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第三章 秘伝の弟子
129 『休日のお父さん』計画?
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ジャンケンに勝ったのは清晶。ということで珀豪と清晶監修の南国リゾート風ホテルに決まった。
案内された部屋は、仲間内で泊まれるようにと作られた最上階の半分を使ったスイートルーム。
部屋に入って直ぐが全員で集まれるリビングダイニングになっており、この左右には三人ずつ泊まれる部屋が六つ。寝室だけではなく、きっちり一部屋ずつが寝室、リビング、バス、トイレ付きだ。
「これを貸し切り……贅沢過ぎやしないか?」
時島はここへ来てようやく意見を口にできた。驚き過ぎて何も言えなかったのだ。
「いやいや、先生。世界丸ごと貸し切りなんスよ? ここ貸し切りって今更っぽくないっスか?」
「……和泉……今日ほどお前の存在が頼もしく思えたことはないよ」
「あ、マジ? もっと頼って良いっスよ?」
「……お前は本当に……いや、うん。私もちょっとお前を見習ってみることにする……」
ちょっとした皮肉も通じない俊哉に、時島は改めて感心しているようだった。
「先生も彼ほどとはいかなくとも、もう少しここでは肩の力を抜いてみるといいですよ。どうせここには常識なんてほとんど無いんですから」
「その……榊さんでしたか……この年になると肩の力の抜き方というのがわからないのですよ」
機嫌良く笑う源龍に肩を叩かれ、時島は困惑するしかない。
「ああ、なるほど。では、私と先ずは『休日のお父さん』というのを体験してみましょう。因みにお子さんは?」
「堅物な息子が一人……所帯を持っていますが、ここ数年はほとんど顔を見ておりません。そろそろ小学校に上がる孫娘もおりますが、懐きませんで……」
「おや、それはそのお孫さんは損をしますね」
「はい?」
源龍の言っている意味が分からない時島は顔をしかめる。
「だってそうでしょう。この世界を知り得ないのですから」
「あ……そうですね。こういう世界を教えられないのは残念です」
「ええ。なので沢山楽しんでみましょう。いつか教えられる時もあるでしょうから」
「なるほど。ははっ、では、精一杯自慢できるように楽しんでみます。ちょうど良い息子役も居ますしね」
「あ~、確かに良さそうです」
二人で見つめたのは、子ども達と一緒に大きな窓に張り付いている俊哉だ。息子としてはちょっとどうかと思うが、まあいいかと思う時島は大分、肩の力が抜けているようだった。
「父親役の見本としては珀豪君が良さそうですしね」
「あの方は……本当に父親の見本のような方ですね」
開けてくれとせがむ優希達を落ち着かせながら、珀豪がバルコニーに続く窓を開ける。いくら安全な柵があるとはいえ、飛び出して行ってしまわないように気をつけながらというのが実に彼らしい。
《バルコニーでは走り回ってはいかんぞ?》
「「「は~い」」」
そうして、子ども達を引き連れながら珀豪はバルコニーへ出て行く。
それを大人たちも追った。
解放的な広いバルコニーから見える景色は絶景だった。あの丘の上から見た景色とはまた違う。
それを堪能していると、高耶と瑶迦が遅れて部屋へやってきた。
因みに部屋には自動ロック機能はない。元々、身内しか使わないので、出入り自由にしているのだ。もしもこの先、それが必要になった場合は部屋の前に式を一人警備として配置することになっている。
ただ、鍵がないわけではなく、中からはかけられるようになっている。この中の部屋もそうだ。なので、特に不安というものはないだろう。
「あ、兄さん。何かあったんですか?」
「ん? いや、ただここの責任者に挨拶されただけだよ」
「ごめんなさいね。あの子達がどうしてもというものだから」
ホテルに入ってすぐに高耶は瑶迦に連れられて行ってしまったのだ。統二は何かあったのではないかと思ってしまった。
「挨拶ですか?」
「ええ。高耶さんが一番はじめに泊まるというので、あの子達が張り切ってしまって」
「あ……なんかわかりました……」
「……」
統二が気の毒そうな顔を高耶へ向けた。
「いや、まあ……歓迎してくれてるみたいで良かったよ……ただ、ちょっと気合いの入れ方が違ってな……」
「ふふ、ここに就職すると決めたあの子達は、張り切って現地で研修を受けてきたんですのよ?」
「現地?」
これには、統二の隣で聞いていた拓真が反応した。
「直接リゾートホテルの接客というのを見に行って、人に紛れて密かに実地研修も」
「……やったんですか……」
「やって来たみたいですわ」
「うわぁ……」
統二がそれはさすがにないわと声を上げるのに対して、拓真もまさかと察していた。
「えっと……内緒でってことですか?」
「大丈夫です。そういうところはバレずに上手くやりますわ♪」
「普通はダメですからね?」
瑶迦は当たり前のように言っているが、本来は良くない。
「それで昔、旅館に迷惑をかけたでしょう」
高耶が苦笑しながら言えば、瑶迦はそんなことありましたわねとコロコロ笑う。
「昔の話ですわ。それに、お客様には迷惑をかけていませんもの」
「いや、従業員の人達が怖い思いをしていてはダメですよ……」
そうこう話していると、話を聞いていた那津が近付いてくる。
「瑶姫様、怒られていますの?」
「そうなのです。ちょっと幽霊騒ぎで旅館を潰しかけたというだけなのですけど……あら?」
「「「……」」」
