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第七章 秘伝と任されたもの
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学芸会が終わってほっとするのも束の間、今度は統二の学校での文化祭が待っていることに気付いた。
「本番は冬休み前なんだっけ? 変な時期だよな? テストを間に挟むんだ?」
平日の水曜日。時刻はそろそろ五時。放課後に衣装合わせに来ていた。一応は補欠というか、予備の人員ということで、俊哉がついてきている。着替え中の高耶とは別で、俊哉は完全に見学に回ってそんな事を口にする。
答えたのは、俊哉の側でクラスの出し物の準備としてメニュー表を作っていた二葉拓真だった。
「この学校では、計画性や勉強と何かを両立させるって事を学内でも重要視してるんです」
「へえ。だから、文化祭の用意とテスト勉強を両立しろって?」
「はい。けど、お陰で他の学校よりも、文化祭までの準備期間は長いんですよ。今学期丸ごと使うんで」
「確かに……俺の行ってたとこは、文化祭やるぞーって言って、すぐ終わってたわ。そんで、後半はテストに集中って感じ。まあ、集中するって言っても、落ち着かなかったけどな~」
「わ~っとやって、切り替えるって、逆に難しそうです」
「そうそう」
切り替えられることも重要なのだろうが、十代半ばの子ども達が、それを出来るかどうかは別だ。
「集中の仕方~とか、気持ちの切り替え方~なんて教科書に載ってねえもんなあ」
「そうですね。内面的な事って、よく求められますけど、仮にお手本があっても真似られるものでもないし、本人にしか分からなかったりしますからね」
「自分に甘い奴には鍛えられないし? 自分との戦いって、年齢によっても出来る奴と出来ない奴、分かれるよな~」
「追い詰めて自滅してたりしたら意味ないですし」
そんな話をしていれば、今日の同行者の一人。着替えを終えた優希が俊哉達に駆け寄った。
「なにかむずかしいこと、おはなししてる?」
「おおっ。優希ちゃんっ。良く似合ってるぞっ。ちょっとカッコいい感じだなっ」
ブレザーのようにも見える上着は、少し短め。その下はニットの袖なし。だが、横で結ぶらしく、作りは簡単。長いタオルのような状態で、真ん中に頭を通す穴が開いているだけのもの。下は膝丈までのプリーツスカートだが、左側半分に長い裾を作っていた。
「えへへ。お兄ちゃんとならぶんだもんっ。カワイイだけじゃダメでしょう?」
「……さすが優希ちゃん」
「大人だな~……」
ふふんと胸を張る優希。俊哉は、なるほどと感心しながら頷き、拓真はほおと口を開けて、そんな大人振る優希を眺める。
そこに、着替えを終えた高耶が出てくる。女生徒達の堪えるようなうめき声が聞こえた。
「ヤバい……っ、鼻血出そう」
「これ、服負けてない? 大丈夫? 万人向けになってる?」
「逆に分からないとか、手強いわ……っ」
「けど、良い! これ見られるだけで良い!」
「「「「「確かに!」」」」」
高耶はゆっくりと距離を縮めてくる女生徒達に戸惑いながら立っていた。
「おい。これ良いのか? 女子達は多分、勝負を諦めたぞ」
俊哉が苦笑いしながら拓真に問いかける。
「いやあ……でも、良いんじゃないですか? 平和が一番ですし」
「争わないって?」
「いえ。推し活的なやつです。あれは、経済も心も豊かにする最高に平和な活動だと思うので」
「あ、なるほど」
推しの前では、争いは起こらない。皆が賛成。圧倒的に平和的解決ができる。
「あれなら、負けてもきっと、悔しがらなくていいですし、寧ろ満場一致で見た目は優勝ですから」
「コンセプトとは違うけどな。うん。あれは優勝だわ」
「お兄ちゃんすごい! お兄ちゃんのためにつくられたふくってかんじ! なにがいけないの?」
そう見えるのは、良くはない。けれど、これを見られたのは良いことだ。後悔はないだろう。拓真が優希の疑問に答える。
「このファッションショーは、誰が着てもカッコいいとか似合うとかって服を発表するものなんだよ」
一般の来場客には、純粋にどの人が良かったか、投票してもらう。一般の人に、その服が万人受けするかなんて審査は頼めない。着てみたい、着せたい服という観点から投票してもらう。
だが、学校関係者は、万人向きのものとなり得るかという審査をする。
「このふくも?」
「そうだよ」
「ふ~ん。じゃあさ、ねえねえ。シュンヤお兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんがアレ、きてみればいいんじゃない?」
「「「「「え?」」」」」
「だって、だれにでも、にあうふくなんでしょう?」
「「「「「あっ!」」」」」
この場の生徒達全員が俊哉を見た。
「えー……俺?」
「「「「「お願いします!」」」」」
これにより俊哉は、他のグループの服も着てみることになり、忙しくあっちへこっちへと連れ去られていくようになった。
