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01 誘拐された転生赤子
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「ちゃ!(いたい!) ……ふぁっ!」
突然、大きな衝撃を感じて、僕は目を覚ました。
その衝撃と同時に大量の記憶が流れ込んでくる。
(赤ちゃん部屋で寝ていたはず……)
同時に二つの異なる記憶が脳裏に浮かび混乱する。
一つは乳母の手で赤ちゃん用ベットに優しく寝かされたという記憶。
もう一つは車にひかれそうな子猫を見つけて道路に飛び出しひかれた記憶。
(ゆめ?)
どっちが夢か、両方夢かも定かではない。
手を見る。どう見ても赤ちゃんの手だ。
(つまり……赤ちゃんの方が……現実?)
記憶や魂のことはわからないが、少なくとも体は赤ちゃんらしい。
生後八か月の赤ちゃんの頭では、流れ込んでくる情報を処理しきれない。
大量の情報で頭が混乱する。
夜空には、赤っぽい月と青っぽい月、二つの月が輝いている。
そのうえ、周囲では激しい音が鳴り響き、見たことのない生き物が戦いを繰り広げていた。
一方は大きな猫、そしてもう一方は動物とも言えないヘドロの塊のような化け物だ。
(……おちつけおちつけ)
――ガキン
化け物の方が放った魔法がこっちに飛んできたが、結界によって弾かれた。
(……こわい。でも、結界があるから安全なのかも?)
幸いにも、強力な結界が展開して僕を守ってくれている。
きっと目が覚めることになった先ほどの強い衝撃からも守ってくれたのだろう。
おかげで怪我はないし、しばらくは安全に違いない。
安全だと気づいたら、少し余裕が出てきた。
この余裕を利用して、僕は地面に横になったまま、冷静に現状を整理することにした。
戦っている生き物たちの方は怖いので敢えて見ないようにする。
まずは突然流れ込んできた前世の記憶についてから整理しよう。
そうしないと、夢の記憶のように、急速に忘れてしまう気がしたからだ。
(……たしか……平和な国だった気がする)
前世の国は月が一つで、科学技術が発展した国だった。
いろんな娯楽があって、おいしいものがあって……税金が高かった。
映画とかドラマとか小説とか漫画とかゲームとか。
僕は結構好きだった気がする。
学校にはほとんどの人が十二年ほど通い、半分ぐらいの人はさらに何年か通っていたはず。
でも、僕が何年通ったのか思い出せない。
学校に通っている途中だったのか、卒業したのか。それもわからない。
というか、学校に関わることだけでなく、自分に関する記憶がすっぽり抜けている。
……男の子だったような?
前世の記憶を取り戻したときは男だったと思ったのだけど、今は自信がない。
確か中学、いや大学生、働いていた記憶があるような、老人? いや女の子だった気もする。
僕は魔法が得意だった気もするし、剣術が得意だったような気もする。
落ちこぼれだったような気も。
いや、本当にそうだろうか。
映画やドラマ等の娯楽で観たこと、小説や漫画などで読んだこと。人から聞いたお話。
それと、自分自身の記憶との区別がついていないのかもしれない。
そもそも猫を助けてひかれたのだって、創作物で観たものである可能性だってある。
家族も父母と祖父母と妹と弟がいて、……いや、孤児だった気もする。
結婚していたような、していなかったような。子供がいたようないなかったような?
そもそも前世ではなく、誰か他人の記憶が流れ込んできただけかもしれない。
自分自身については何も断言できないが、いろんな知識は僕のなかに残っている。
(ま! いっか!)
