そこに立っていた黒髪イケメン。
「た、滝口くん……!? どうしてここに……僕、召喚してないよ、ね?」
「まあ、来たくなっちゃってね。こっちの世界の夜風が、恋しくて」
滝口は、にっと笑って、窓辺に並んで腰を下ろす。
「君の魔力、まだちょっと余ってたでしょ? 微弱な残留魔素に同調して、こっちに来れたんだ。夢を見たら」
「え……ほんと……?」
「読者の奇跡、ってとこかな」
滝口は、ふっと微笑んだ。
「本を読んで、君のこと何度も思ったよ。“この子、本当の意味で、救われてほしいな”って。自分を犠牲にして、誰かを幸せにしようとするなんて、よくないよって」
「……俺、よくない?」
「うん。優しすぎ。見てる方が切なくなるくらい」
ラセルは目を伏せる。少しだけ顔が熱い。
「……なんか、滝口くんってば、ほんと……」
「でも、俺もね。救われてたんだ。君の物語に。……だから今度は、君がちょっとくらい、誰かに頼ってもいいんじゃない?」
滝口は、そっとラセルの肩に手をのせた。その温度に、ラセルは肩を震わせる。
「……うん。じゃあ、ちょっとだけ、甘えていい?」
「もちろん。今日は、読者じゃなく、ただの俺だから。君に幸せになってほしいひとりの人間だから」
その言葉に、ラセルは、そっと目を閉じた。夜風が、ふたりの髪をなでて通り過ぎていく。
やっと、ラセルの胸にも、本当の意味で誰かに愛される実感が降りてきた気がした。
魔法ではなく、このぬくもりで、やっと救われたのかもしれない。
月が、塔の上にまあるく浮かんでいた。
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