秘伝賜ります

紫南

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第六章 秘伝と知己の集い

302 言わずには終れない

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メールで土地の情報を確認していると、安倍あべの焔泉えんせんから電話がかかってきた。

「……はい」

少し警戒しながら出ると、焔泉はふっと笑うようにして告げる。

『なんやの? その覇気のない声は』
「いえ……仕事の話ですか?」

多分違うと思いながらも確認する。こういう場合、あまり良い思いをした事がない。たいてい、不吉な予言を伝えてくるのだから。

『違いますわ。今、資料請求されはったやろ? どうしはるんかと思おてなあ』
「……滝が欲しいと言われまして」

それだけで、察しの良い焔泉は納得する。

『はあ~。充雪殿か。あそこの滝はええらしなあ』
「知っているんですか?」
『昔、伊調や神楽部隊んとこの子らが、行きはる言うとりましてん。そこの旅館もお気に入りやってんで?』

充雪は、滝行に理想的な場所と言ったが、本当に良い場所だったらしい。

『滝まで行くんは、観光客にはちょい厳しいらしゅうてな。人も来うへんし、結界も張りやすい言うてはったわ』
「……そうなのか?」

これは、電話を離して、充雪に尋ねた。すると充雪は、ハッとした後、腕を組んでうんうんと頷きながら答える。

《確かにっ。俺は飛んでったけど、アレは行くまでの過程も楽しめそうだ!》

これに気付いて、ますます欲しいと思ったようだ。

『最近は伊調も中々行けれへん言うてはったなあと思い出したんよ』

ここ十数年は来られていないらしい。何があったという訳ではないということなので、そこは安心だ。

「……連盟で旅館ごと買い上げますか?」
『それや! できれば、それが理想や! 出来はるやろか?』
「山の方の土地は別ですが、この旅館なら、経営者の子どもが同級生なので、それとなく聞いてみます」

資料を見ると、この旅館と滝のある山の方は所有者が違うようだった。

『頼むわ! 保養所としても使えそうやしなあ。滝含めた山の方の買い上げ交渉は、こっちで手配するわっ』
「分かりました」

どうやら、連盟で買うので、高耶の方で交渉したり、お金を出す必要はなさそうだ。

『せや。山神、土地神への挨拶は任せるえ』
「……分かりました……」

そうなるだろうとは思っていた高耶だ。これは土地を買おうと思った時点で覚悟していたので構わない。

『せやけど、いくら滝を欲しがられた言うても、高坊が買おうとするなんて、どないしたん?』
「あ……ここ、瑶迦さんの所の式達が気に入ってる旅館だったみたいで……多分、研修とかに使ったんだと思います」
『ほおっ』

高耶がここに着いて、感じたのは、その式達の残した力の残滓。だから、決して悪い感じもしなかったし、気にすることでもなかった。

「滝を手に入れるなら、ついでにここも買い取ったら、喜ぶかなと」
『なるほどなあ』

どのみち、買い取って、経営していくとしても、連盟の関係者を客の対象としようと考えていたため、連盟で買い取ってもらえるならば、有り難い。

そうすれば、式達もここで働くことが出来るだろう。人件費もかからなくなるため、都合も良かった。

『ほんなら、ある程度、見込みが出来たら、交渉担当を送るで、連絡してや』
「分かりました」

契約なんかの、面倒な手続きもやってもらえるのは楽で良い。

ほっとしていた高耶だが、お約束があった。

『せや。高坊。気い付けえよ? なんやか高坊を……【求める者らが居る】……らしいでなあ』
「……分かりました……ありがとうございます……」
『ほなな~』

気楽に言ってくれるが、この予言だけはどうにかして欲しい。

「……はあ……」

電話を切った高耶が、重々しくため息を吐いたため、時島が心配そうに声をかける。

「……大丈夫か? 蔦枝……」
「……なんとか……」
《アレか? また占いか? よく当たるからなあ》

充雪はカラカラと笑う。自分に特に害がないので、彼も気楽なものだ。

「占い……ああ、焔泉さんのか」
「はい……」
「まあその……あまり思い詰めんように」
「はい……」
「お茶淹れてやるから」
「ありがとうございます……」

事情を察した時島は、高耶を労わるように声をかける。

そこに、空気を読まない俊哉がやって来た。

「高耶ぁぁぁっ。ここ、ピアノあるってよ!」
「……」

また何をやらせるつもりだと、俊哉を睨んだ高耶は悪くないはずだ。







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読んでくださりありがとうございます◎
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