クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる

文字の大きさ
23 / 41

追放された後

しおりを挟む
 それからしばらくして、銀城さんは町の診療所に運び込まれた。
 医者のポンチョ夫婦から手厚い治療を受けたけど、一番深く傷ついているのはメンタルみたいで、ちゃんと話せるようになったのは翌日からだ。
 だから次の日、面会を許された俺達は銀城さんに会いに行った。

「――どう、落ち着いた?」

 声をかけながらベッドのそばの椅子に腰かけると、体を起こした銀城さんが頷く。

「……うん……」

 頭や手、首元にガーゼを貼った痛々しい姿で、目にはまだ光がない。
 あれだけの仕打ちを受けた傷が治るのには、きっと俺が思っているよりもずっと長い時間がかかるはずだ。
 もっと早く彼女の所在に気付いていれば、と後悔しながら銀城さんの背中をさすっていると、キャロルとブランドンさんが部屋に入ってきた。

「ミルクのお代わりならありますから、遠慮しないでくださいね」

 コップとお盆をテーブルに置くキャロルを見て、ブランドンさんが腕を組んで笑った。

「キャロル、知らないうちにすっかり人見知りがなくなったな! イオリのおかげか~?」
「も、もう! 茶化さないで、お父さん!」
「わはは、すまんすまん!」

 ソフトモヒカンの頭を掻きながら、ブランドンさんは銀城さんを見つめる。

「ギンジョー・カノンだっけか? 寒いと思ったら俺っちにも言ってくれ、カンタヴェール中からふわふわの毛布も集めてきたからな!」
「……ごめんなさい……」

 彼女の返事は、どうしようもないやるせなさと苦しさに満ちた謝罪だ。

「カノンを助けたから、怖い人が……また来るかも……カノンのせいで……!」

 シーツをぎゅっと握りしめて、銀城さんが絞り出すように言った。
 きっと彼女の頭の中には、マッコイの恐怖だとか、自分がカンタヴェールにかける迷惑だとかが渦巻いているんだろうな。
 でも、そんなことで怒るようなやつは、この町にはいない。

「銀城が謝ることじゃねえって。もう一度来ても、俺のスキルで追い払ってやる。ただ、ここじゃあブランドンさんやキャロル、町の皆の方がよっぽど怖いと思うけどな」

 俺がスキルを示す紋章を見せると、ブランドンさんもムキムキの筋肉を披露する。

「マッコイの野郎には、前から散々ナメられてたんだ! 俺っちがマジギレしたらどれだけやべえか、嫌ってほど味わわせてやるぜ!」
「私も、お兄さんを絶対に守ります。皆もきっと、同じ気持ちですっ!」

 キャロルもぐっと拳を握って同意する姿を見て、銀城さんはうつむいた。

「……うらやましいな」

 漏れ出すのは悲哀ひあいとか、苦痛とか――ブラスの感情なんて欠片もない、俺の知る銀城さんからは出てこないような声だ。

「カノンも……信頼できる人がいたら、こんな目に……遭わなかったのかな……?」

 銀城さんの話はきっと、こうなる経緯だ。
 そう悟ったからこそ、俺もグラント親子も口を閉じて、彼女の話に耳を傾けた。

「……イオリ君がいなくなってから……君が消えた理由を、皆に聞いたんだ……そしたら、夜のうちに相談して、出ていったって……」

 彼女が語り出したのは、俺が姿を消した翌日から。
 小御門のやつ、俺を斬っておいて、銀城さんには大嘘つきやがったな。
 この調子だと近江アイナもしらばっくれたんだろうし、坂崎と子分は……まあ、あいつらが本当のことを話すわけがないか。

「でも、カノンは信じられなかった……だって……神殿の外に、血が残ってたから……」

 キャロルがちらりと、俺を見る。

「お兄さんが、斬られたところですか?」
「間違いないな。あいつら、血痕けっこんを処理したんだろうが、詰めが甘かったみたいだ」

 人に嘘をついておきながら、証拠を残すなんて間抜けもいいところだ。
 それとも、SSランクのスキルを手に入れて、自分に敵はいないだなんて調子に乗りまくってたもしれないな。

「証拠があるなら、連中を問い詰めてやりゃあ良かったじゃねえか!」
「……聞ける空気じゃないよ」

 ブランドンさんの言い分に対して、銀城さんは首を横に振った。

「リョウマ君やアイナちゃん、モルバさんと、クラスの乱暴な人達が、皆を支配してたの……自分達は、この世界の救世主だって言い出して……誰も、逆らえなかった」
「救世主、か。俺っちの経験則でいやあ、その手の連中はろくな輩じゃねえな」

 うんうんと頷くブランドンさんには、俺は全面的に肯定できるな。
 あの小御門リョウマって男は、きっと異世界に転移する前から、とんでもない思想を心の中に抱え続けてきたに違いない。
 そしてスキルがあれば何でも許される世界に来て、自分の欲望を爆発させたんだ。
 都合のいい女とクラスメートしもべを手に入れたあいつは、きっと近いうちにとんでもない暴挙に出ると、俺は確信していた。

 あいつの異常さにこめかみを抑えるしかない俺を見つめ、銀城さんが話を続ける。

「神殿でスキルの使い方とか、こっちの世界のことを学んでるうちに……あの人達は、先に神殿を出て行って……カノン達は、最後に神殿を出たよ」
「小御門達と出て行った奴は誰か、覚えてないか?」
「ええと、リョウマ君とアイナちゃん……坂崎君といつも一緒にいる子……カノンと神殿を出た子の中にも、あの人達について行く子がいたよ……」

 俺の殺害未遂に関与した連中以外にも、小御門について行く生徒がいたのか。

「まるで洗脳か、そうじゃなきゃ脅迫だな」

 あいつの本性を知ってなお、まだ従ってるなら大したもんだ。
 銀城さんがそうじゃなくて、というかそもそも小御門のことを信用していないらしくて、本当にありがたい。
 俺を探そうとしてくれたのも嬉しいし、信用してくれたのも同じだ。
 ただ、願わくばそう思ってくれるだけでいてほしかった。

「カノンはね、あの人達がイオリ君のことを知ってると思って……会いに行ったの……」

 銀城さんの性格からして、そうはいかないはずだ。
 しかも彼女が小御門の居場所を突き止めたとして、あいつらが、自分に従わない人間を放っておくはずがない。

「そしたら、いきなり抑えつけられて……スキルを抑える腕輪を、つけられて……!」

 話しながら、銀城さんの体が震えだす。

「坂崎君が、奴隷商人を呼んで……つれていかれて……」

 しまった、と俺達が顔を見合わせた時には遅かった。

「怖い人達が、カノンを……いっぱい、いじめた、いじめたの……!」

 彼女は大粒の涙を流し、身を縮こまらせた。
 いつもの明るく元気な、クラスのムードメーカーはどこにもいない。
 いるのはただ、痛みと苦しみがフラッシュバックし、人格を壊された女の子だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

処理中です...