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第五章 封印の黒い魔人
059 それは神の裁き
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一息ついた司は、先ほどから何かに反応している剣の様子に気付いていた。
「どうしたいんだ?」
自然と、そう剣に向かって問い掛けていた。
司の周辺にいたゴブリン達は綺麗に掃討され、ウィルバートの居る場所へ移ろうと思っていた時だったのだ。
剣は司の問い掛けに応えようとするように、細かく振動していた。
司はその意思を読み取ろうと、自身の心を空にして剣を見つめる。
その時、ウィルバートが駆けて来るのが見え、何事かとそちらに目を向けた。
「司。リズが……いや、その剣が行きたがっているな……」
「え……」
ウィルバートには分かっていた。理修が必要としている事がこの剣の望みなのだと。
「その剣は、あそこに行きたがっている」
そう言ってウィルバートが指差した先には、魔神と理修がいる。
剣を握り、魔神を見た司はその時感じ取った。
「あ……この剣と同じ力の波動……」
「そうだ。おそらく、あれとその剣は、同じ世界のものだろう。そして、終わりを告げようとしている」
「………」
司には、何の事なのかは分からなかったが、まるでウィルバートの言葉を肯定するように、剣が一際大きく振動した。
「司」
「っ……行きます。俺を、あそこまで連れて行っていただけますか」
「あぁ」
ウィルバートが、手を挙げる。すると、理修の相棒であるドラゴン。エヴィスタがどこからともなく現れた。
《主の所へお連れしよう》
そう言ったエヴィスタは、体を発光させると、大きな本来の大きさへと変わった。
しかし、司がエヴィスタへと乗ろうとした時だった。
《グォォォァァァ》
魔神が吠えたのだ。
「リズっ」
ウィルバートが真っ先に目を向けたのは、当然のように理修だった。
理修は、魔神から少し離れた所で、変わらず杖の上に立ち、雄叫びを上げる魔神を見つめていた。
《うむ……主が決断を迷っておられる……》
「え……」
「リズ……」
ウィルバートと司には、遠く離れた場所に浮いている理修の正確な表情まで読み取る事はできない。しかし、誓約によって結ばれているエヴィスタには、その心の機微が感じられていた。
《覚悟はした方が良い。主が、自らの手で決着を付けるのではなく、そなたを呼んでいるのだ。ただその剣を持って行けば良いと言う訳ではないだろう》
即断即決の理修が、手をこまねいている。この状況がなにを示すのか。しっかりと覚悟をしておくべきだろう。
「わかった」
司は自身が、何かをやらなくてはならないのだと、先程から焦燥感のようなものがあった。
《グォォォァァァッ》
再び吠える魔神。
そして、エヴィスタは司を乗せて理修のいる場所へと飛び立ったのだ。
◆ ◆ ◆
理修は、目の前で突然吠え出した魔神を静かに見つめていた。
それは、悲しみと怒りだ。
そして、魔神は空を見上げて再び吠えると、理修の結界の外。その上空に魔法陣が展開され、そこから突然、神殿に向けて光の帯が走った。
「っ……」
破壊音は響かなかった。光が突き刺さった神殿は、一瞬後に全てを粒子レベルにまで分解され、消え去っていた。
「っ、ジェスっ……心配ないか……」
ジェスラートとミリアは、神殿の奥。地下深くに居た。消え去ったのは、あくまでも地上部にあった神殿の建物だけだ。理修は、それでも一応確認と気配を読み、変わらずそこに二人が存在している事に胸を撫で下ろす。
それよりも重要なのは、今の術が理修の張った結界を無視して発動されたという事だろう。
「……さすがは、異世界の神という事ね……」
理修の結界は、その体の動きを止める事は出来ているが、力自体を完全に封じる事が出来ていないようだ。
「魔術の質……発動条件が全く異なる……か……」
理修はそう呟くと、魔神を覆っていた結界を解いた。元々、神などという存在に対しての結界として想定してはいないのだ。張っていた所で大した意味はないと判断した。
《グオォォォォォっ》
先程よりも空気を痺れさすような声となって、辺りに魔神の叫びが響く。
そして、次に数十という小さな魔法陣が空中に現れた。
「理修っ!」
その魔術の発動を黙認する理修に、エヴィスタに乗ってやって来た司が狼狽える。
「黙って見てて。あれは神の裁き。手を出したり、遮ってはダメだよ」
「な……に……」
静かに見守る理修の様子に、司は意味が分からないと眉を寄せる。その時、それが発動した。
「あっ……」
理修は目をすがめ、冷たい瞳でそれを見守った。
「……ひ、人が……」
魔法陣から過たず放たれた光は、王や神官、このダグストの重鎮達を貫き、その存在を消滅させてしまったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「どうしたいんだ?」
自然と、そう剣に向かって問い掛けていた。
司の周辺にいたゴブリン達は綺麗に掃討され、ウィルバートの居る場所へ移ろうと思っていた時だったのだ。
剣は司の問い掛けに応えようとするように、細かく振動していた。
司はその意思を読み取ろうと、自身の心を空にして剣を見つめる。
その時、ウィルバートが駆けて来るのが見え、何事かとそちらに目を向けた。
「司。リズが……いや、その剣が行きたがっているな……」
「え……」
ウィルバートには分かっていた。理修が必要としている事がこの剣の望みなのだと。
「その剣は、あそこに行きたがっている」
そう言ってウィルバートが指差した先には、魔神と理修がいる。
剣を握り、魔神を見た司はその時感じ取った。
「あ……この剣と同じ力の波動……」
「そうだ。おそらく、あれとその剣は、同じ世界のものだろう。そして、終わりを告げようとしている」
「………」
司には、何の事なのかは分からなかったが、まるでウィルバートの言葉を肯定するように、剣が一際大きく振動した。
「司」
「っ……行きます。俺を、あそこまで連れて行っていただけますか」
「あぁ」
ウィルバートが、手を挙げる。すると、理修の相棒であるドラゴン。エヴィスタがどこからともなく現れた。
《主の所へお連れしよう》
そう言ったエヴィスタは、体を発光させると、大きな本来の大きさへと変わった。
しかし、司がエヴィスタへと乗ろうとした時だった。
《グォォォァァァ》
魔神が吠えたのだ。
「リズっ」
ウィルバートが真っ先に目を向けたのは、当然のように理修だった。
理修は、魔神から少し離れた所で、変わらず杖の上に立ち、雄叫びを上げる魔神を見つめていた。
《うむ……主が決断を迷っておられる……》
「え……」
「リズ……」
ウィルバートと司には、遠く離れた場所に浮いている理修の正確な表情まで読み取る事はできない。しかし、誓約によって結ばれているエヴィスタには、その心の機微が感じられていた。
《覚悟はした方が良い。主が、自らの手で決着を付けるのではなく、そなたを呼んでいるのだ。ただその剣を持って行けば良いと言う訳ではないだろう》
即断即決の理修が、手をこまねいている。この状況がなにを示すのか。しっかりと覚悟をしておくべきだろう。
「わかった」
司は自身が、何かをやらなくてはならないのだと、先程から焦燥感のようなものがあった。
《グォォォァァァッ》
再び吠える魔神。
そして、エヴィスタは司を乗せて理修のいる場所へと飛び立ったのだ。
◆ ◆ ◆
理修は、目の前で突然吠え出した魔神を静かに見つめていた。
それは、悲しみと怒りだ。
そして、魔神は空を見上げて再び吠えると、理修の結界の外。その上空に魔法陣が展開され、そこから突然、神殿に向けて光の帯が走った。
「っ……」
破壊音は響かなかった。光が突き刺さった神殿は、一瞬後に全てを粒子レベルにまで分解され、消え去っていた。
「っ、ジェスっ……心配ないか……」
ジェスラートとミリアは、神殿の奥。地下深くに居た。消え去ったのは、あくまでも地上部にあった神殿の建物だけだ。理修は、それでも一応確認と気配を読み、変わらずそこに二人が存在している事に胸を撫で下ろす。
それよりも重要なのは、今の術が理修の張った結界を無視して発動されたという事だろう。
「……さすがは、異世界の神という事ね……」
理修の結界は、その体の動きを止める事は出来ているが、力自体を完全に封じる事が出来ていないようだ。
「魔術の質……発動条件が全く異なる……か……」
理修はそう呟くと、魔神を覆っていた結界を解いた。元々、神などという存在に対しての結界として想定してはいないのだ。張っていた所で大した意味はないと判断した。
《グオォォォォォっ》
先程よりも空気を痺れさすような声となって、辺りに魔神の叫びが響く。
そして、次に数十という小さな魔法陣が空中に現れた。
「理修っ!」
その魔術の発動を黙認する理修に、エヴィスタに乗ってやって来た司が狼狽える。
「黙って見てて。あれは神の裁き。手を出したり、遮ってはダメだよ」
「な……に……」
静かに見守る理修の様子に、司は意味が分からないと眉を寄せる。その時、それが発動した。
「あっ……」
理修は目をすがめ、冷たい瞳でそれを見守った。
「……ひ、人が……」
魔法陣から過たず放たれた光は、王や神官、このダグストの重鎮達を貫き、その存在を消滅させてしまったのだ。
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