どちらにしろ、今を赤ちゃんとして生きていくしかないのだ。
そうとなれば、次は赤ちゃんである今の自分についても整理しよう。
そうしないと、現世と前世の記憶がごちゃごちゃになりそうだからだ。
(えっと……僕はこのまえ八か月になった)
髪色は母様譲りの榛色で目の色は父様譲りの青色だ。
名前はノエルで父様は男爵と呼ばれていた。
つまり男爵令息ノエルってやつだ。家名は知らない。
男爵と言えば下級貴族。ほとんど平民みたいなもの。
貴族の子弟の通う学院で、礼儀を知らないばかりに王族に慣れ慣れしくして怒られるのだ。
それが男爵の子という奴だ。
僕は悪役令嬢ものを読んでいたので詳しいのである。
僕は令嬢じゃないけど、令息も似たようなものに違いない。
父様は銀髪で青い目をしていて、二十歳ぐらいに見えた。
とてもかっこよかった。
(家族は父様のほかに母様と兄様……」
母様は赤い髪で榛色の綺麗な目をしていて、とても綺麗だった。
兄様は父様と同じく銀色の髪に青い目で、とても可愛かった。
父様も母様も兄様もとても優しくて僕を可愛がってくれている。
(そういえば、父様も母様も兄様も魔法が得意だと言っていたし……)
この世界には前世と同じく魔法があるらしい。
きっと僕も魔法が得意に違いない。
前世知識もあるし、魔法の才能があるなら無双し放題だ。
(それにしても……僕が天才だったのは、前世があったからだったか……)
八か月だからまだまともに話せないが、周囲の人の会話は完璧に理解していた。
ハイハイも早かったし、最近では立ち上がって一歩だけ歩くこともできた。
先日立ち上がって、少しだけ歩いたら、みんな天才だと言いながらびっくりしていた。
その天才の要因は前世のおかげだったとすると、少し残念な気がしなくもない。
(いや! 頑張ってみんなの役に立てばそれでいいのでは?)
理由はなんであれ、神か何かが才能を与えてくれたのだから、頑張ればいいだけの話だ。
持って生まれたものよりも、何をなしたかが大事だ!
(がんばろ)
自分が何者か把握したら、次は現状の把握だ。
赤子の身で生き延びるには、現状把握はとても大切だ。
(ここどこ?)
昨日は普通に自室で寝たはずだ。
僕はまだ八か月だけど、とてもしっかりしているので一人で寝られるのである。
よく母様にも手がかからないと褒められているほどだ。
(もしかして、誘拐された? でも誘拐犯がいないな?)
周囲に人はいない。いるのは戦っているでかい生き物たちだけだ。
(服は……)
僕が着ているのは寝間着だった。やはり寝ているときにさらわれたのだろう。
他に身につけているのは身を守るネックレス型の魔導具のみ。
(でも、これ超強いらしいからな?)
さっきも化け物の魔法を完璧に防いでくれた。
母様いわく「竜の攻撃でも凌ぐ結界を展開する魔導具なの。絶対外しちゃだめよ」とのことだ。
これを身につけている限り、安全だ。
強力な魔導具に守られているからこそ、これほど冷静でいられるのだ。
いくら僕が前世記憶ありの赤子でも、この魔導具が無かったら怖くて泣いていたかもしれない。
(問題は……ご飯だな?)
食料はない。水もない。これは困った。
まだ母様と乳母のお乳が欲しいお年頃なのだ。
水と食料を手に入れるにしてもハイハイでは限界がある。
これでは生き延びることはできない。
(母様……父様、それに兄様も)
お乳を抜きにしても、凄く母様に会いたい。
八か月の赤子だから当然だと思う。
(母様に会うためにも生き延びなければ……)
それはとても難しい気がする。一瞬後ろ向きになりかけたが、直ぐに考え直す。
(……ま。きっと、すぐに父様が助けに来てくれるよね)
落ち着いたところで、見ないようにしていた生き物たちを詳しく観察する。
一体は体長二メートルぐらいあるヘドロの塊のような化け物だった。
四本足で尻尾があるところは猫と同じだが、それ以外は全く違う。
(どうみても動物じゃないな?)
その化け物と戦っているのは、一匹の大きな猫だ。
シルバータビー&ホワイトのもふもふな毛でメインクーンにそっくりだ。
だが大型で知られるメインクーンよりもさらに二回りぐらいでかい。
体長はなんと一・四メートルぐらいある。
大きいだけで、外見は普通の猫だ
(……でも魔法を使ってる)
詳しくはわからないが、猫は火を出したり雷を落としたりして戦っている。
(はっ! しっぽが二本ある!)
動きが速すぎて気づかなかったが、尻尾が二本あった。
つまり、化け猫って奴だ。猫又かもしれない。
(普通に考えたら猫がいいやつっぽいけど……)
どっちが悪いかわからない。動物は見かけにはよらないのだ。
ヘドロの方が良い奴の可能性も、どっちも悪い奴の可能性だってある。
いや、そもそも野生にいいも悪いもない。
僕は無力な赤ちゃんなので、どちらにとってもおいしいご飯かもしれない。
「むー」
そのとき、猫が放った魔法の風がヘドロの化け物を切り裂いた。
化け物を覆っていたヘドロが蒸発するように消えていく。
ヘドロの化け物を倒した猫が、僕の方へとゆっくりと近づいてきた。
突然、大きな衝撃を感じて、僕は目を覚ました。
その衝撃と同時に大量の記憶が流れ込んでくる。
(赤ちゃん部屋で寝ていたはず……)
同時に二つの異なる記憶が脳裏に浮かび混乱する。
一つは乳母の手で赤ちゃん用ベットに優しく寝かされたという記憶。
もう一つは車にひかれそうな子猫を見つけて道路に飛び出しひかれた記憶。
(ゆめ?)
どっちが夢か、両方夢かも定かではない。
手を見る。どう見ても赤ちゃんの手だ。
(つまり……赤ちゃんの方が……現実?)
記憶や魂のことはわからないが、少なくとも体は赤ちゃんらしい。
生後八か月の赤ちゃんの頭では、流れ込んでくる情報を処理しきれない。
大量の情報で頭が混乱する。
夜空には、赤っぽい月と青っぽい月、二つの月が輝いている。
そのうえ、周囲では激しい音が鳴り響き、見たことのない生き物が戦いを繰り広げていた。
一方は大きな猫、そしてもう一方は動物とも言えないヘドロの塊のような化け物だ。
(……おちつけおちつけ)
――ガキン
化け物の方が放った魔法がこっちに飛んできたが、結界によって弾かれた。
(……こわい。でも、結界があるから安全なのかも?)
幸いにも、強力な結界が展開して僕を守ってくれている。
きっと目が覚めることになった先ほどの強い衝撃からも守ってくれたのだろう。
おかげで怪我はないし、しばらくは安全に違いない。
安全だと気づいたら、少し余裕が出てきた。
この余裕を利用して、僕は地面に横になったまま、冷静に現状を整理することにした。
戦っている生き物たちの方は怖いので敢えて見ないようにする。
まずは突然流れ込んできた前世の記憶についてから整理しよう。
そうしないと、夢の記憶のように、急速に忘れてしまう気がしたからだ。
(……たしか……平和な国だった気がする)
前世の国は月が一つで、科学技術が発展した国だった。
いろんな娯楽があって、おいしいものがあって……税金が高かった。
映画とかドラマとか小説とか漫画とかゲームとか。
僕は結構好きだった気がする。
学校にはほとんどの人が十二年ほど通い、半分ぐらいの人はさらに何年か通っていたはず。
でも、僕が何年通ったのか思い出せない。
学校に通っている途中だったのか、卒業したのか。それもわからない。
というか、学校に関わることだけでなく、自分に関する記憶がすっぽり抜けている。
……男の子だったような?
前世の記憶を取り戻したときは男だったと思ったのだけど、今は自信がない。
確か中学、いや大学生、働いていた記憶があるような、老人? いや女の子だった気もする。
僕は魔法が得意だった気もするし、剣術が得意だったような気もする。
落ちこぼれだったような気も。
いや、本当にそうだろうか。
映画やドラマ等の娯楽で観たこと、小説や漫画などで読んだこと。人から聞いたお話。
それと、自分自身の記憶との区別がついていないのかもしれない。
そもそも猫を助けてひかれたのだって、創作物で観たものである可能性だってある。
家族も父母と祖父母と妹と弟がいて、……いや、孤児だった気もする。
結婚していたような、していなかったような。子供がいたようないなかったような?
そもそも前世ではなく、誰か他人の記憶が流れ込んできただけかもしれない。
自分自身については何も断言できないが、いろんな知識は僕のなかに残っている。
(ま! いっか!)
