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17th ステージ
189 メンバーに選出されました!!
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リンディエールと悠は、その日一日で五十階まで進んだ。
「それ、様子見じゃないわね」
本当に特級の迷宮が近くにあったとその日夕食が済み、ヘルナ達や引率の教師達との一日の報告会の折に、それを報告した。
「っ、その、特級なんて……危なくありませんか?」
「氾濫が起きたんなら危ないんやけどな。まだ若そうなんよ」
「若い……出現して日が浅いということですか? それだと何か……」
教師達はソワソワしている。近くにまず聞いたこともほぼない特級の迷宮があると知れば、少し怖くなっても仕方がないだろう。彼らには太刀打ちできないと分かりきっている。
これにファルビーラが頬杖をついて説明する。
「氾濫ってえのは、長く人が入らなかったり、出現する魔獣なんかが溜まると起きんだよ。出来て数年はまずない」
「そう……なのですか」
「まあ、冒険者でもなけりