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第六章 終わりと始まり
068 帰って来ました
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魔族の国で一夜を過ごした翌日。
理修達は、昼前に地球へ戻って来ていた。
降り立った場所は、理修の家族や司が召喚された山道だ。
「では、私は戻る。お前も早いとこ顔を出せよ。オルバルトの奴が煩いからな」
そう言って着いて早々、ジェスラートは一人、シャドーフィールドへと戻って行った。
「帰って来たのね……」
「今でも信じられないよ」
充花と義久は周りを見回し、異世界で見た地球にはない物を思い出しているようだ。
「こうやって空を見ても、ドラゴンなんていないんだよな……」
「地球じゃぁ、鳥がいるかも危ういだろ」
そんな拓海と明良の会話を聞いて、由佳子が笑って言った。
「そうね。白馬に乗った王子様じゃなくて、あっちはドラゴンに乗った王様だったものね」
「確かに」
その言葉に、司がそういえばと目を見開いて同意する。皆、異世界との違いを肌で感じていた。
「また行きたいわ……」
由佳子の呟きに、静かに家族達が頷く。
「別に、いつでも連れて行きますよ?」
理修は、悪い経験にはなっていないようだと安心すると同時に、あまりにも残念そうな家族達の様子を見るに見兼ねて思わずそう言う。
「っ、本当⁉︎」
「っ、え、えぇ……どのみち、婚約式には出席すると約束していたじゃないですか」
「そ、そうよねっ」
「そうだったっ」
由佳子が理修に詰め寄り、嬉しそうに手を叩く。一方、義久は父親として微妙な表情を浮かべていた。
婚約の為の式典とはいえ、実際は娘が嫁に行くようなものなのだ。つい最近告げられたこの現実に、父親としては素直に喜べないらしい。
「本当に、あの人と結婚するのか?」
「明良……それ、どういう意味で言ってる?」
明良の表情からは、姉を取られて寂しいというより、不安が見て取れた。その為、聞き返した理修の言葉には棘があった。
「いや、別に理修が好きな奴と結婚するのは……嫌だけど……っ構わないんだぜっ?」
明良は、理修に特別な想いを抱いてきた。それが決して告げる事のできない想いだとしても、今まで消し去る事は出来なかった。だが、ウィルバートと話し、その姿を見た事でなんとかこの想いに諦めがついたのだ。
「でも、あの人のってなると……王妃だろ?それも、隣の国をいつでも吹っ飛ばせるような……ヤバくね?」
「「「「…………」」」」
王妃と呼ばれる存在が、一体どんなものなのか。それが、家族達には分からない。しかし、理修達の行動をザサスに見せてもらっていた事で、理修の王妃としての姿が予測出来てしまった。
「理修ちゃん……あの彼の為なら、世界征服もしちゃいそうよね……」
「ウィルが望むなら、いつでも出来ますよ?」
「そこは否定してちょうだいっ」
『出来なくはない』ぐらいのニュアンスを予想していた由佳子としては、理修のその言葉にツッコまずにはいられなかった。
「王を支えるのが王妃でしょう。なら尚更、魔術師としての力を充分に活かして……」
「コワイからやめてちょうだいっ」
この場の誰もが、未来の理修の姿を幻視した。魔王よりも魔王にしか見えないのだ。
「是非ともこの意気込みを分かってもらいたいのですが?」
「理修ちゃん……」
何一つ隠す事がなくなった理修は、この際とばかりに、今まで口にしなかった本音も構わず出していた。
それに様々な真実や現実を知った家族達は、表情を引きつらせる事しかできない。
そんな家族達の微妙な気持ちに気付き、仕方なく理修は話を変える。
「私の事はまたの機会という事で、司、伯母様。行くんじゃないんですか?」
「あ、あぁ」
「っ……そうね」
そう言って、二人に続いて目的としていた場所へ向かった。
辿り着いたのは小さな墓地だ。その一つへと、司が迷わず進んでいく。
立ち止まった墓の前で、司は苦笑した。
「花がなくて悪いな」
山を登る前に持っていた花は、召喚の際に、何処かへ消えてしまっていた。その為ほとんど手ぶらになってしまったのだ。
「問題ないよ」
「あ……花……」
振り返った司は、いつの間にか両手いっぱいに花を出現させた理修の姿を見て目を見開く。その上、きっちりと紙で束ねた花束が二つ。出来るだろうと知っていても、驚いてしまうのだ。
「伯母様も」
「ええ……」
「なんで……?」
「っ……」
理修から花を受け取った由佳子は、真っ直ぐに司の前の墓へと花を手向ける。そして、屈み込み、静かに手を合わせた。
「やっと会えたわね。要さん」
「……」
事情がわからないのは、この場で司だけだ。だから司は、どういう事なのかと、由佳子の後ろ姿を見つめる。
「ずっとあなたの事を誤解して生きてきたの……私は捨てられたんだって……でも違ったのね……」
捨てられたのではない。捨てさせられたんだと、由佳子はもう分かっていた。両親を恨む気持ちが唐突に湧き上がってくる。それに歯を食いしばり、辛そうに言葉を紡ぐ。
「ごめんなさいっ……ありがとう……子どもを……この子を、育ててくれて……司に会わせてくれてありがとうっ」
「っ……!」
