秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
385 / 463
第七章 秘伝と任されたもの

385 強い味方

しおりを挟む
当然だが、すぐに薫と面会というわけには行かなかった。人ではないかもしれないとはいえ、さすがに、今朝方まで数ヶ月意識のなかった者と話をすぐにするというのは難しい。

《ちょい様子を見て来くるわ》
「おう。頼んだ」

そうして、充雪が偵察に出かけたのを見送り、高耶は鬼への対策を考えるため、資料を確認しようと少し考える。

「図書館のは……あらかた見終わったし、あとは……」

そこで思い出した。秘伝家の所蔵する資料を確認できていないことを。

「……授業が終わったら、行ってみるか……」

一応はと、勇一に夕方向かうことをメールする。

「あまり期待はできないが……」

見てみなければ分からない。とはいえ、高耶は一度もまともにその蔵書を見たことがないのだ。読み解けないものとされているものは、勇一や統二によって持ち出されており、それを確認していた。しかし、どれも残念ながら鬼に関することは書かれていなかった。

「一人で……無理か?」

どれだけあるかも分からないが、一人で確認するのは不安だった。

そこに、雛柏教授が現れたのだ。

「高耶君。どうかしたの? 難しそうな顔してるよ? 土地神様のことで何かあった?」
「あ、ええ……教授。今晩の予定はありますか?」
「ん? ないよ? 講義も高耶君達のが終われば終わり~」
「でしたら、秘伝家の資料整理を少し手伝ってもらえませんか?」
「いいの!?」

寧ろ良いのかと雛柏教授は興奮気味に確認する。

「はい。うちは……脳筋が多いので、その資料の状態に不安がありまして……」
「ああ、なるほど。いいよ? 僕は明日も休みだし、そういう仕事、苦じゃないから」
「……思いつきで言ったんですが、本当に良いんですか?」
「もちろんだよ! わ~、秘伝家の資料か~、何があるんだろうっ」

物凄く楽しみだと、その表情が言っていた。本当にそうした仕事が好きなのだろう。

「ありがとうございます。助かります。鬼の資料がないか確認したいので」
「いいよ~。あ、姫様の所のホテル、泊まってもいい? そうしたら、休みの日は全部それに当てられるよ!」
「え……あ、まあ……そこから扉を繋げても良いですね……」
「お願いするよ! うわ~あ、楽しみだっ。うちの奥さんも呼んじゃダメかな? 二倍働けるよ!?」

雛柏教授は結婚しており、子どもも高耶より少し上の女の子がいるらしい。そろそろ結婚するのではないかと言っていた。

そして、雛柏教授の奥さんも、教授と同じ人種だ。今回は助かるかもしれない。

「妻はね。こう……仕事以外の旅行とかあまり好きじゃなくてね。だから、あの姫様のところのホテルとかいいな~って。ほら、不特定多数の人が居ないじゃない?」
「そうですね。良いですよ。寧ろお願いする方ですし」

何よりも、ホテルの従業員として働きたいと思っている者達が喜ぶだろう。

「やった! じゃあ、講義が終わったら早速ね!」
「はい」

ご機嫌な様子で教授はスマホを取り出していた。奥さんに電話するのだろう。

「仲がいいんだな……」

そんな感想を口にしながら、高耶は時間を潰すため、図書館へと向かった。そして、次の講義でとてつもなく機嫌が良さそうな教授の様子に俊哉が勘付き、一緒にいくことになるのだった。







**********
読んでくださりありがとうございます◎

しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

心が折れた日に神の声を聞く

木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。 どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。 何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。 絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。 没ネタ供養、第二弾の短編です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

聖女召喚2

胸の轟
ファンタジー
召喚に成功した男たちは歓喜した。これで憎き敵国を滅ぼすことが出来ると。

解雇されたけど実は優秀だったという、よくあるお話。

シグマ
ファンタジー
 突如、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]を解雇されたサポーターのマルコ。しかし普通のサポート職以上の働きをしていたマルコが離脱した後のパーティーは凋落の一途を辿る。そしてその影響はギルドにまでおよび……  いわゆる追放物の短編作品です。  起承転結にまとめることを意識しましたが、上手く『ざまぁ』出来たか分かりません。どちらかと言えば、『覆水盆に返らず』の方がしっくりくるかも……  サクッと読んで頂ければ幸いです。 ※思っていた以上の方に読んで頂けたので、感謝を込めて当初の予定を越える文量で後日談を追記しました。ただ大団円で終わってますので、『ざまぁ』を求めている人は見ない方が良いかもしれません。

処理中です...