どちらにしろ、今を赤ちゃんとして生きていくしかないのだ。
そうとなれば、次は赤ちゃんである今の自分についても整理しよう。
そうしないと、現世と前世の記憶がごちゃごちゃになりそうだからだ。
(えっと……僕はこのまえ八か月になった)
髪色は母様譲りの榛色で目の色は父様譲りの青色だ。
名前はノエルで父様は男爵と呼ばれていた。
つまり男爵令息ノエルってやつだ。家名は知らない。
男爵と言えば下級貴族。ほとんど平民みたいなもの。
貴族の子弟の通う学院で、礼儀を知らないばかりに王族に慣れ慣れしくして怒られるのだ。
それが男爵の子という奴だ。
僕は悪役令嬢ものを読んでいたので詳しいのである。
僕は令嬢じゃないけど、令息も似たようなものに違いない。
父様は銀髪で青い目をしていて、二十歳ぐらいに見えた。
とてもかっこよかった。
(家族は父様のほかに母様と兄様……」
母様は赤い髪で榛色の綺麗な目をしていて、とても綺麗だった。
兄様は父様と同じく銀色の髪に青い目で、とても可愛かった。
父様も母様も兄様もとても優しくて僕を可愛がってくれている。
(そういえば、父様も母様も兄様も魔法が得意だと言っていたし……)
この世界には前世と同じく魔法があるらしい。
きっと僕も魔法が得意に違いない。
前世知識もあるし、魔法の才能があるなら無双し放題だ。
(それにしても……僕が天才だったのは、前世があったからだったか……)
八か月だからまだまともに話せないが、周囲の人の会話は完璧に理解していた。
ハイハイも早かったし、最近では立ち上がって一歩だけ歩くこともできた。
先日立ち上がって、少しだけ歩いたら、みんな天才だと言いながらびっくりしていた。
その天才の要因は前世のおかげだったとすると、少し残念な気がしなくもない。
(いや! 頑張ってみんなの役に立てばそれでいいのでは?)
理由はなんであれ、神か何かが才能を与えてくれたのだから、頑張ればいいだけの話だ。
持って生まれたものよりも、何をなしたかが大事だ!
(がんばろ)
自分が何者か把握したら、次は現状の把握だ。
赤子の身で生き延びるには、現状把握はとても大切だ。
(ここどこ?)
昨日は普通に自室で寝たはずだ。
僕はまだ八か月だけど、とてもしっかりしているので一人で寝られるのである。
よく母様にも手がかからないと褒められているほどだ。
(もしかして、誘拐された? でも誘拐犯がいないな?)
周囲に人はいない。いるのは戦っているでかい生き物たちだけだ。
(服は……)
僕が着ているのは寝間着だった。やはり寝ているときにさらわれたのだろう。
他に身につけているのは身を守るネックレス型の魔導具のみ。
(でも、これ超強いらしいからな?)
さっきも化け物の魔法を完璧に防いでくれた。
母様いわく「竜の攻撃でも凌ぐ結界を展開する魔導具なの。絶対外しちゃだめよ」とのことだ。
これを身につけている限り、安全だ。
強力な魔導具に守られているからこそ、これほど冷静でいられるのだ。
いくら僕が前世記憶ありの赤子でも、この魔導具が無かったら怖くて泣いていたかもしれない。
(問題は……ご飯だな?)
食料はない。水もない。これは困った。
まだ母様と乳母のお乳が欲しいお年頃なのだ。
水と食料を手に入れるにしてもハイハイでは限界がある。
これでは生き延びることはできない。
(母様……父様、それに兄様も)
お乳を抜きにしても、凄く母様に会いたい。
八か月の赤子だから当然だと思う。
(母様に会うためにも生き延びなければ……)
それはとても難しい気がする。一瞬後ろ向きになりかけたが、直ぐに考え直す。
(……ま。きっと、すぐに父様が助けに来てくれるよね)
落ち着いたところで、見ないようにしていた生き物たちを詳しく観察する。
一体は体長二メートルぐらいあるヘドロの塊のような化け物だった。
四本足で尻尾があるところは猫と同じだが、それ以外は全く違う。
(どうみても動物じゃないな?)
その化け物と戦っているのは、一匹の大きな猫だ。
シルバータビー&ホワイトのもふもふな毛でメインクーンにそっくりだ。
だが大型で知られるメインクーンよりもさらに二回りぐらいでかい。
体長はなんと一・四メートルぐらいある。
大きいだけで、外見は普通の猫だ
(……でも魔法を使ってる)
詳しくはわからないが、猫は火を出したり雷を落としたりして戦っている。
(はっ! しっぽが二本ある!)
動きが速すぎて気づかなかったが、尻尾が二本あった。
つまり、化け猫って奴だ。猫又かもしれない。
(普通に考えたら猫がいいやつっぽいけど……)
どっちが悪いかわからない。動物は見かけにはよらないのだ。
ヘドロの方が良い奴の可能性も、どっちも悪い奴の可能性だってある。
いや、そもそも野生にいいも悪いもない。
僕は無力な赤ちゃんなので、どちらにとってもおいしいご飯かもしれない。
「むー」
そのとき、猫が放った魔法の風がヘドロの化け物を切り裂いた。
化け物を覆っていたヘドロが蒸発するように消えていく。
ヘドロの化け物を倒した猫が、僕の方へとゆっくりと近づいてきた。
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