秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
225 / 463
第五章 秘伝と天使と悪魔

225 合同任務へ

しおりを挟む
金の鎧の腕の部分。机の上に乗せられたそれに、玻璃はりは長く細い指を少しだけ触れた。目を閉じてその物に宿る記憶を読み取る。

悪魔は、獲物とした者が執着する物や人を察する力が高い。そして、それを利用して陥れていくのだ。

高位の悪魔ほどその察する力が高いのだが、玻璃のように記憶を読めるものは少ないだろう。

ゆっくりと、長いまつ毛が上げられる。それがまた俊哉達には神秘的で美しく見えたらしい。ほおとため息が漏れていた。

《……滅ぼされた……消された……一族の怨念が、最期に術を……かけた》

高耶が口を開くより先に、戻ってきた蓮次郎が尋ねた。

「どんな術なんだい?」
《っ……》

集中していた玻璃には蓮次郎が部屋に入って来たことに気付かなかったようだ。驚いたというように、隣に座っていた高耶に抱き付く。

「おや。驚かせたかい? 高耶くんの式……ん? 天使さんかな?」

高耶にとって玻璃は、可愛い妹のようなものになっている。宥めるようにぽんぽんとその背を叩きながら答えた。

「彼女は悪魔です。ただ、本質は天使と変わらない悪魔の中では変わり者になります」
「へえ。とっても可愛らしい子だね」
《……あ、あの……ありがとう……?》
「娘にしていいかな!」

瑠璃が蓮次郎を睨みながら、高耶ごと玻璃を抱きしめて威嚇する。

「……すみませんが、それはご遠慮ください……」
「ダメかあ。あっ、でも高耶くんがウチの子になれば、丸っと付いてくるかな?」

これに何と答えるのが正解だろうかと考えていると、俊哉が口を挟んだ。

「ダメだって、おっさん。色んなとこからクレーム付くぜ? それこそ、むこう? の方からも」
「君……案外、物が見えてるんだねえ」
「おうよ。最近は特に、色々視えるぜ」
「よろしい。なら、高耶くんと一緒に、君もウチの子にしてあげよう」
「マジか……高耶と兄弟……俺が兄な」
「バカ言ってんな。蓮次郎さん、今はこっちの話をしましょう」

収拾がつかなくなりそうだった。本当に蓮次郎は俊哉のことを気に入っているらしい。

「仕方ないねえ。確か、最期の術がって話だったよね」

ようやく戻った。

「玻璃。どんな術なんだ?」

トントンと今一度玻璃の背中を叩き、瑠璃を引き剥がしながら尋ねる。

《っ……天使の門を閉ざして……悪魔の門を開放する……霊界に……その特異点が……ある……》
「まさか、こっちでやたらと霊穴が開いていたのは、その影響で?」
《封印を解いた者がいる……悪魔じゃない……けど……霊界の……気配を纏ってる……》
「……鬼渡だね……」
「……」

蓮次郎の答えに、高耶も静かに頷いた。

《……引き寄せられてる……》
「だから、日本に向かっているのか」

日本では今、霊穴が沢山開いている状態だ。それを察知したのだろう。

「ここで、これを消したらどうなる」

部品を消滅させたら、鎧は完成しないのだ。ならば、術を完成させないで済むのではないかと考えるのは当然だ。しかし、それも対策されていた。

《鎧が完成しないと……本当に憑いているものが……祓えない……》
「一つずつではダメってことか」

玻璃は腕の部分の鎧を見つめて答えた。

《……悪魔の方だけを……どうにかしてもダメ……天使の方も……繋がりを断たないと……》
「それ、難しいよ? むこうの子達にとって天使は善だ。繋がりを断つなんてできないだろうね。技術的な面でも」

天使との繋がりは、あちらにとっては重要で、尊いものとされている。仮に悪い影響が出るとしても、嫌がるし、何よりも、断ち方が分からないだろう。

「けど、そうなると……こっちに来るのは良いことかもね。高耶くんなら、天使も悪魔も大丈夫でしょ?」
「さすがに……全部は無理です」

瑠璃の力も玻璃の力も、人が扱うには強すぎるのだ。いくら高耶でも負担は大きい。それを、瑠璃も十分にわかっている。

《わたしたちの力は、どちらも人には負担でしかありません。全部を高耶さんになんて、押し付けないでください》
《ん……》

玻璃もダメだと高耶の腕を掴んで、蓮次郎を見た。

これに、蓮次郎は少し考え込み、思いついた対策を口にする。

「なら、合同だね。どのみち、あちらの責任も問わねばならないし」
「では……」

蓮次郎の言わんとすることは分かった。

「今回の件。連盟と協会の合同で事に当たろう」

それは『幻幽会』発足以来初の、合同任務となることを意味していた。

**********
読んでくださりありがとうございます◎

しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...