俊哉が捕まっている間にと、高耶は少し校内を見て回ることにした。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「本番は冬休み前なんだっけ? 変な時期だよな? テストを間に挟むんだ?」
平日の水曜日。時刻はそろそろ五時。放課後に衣装合わせに来ていた。一応は補欠というか、予備の人員ということで、俊哉がついてきている。着替え中の高耶とは別で、俊哉は完全に見学に回ってそんな事を口にする。
答えたのは、俊哉の側でクラスの出し物の準備としてメニュー表を作っていた二葉拓真だった。
「この学校では、計画性や勉強と何かを両立させるって事を学内でも重要視してるんです」
「へえ。だから、文化祭の用意とテスト勉強を両立しろって?」
「はい。けど、お陰で他の学校よりも、文化祭までの準備期間は長いんですよ。今学期丸ごと使うんで」
「確かに……俺の行ってたとこは、文化祭やるぞーって言って、すぐ終わってたわ。そんで、後半はテストに集中って感じ。まあ、集中するって言っても、落ち着かなかったけどな~」
「わ~っとやって、切り替えるって、逆に難しそうです」
「そうそう」
切り替えられることも重要なのだろうが、十代半ばの子ども達が、それを出来るかどうかは別だ。
「集中の仕方~とか、気持ちの切り替え方~なんて教科書に載ってねえもんなあ」
「そうですね。内面的な事って、よく求められますけど、仮にお手本があっても真似られるものでもないし、本人にしか分からなかったりしますからね」
「自分に甘い奴には鍛えられないし? 自分との戦いって、年齢によっても出来る奴と出来ない奴、分かれるよな~」
「追い詰めて自滅してたりしたら意味ないですし」
そんな話をしていれば、今日の同行者の一人。着替えを終えた優希が俊哉達に駆け寄った。
「なにかむずかしいこと、おはなししてる?」
「おおっ。優希ちゃんっ。良く似合ってるぞっ。ちょっとカッコいい感じだなっ」
ブレザーのようにも見える上着は、少し短め。その下はニットの袖なし。だが、横で結ぶらしく、作りは簡単。長いタオルのような状態で、真ん中に頭を通す穴が開いているだけのもの。下は膝丈までのプリーツスカートだが、左側半分に長い裾を作っていた。
「えへへ。お兄ちゃんとならぶんだもんっ。カワイイだけじゃダメでしょう?」
「……さすが優希ちゃん」
「大人だな~……」
ふふんと胸を張る優希。俊哉は、なるほどと感心しながら頷き、拓真はほおと口を開けて、そんな大人振る優希を眺める。
そこに、着替えを終えた高耶が出てくる。女生徒達の堪えるようなうめき声が聞こえた。
「ヤバい……っ、鼻血出そう」
「これ、服負けてない? 大丈夫? 万人向けになってる?」
「逆に分からないとか、手強いわ……っ」
「けど、良い! これ見られるだけで良い!」
「「「「「確かに!」」」」」
高耶はゆっくりと距離を縮めてくる女生徒達に戸惑いながら立っていた。
「おい。これ良いのか? 女子達は多分、勝負を諦めたぞ」
俊哉が苦笑いしながら拓真に問いかける。
「いやあ……でも、良いんじゃないですか? 平和が一番ですし」
「争わないって?」
「いえ。推し活的なやつです。あれは、経済も心も豊かにする最高に平和な活動だと思うので」
「あ、なるほど」
推しの前では、争いは起こらない。皆が賛成。圧倒的に平和的解決ができる。
「あれなら、負けてもきっと、悔しがらなくていいですし、寧ろ満場一致で見た目は優勝ですから」
「コンセプトとは違うけどな。うん。あれは優勝だわ」
「お兄ちゃんすごい! お兄ちゃんのためにつくられたふくってかんじ! なにがいけないの?」
そう見えるのは、良くはない。けれど、これを見られたのは良いことだ。後悔はないだろう。拓真が優希の疑問に答える。
「このファッションショーは、誰が着てもカッコいいとか似合うとかって服を発表するものなんだよ」
一般の来場客には、純粋にどの人が良かったか、投票してもらう。一般の人に、その服が万人受けするかなんて審査は頼めない。着てみたい、着せたい服という観点から投票してもらう。
だが、学校関係者は、万人向きのものとなり得るかという審査をする。
「このふくも?」
「そうだよ」
「ふ~ん。じゃあさ、ねえねえ。シュンヤお兄ちゃん」
「ん?」
「お兄ちゃんがアレ、きてみればいいんじゃない?」
「「「「「え?」」」」」
「だって、だれにでも、にあうふくなんでしょう?」
「「「「「あっ!」」」」」
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「えー……俺?」
「「「「「お願いします!」」」」」
これにより俊哉は、他のグループの服も着てみることになり、忙しくあっちへこっちへと連れ去られていくようになった。
俊哉が捕まっている間にと、高耶は少し校内を見て回ることにした。
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