残念ながら瑶迦に味方はできなかった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
できたらまた週末に。
2019. 8. 7
案内された部屋は、仲間内で泊まれるようにと作られた最上階の半分を使ったスイートルーム。
部屋に入って直ぐが全員で集まれるリビングダイニングになっており、この左右には三人ずつ泊まれる部屋が六つ。寝室だけではなく、きっちり一部屋ずつが寝室、リビング、バス、トイレ付きだ。
「これを貸し切り……贅沢過ぎやしないか?」
時島はここへ来てようやく意見を口にできた。驚き過ぎて何も言えなかったのだ。
「いやいや、先生。世界丸ごと貸し切りなんスよ? ここ貸し切りって今更っぽくないっスか?」
「……和泉……今日ほどお前の存在が頼もしく思えたことはないよ」
「あ、マジ? もっと頼って良いっスよ?」
「……お前は本当に……いや、うん。私もちょっとお前を見習ってみることにする……」
ちょっとした皮肉も通じない俊哉に、時島は改めて感心しているようだった。
「先生も彼ほどとはいかなくとも、もう少しここでは肩の力を抜いてみるといいですよ。どうせここには常識なんてほとんど無いんですから」
「その……榊さんでしたか……この年になると肩の力の抜き方というのがわからないのですよ」
機嫌良く笑う源龍に肩を叩かれ、時島は困惑するしかない。
「ああ、なるほど。では、私と先ずは『休日のお父さん』というのを体験してみましょう。因みにお子さんは?」
「堅物な息子が一人……所帯を持っていますが、ここ数年はほとんど顔を見ておりません。そろそろ小学校に上がる孫娘もおりますが、懐きませんで……」
「おや、それはそのお孫さんは損をしますね」
「はい?」
源龍の言っている意味が分からない時島は顔をしかめる。
「だってそうでしょう。この世界を知り得ないのですから」
「あ……そうですね。こういう世界を教えられないのは残念です」
「ええ。なので沢山楽しんでみましょう。いつか教えられる時もあるでしょうから」
「なるほど。ははっ、では、精一杯自慢できるように楽しんでみます。ちょうど良い息子役も居ますしね」
「あ~、確かに良さそうです」
二人で見つめたのは、子ども達と一緒に大きな窓に張り付いている俊哉だ。息子としてはちょっとどうかと思うが、まあいいかと思う時島は大分、肩の力が抜けているようだった。
「父親役の見本としては珀豪君が良さそうですしね」
「あの方は……本当に父親の見本のような方ですね」
開けてくれとせがむ優希達を落ち着かせながら、珀豪がバルコニーに続く窓を開ける。いくら安全な柵があるとはいえ、飛び出して行ってしまわないように気をつけながらというのが実に彼らしい。
《バルコニーでは走り回ってはいかんぞ?》
「「「は~い」」」
そうして、子ども達を引き連れながら珀豪はバルコニーへ出て行く。
それを大人たちも追った。
解放的な広いバルコニーから見える景色は絶景だった。あの丘の上から見た景色とはまた違う。
それを堪能していると、高耶と瑶迦が遅れて部屋へやってきた。
因みに部屋には自動ロック機能はない。元々、身内しか使わないので、出入り自由にしているのだ。もしもこの先、それが必要になった場合は部屋の前に式を一人警備として配置することになっている。
ただ、鍵がないわけではなく、中からはかけられるようになっている。この中の部屋もそうだ。なので、特に不安というものはないだろう。
「あ、兄さん。何かあったんですか?」
「ん? いや、ただここの責任者に挨拶されただけだよ」
「ごめんなさいね。あの子達がどうしてもというものだから」
ホテルに入ってすぐに高耶は瑶迦に連れられて行ってしまったのだ。統二は何かあったのではないかと思ってしまった。
「挨拶ですか?」
「ええ。高耶さんが一番はじめに泊まるというので、あの子達が張り切ってしまって」
「あ……なんかわかりました……」
「……」
統二が気の毒そうな顔を高耶へ向けた。
「いや、まあ……歓迎してくれてるみたいで良かったよ……ただ、ちょっと気合いの入れ方が違ってな……」
「ふふ、ここに就職すると決めたあの子達は、張り切って現地で研修を受けてきたんですのよ?」
「現地?」
これには、統二の隣で聞いていた拓真が反応した。
「直接リゾートホテルの接客というのを見に行って、人に紛れて密かに実地研修も」
「……やったんですか……」
「やって来たみたいですわ」
「うわぁ……」
統二がそれはさすがにないわと声を上げるのに対して、拓真もまさかと察していた。
「えっと……内緒でってことですか?」
「大丈夫です。そういうところはバレずに上手くやりますわ♪」
「普通はダメですからね?」
瑶迦は当たり前のように言っているが、本来は良くない。
「それで昔、旅館に迷惑をかけたでしょう」
高耶が苦笑しながら言えば、瑶迦はそんなことありましたわねとコロコロ笑う。
「昔の話ですわ。それに、お客様には迷惑をかけていませんもの」
「いや、従業員の人達が怖い思いをしていてはダメですよ……」
そうこう話していると、話を聞いていた那津が近付いてくる。
「瑶姫様、怒られていますの?」
「そうなのです。ちょっと幽霊騒ぎで旅館を潰しかけたというだけなのですけど……あら?」
「「「……」」」
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2019. 8. 7
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