秘伝賜ります

紫南

文字の大きさ
438 / 463
第七章 秘伝と任されたもの

438 心強いファン

しおりを挟む
いよいよ文化祭の日がやって来た。

二日間の日程で、ファッションショーは一日目、ライブは二日目の昼過ぎからとなっている。ライブの方は、他の団体のものもあり、律音リツト達と高耶の出るライブは一番最後となる。文化祭の外部からのゲスト出演のような位置だ。

どうやら律音達をほとんどの学生が知っているようなので、盛り下がるということはなさそうだ。

「師匠に歩き方を教わってよかったです! 文化祭後も気兼ねなく学校生活を送れそうです!」
「それは良かった……が、その姿も見せるんだろう……大丈夫なのか?」

律音は現在のもっさりした根暗ないつもの姿から、舞台で変身して見せるらしい。他のメンバーもだ。

「しっかり嫌われて来ましたし、大丈夫だと思います! 言質は取りました!」

これに、部屋に運ばれた音響器具の使い方のチェックをしていた俊哉が問いかける。

「どんな?」
「『キモいんだよ!』って言ってきた人には、『なら、近づかないで……』と!」
「うわあ。他は?」
「『声かけてくんな!』と言われたのには『分かりました……絶対に』と言いましたね! 相手も面白がって、周りにそう言ったよな! 的な確認もしていたので!」
「マジかっ。やべえじゃん。無視できるじゃん!」
「有り難いですよね~」
「あははっ」

律音も結構いい性格をしているようだ。だが、平穏な学校生活を送るには必要かもしれない。

「……きちんと無視する理由は言ってからにしろよ?」
「はい! イメージは大事ですからね!」
「理由もなく無視したり避けたりしたら、そりゃあ、イメージ悪いもんなっ! ボイスレコーダーとか仕込めばよかったんじゃね?」
「はっ! しまったぁぁぁ」

しっかりとした証拠になるものがあった方がもっと安心できる。不名誉な噂も出ないだろう。

頭を抱える律音を見かねて高耶が確認する。

「それ、教室でやったんだよな?」
「はい……」
「一年前とかじゃないな?」
「はい……大体、一、二週前くらいです……」
「なら……女王、いけるだろうか」

部屋の隅へ声を掛けると、妖精女王がふわりと現れ、重さを感じさせることなく机に腰掛ける。

《その子が音の一族の子ね。歌も聞いたわ。ほら、出ていらっしゃい》
《はわわっ。り、リツトくん!!》
「え……よ、妖精……」

可愛らしいお姉さんの姿をした妖精が、律音の前に現れ、頬を染める。

《わ、わたし! リツトきゅんのファンです! やばいっ……尊いっ!!》
「え、と……あ、ありがとうございます?」
《いやんっ。可愛いっ!!》
「お姉さんの方がかわいいけど……どうも……?」
《うわんっ。天使ぃぃぃっ》
「ふふふっ」
《はっ! 永久保存んんんっ!》

律音は完全に面白くなって笑っていた。

「やべえ姉さんだな。それに、忍者じゃないっ」
「推し活に命かけてるのが一部居るんだ」
《引きこもりになるので困るのよ。けど、隠れて忍術は修めているわよ? 推しを愛でるために》
「ああ~、潜むんだ?」
《ええ。寧ろ、こう言う子達の方が隠密行動が上手いわね》
「命かけてたらなあ」

推しを愛でるためにと命をかける。やる気が違うだろう。上達の速度も違いそうだ。

「で? なんで高耶はこの姉さんを呼んだん?」
「ああ……アレだ」
「アレ……なんか宝石が光ってる?」

妖精のお姉さんの手にピンク色の石が現れ、それが光っている。しばらくして、光がおさまると、淡い光を再び発して、先ほどの律音とのやり取りが映像と声が確認できた。

「……え? まさか、記録できるのか?」
「アレで、こっちの知識とか増やしてきたんだよ。特別な力らしくて」
《万物が記憶したものを取り出すことができるのよ。それを全て集めた記録保管用の館もあるわ》
「図書館みたいな?」
《ええ》

個々で記録してきたものも、飽きたり、仲間と共有したいものは、そこに納めることになっている。大図書館のようになっているらしい。

《最近のお気に入りは、霧矢Jr.と高耶さんの丘の上のステージでの共演ね。土地神への奉納演奏の》
「なにそれ。俺知らねえっ」
《約束された屋敷がそろそろ本格的に建築が始まる頃ですし、無事建ちましたら、また観たいですわね》
「そういえば……」

霧矢修が月子さんの老後の生活のためにもと用意している屋敷。鬼が封じられていたりと問題はあったが、無事にその場所を更地にし、清めも終わる頃らしい。そこは、土地神が最も祝福する土地で、そこに住む者達には様々な恩恵が受けられる。妖精達の中では約束の地と呼んでいるようだ。

「え~、いいな~。俺も観たい!」
《よければ、今度お見せしましょうか。やはり、同じように楽しめるのが嬉しいですからね》
「おおっ! よろしくお願いします!!」
《ふふふっ》

どうやら妖精女王にも俊哉は気に入られたようだ。やはり、コミュ力が高すぎる。

「あっ、で? もしかして、あのお姉さんに、証拠映像と音声を押さえてもらうのか!!」
「ああ……」
「え? あ、あの……いいんですか?」
《もちろんよっ! これからもリツトきゅんのためならなんだってするわ!! 早速、行って来るわね!》
「え、あ……いいんでしょうか」

高耶に確認する律音。それに、高耶と妖精女王が同時に答えた。

「良いと思う」
《構いませんわ》

強い味方が加わったということで落ち着いた。








**********
読んでくださりありがとうございます◎

しおりを挟む
感想 675

あなたにおすすめの小説

救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」 魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。 ――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。 「ここ……どこ?」 現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。 救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。 「ほら、食え」 「……いいの?」 焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。 行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。 旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。 「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」 「ウチの子は天才か!?」 ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。 これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。 ※若干の百合風味を含みます。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

義務ですもの。

あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...