この言葉で、司は信じられないという顔をしながらも事実を察したようだ。そして、由佳子は静かに立ち上がると、しっかりと前を見てから司を振り返ったのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
理修達は、昼前に地球へ戻って来ていた。
降り立った場所は、理修の家族や司が召喚された山道だ。
「では、私は戻る。お前も早いとこ顔を出せよ。オルバルトの奴が煩いからな」
そう言って着いて早々、ジェスラートは一人、シャドーフィールドへと戻って行った。
「帰って来たのね……」
「今でも信じられないよ」
充花と義久は周りを見回し、異世界で見た地球にはない物を思い出しているようだ。
「こうやって空を見ても、ドラゴンなんていないんだよな……」
「地球じゃぁ、鳥がいるかも危ういだろ」
そんな拓海と明良の会話を聞いて、由佳子が笑って言った。
「そうね。白馬に乗った王子様じゃなくて、あっちはドラゴンに乗った王様だったものね」
「確かに」
その言葉に、司がそういえばと目を見開いて同意する。皆、異世界との違いを肌で感じていた。
「また行きたいわ……」
由佳子の呟きに、静かに家族達が頷く。
「別に、いつでも連れて行きますよ?」
理修は、悪い経験にはなっていないようだと安心すると同時に、あまりにも残念そうな家族達の様子を見るに見兼ねて思わずそう言う。
「っ、本当⁉︎」
「っ、え、えぇ……どのみち、婚約式には出席すると約束していたじゃないですか」
「そ、そうよねっ」
「そうだったっ」
由佳子が理修に詰め寄り、嬉しそうに手を叩く。一方、義久は父親として微妙な表情を浮かべていた。
婚約の為の式典とはいえ、実際は娘が嫁に行くようなものなのだ。つい最近告げられたこの現実に、父親としては素直に喜べないらしい。
「本当に、あの人と結婚するのか?」
「明良……それ、どういう意味で言ってる?」
明良の表情からは、姉を取られて寂しいというより、不安が見て取れた。その為、聞き返した理修の言葉には棘があった。
「いや、別に理修が好きな奴と結婚するのは……嫌だけど……っ構わないんだぜっ?」
明良は、理修に特別な想いを抱いてきた。それが決して告げる事のできない想いだとしても、今まで消し去る事は出来なかった。だが、ウィルバートと話し、その姿を見た事でなんとかこの想いに諦めがついたのだ。
「でも、あの人のってなると……王妃だろ?それも、隣の国をいつでも吹っ飛ばせるような……ヤバくね?」
「「「「…………」」」」
王妃と呼ばれる存在が、一体どんなものなのか。それが、家族達には分からない。しかし、理修達の行動をザサスに見せてもらっていた事で、理修の王妃としての姿が予測出来てしまった。
「理修ちゃん……あの彼の為なら、世界征服もしちゃいそうよね……」
「ウィルが望むなら、いつでも出来ますよ?」
「そこは否定してちょうだいっ」
『出来なくはない』ぐらいのニュアンスを予想していた由佳子としては、理修のその言葉にツッコまずにはいられなかった。
「王を支えるのが王妃でしょう。なら尚更、魔術師としての力を充分に活かして……」
「コワイからやめてちょうだいっ」
この場の誰もが、未来の理修の姿を幻視した。魔王よりも魔王にしか見えないのだ。
「是非ともこの意気込みを分かってもらいたいのですが?」
「理修ちゃん……」
何一つ隠す事がなくなった理修は、この際とばかりに、今まで口にしなかった本音も構わず出していた。
それに様々な真実や現実を知った家族達は、表情を引きつらせる事しかできない。
そんな家族達の微妙な気持ちに気付き、仕方なく理修は話を変える。
「私の事はまたの機会という事で、司、伯母様。行くんじゃないんですか?」
「あ、あぁ」
「っ……そうね」
そう言って、二人に続いて目的としていた場所へ向かった。
辿り着いたのは小さな墓地だ。その一つへと、司が迷わず進んでいく。
立ち止まった墓の前で、司は苦笑した。
「花がなくて悪いな」
山を登る前に持っていた花は、召喚の際に、何処かへ消えてしまっていた。その為ほとんど手ぶらになってしまったのだ。
「問題ないよ」
「あ……花……」
振り返った司は、いつの間にか両手いっぱいに花を出現させた理修の姿を見て目を見開く。その上、きっちりと紙で束ねた花束が二つ。出来るだろうと知っていても、驚いてしまうのだ。
「伯母様も」
「ええ……」
「なんで……?」
「っ……」
理修から花を受け取った由佳子は、真っ直ぐに司の前の墓へと花を手向ける。そして、屈み込み、静かに手を合わせた。
「やっと会えたわね。要さん」
「……」
事情がわからないのは、この場で司だけだ。だから司は、どういう事なのかと、由佳子の後ろ姿を見つめる。
「ずっとあなたの事を誤解して生きてきたの……私は捨てられたんだって……でも違ったのね……」
捨てられたのではない。捨てさせられたんだと、由佳子はもう分かっていた。両親を恨む気持ちが唐突に湧き上がってくる。それに歯を食いしばり、辛そうに言葉を紡ぐ。
「ごめんなさいっ……ありがとう……子どもを……この子を、育ててくれて……司に会わせてくれてありがとうっ」
「っ……!」
この言葉で、司は信じられないという顔をしながらも事実を察したようだ。そして、由佳子は静かに立ち上がると、しっかりと前を見てから司を振り返ったのだった。
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