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異世界のBL本『黒獅子の右手には、白百合の剣を』
レオナルトサイド
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――その日の夜、執務室。
レオナルトは一人、椅子に深く腰掛け、静かに息をついた。
机の上には、あの本が置かれている。
(……危なかった)
昼間のシリルの追及は、予想以上に厳しかった。
だが、なんとか「検閲」という大義名分で切り抜けた。
レオナルトは本を手に取り、ページをめくる。
赤ペンで書き込まれた文字が、燭台の光に照らされて浮かび上がる。
「"忠義と恋慕の交錯が見事"……」
自分の字を見て、レオナルトは小さく笑った。
(確かに、俺は楽しんでいる)
検閲などという建前は、ただの言い訳だ。
この本を読んでいると、妙な高揚感がある。
エドガーとの関係。
シリルとの関係。
そして、三人の間に生まれる微妙な空気。
(……もし、現実でもこんなことが起きたら)
レオナルトは首を振った。
(いや、ありえない。エドガーは王配の兄だ。そして、シリルは俺の伴侶だ)
だが、心のどこかで、わずかに揺れている自分がいる。
――エドガーの琥珀色の瞳。
――シリルの金色の瞳。
――二人とも、美しい。
「……ふん」
レオナルトは本を閉じ、机の引き出しに仕舞った。
(続刊が出たら、また「検閲」しなければならん)
そう自分に言い聞かせながら、レオナルトは立ち上がった。
――その時、扉がノックされた。
「レオナルト、まだ起きてるの?」
シリルの声だった。
「……ああ、少し仕事をしていた」
「仕事? まさか、また"検閲"してたんじゃないでしょうね?」
シリルが疑わしそうに入ってくる。
「……そんなわけがあるか」
レオナルトは冷静を装いながら、引き出しをそっと閉めた。
「ふーん……」
シリルが近づいてくる。レオナルトは動揺を隠しながら、シリルを抱き寄せた。
「もう寝るぞ。明日も忙しい」
「あ、うん……」
シリルが素直に抱きしめられる。
(……この腕の中にいるのは、シリルだ)
レオナルトは心の中で確認する。
(エドガーではない。シリルだ)
だが、心の奥で、わずかに揺れる何かがあった。
――それが何なのか、レオナルトはまだ気づいていなかった。
◆
翌朝、滝口が執務室に入ると、レオナルトがすでに机に向かっていた。
「おはようございます、陛下」
「うむ」
滝口が書類を置こうとしたその時、机の引き出しが少しだけ開いていることに気づいた。
中には、あの本が見える。
(……陛下、また読んでたんだ)
滝口は苦笑しながら、何も言わずに書類を置いた。
「滝口」
「はい?」
「……続刊が出たら、すぐに知らせろ」
「……承知いたしました」
滝口は深々と頭を下げた。
(陛下、完全にハマってますね……)
そして、滝口も密かに続刊を心待ちにしていた。
レオナルトは一人、椅子に深く腰掛け、静かに息をついた。
机の上には、あの本が置かれている。
(……危なかった)
昼間のシリルの追及は、予想以上に厳しかった。
だが、なんとか「検閲」という大義名分で切り抜けた。
レオナルトは本を手に取り、ページをめくる。
赤ペンで書き込まれた文字が、燭台の光に照らされて浮かび上がる。
「"忠義と恋慕の交錯が見事"……」
自分の字を見て、レオナルトは小さく笑った。
(確かに、俺は楽しんでいる)
検閲などという建前は、ただの言い訳だ。
この本を読んでいると、妙な高揚感がある。
エドガーとの関係。
シリルとの関係。
そして、三人の間に生まれる微妙な空気。
(……もし、現実でもこんなことが起きたら)
レオナルトは首を振った。
(いや、ありえない。エドガーは王配の兄だ。そして、シリルは俺の伴侶だ)
だが、心のどこかで、わずかに揺れている自分がいる。
――エドガーの琥珀色の瞳。
――シリルの金色の瞳。
――二人とも、美しい。
「……ふん」
レオナルトは本を閉じ、机の引き出しに仕舞った。
(続刊が出たら、また「検閲」しなければならん)
そう自分に言い聞かせながら、レオナルトは立ち上がった。
――その時、扉がノックされた。
「レオナルト、まだ起きてるの?」
シリルの声だった。
「……ああ、少し仕事をしていた」
「仕事? まさか、また"検閲"してたんじゃないでしょうね?」
シリルが疑わしそうに入ってくる。
「……そんなわけがあるか」
レオナルトは冷静を装いながら、引き出しをそっと閉めた。
「ふーん……」
シリルが近づいてくる。レオナルトは動揺を隠しながら、シリルを抱き寄せた。
「もう寝るぞ。明日も忙しい」
「あ、うん……」
シリルが素直に抱きしめられる。
(……この腕の中にいるのは、シリルだ)
レオナルトは心の中で確認する。
(エドガーではない。シリルだ)
だが、心の奥で、わずかに揺れる何かがあった。
――それが何なのか、レオナルトはまだ気づいていなかった。
◆
翌朝、滝口が執務室に入ると、レオナルトがすでに机に向かっていた。
「おはようございます、陛下」
「うむ」
滝口が書類を置こうとしたその時、机の引き出しが少しだけ開いていることに気づいた。
中には、あの本が見える。
(……陛下、また読んでたんだ)
滝口は苦笑しながら、何も言わずに書類を置いた。
「滝口」
「はい?」
「……続刊が出たら、すぐに知らせろ」
「……承知いたしました」
滝口は深々と頭を下げた。
(陛下、完全にハマってますね……)
そして、滝口も密かに続刊を心待ちにしていた。
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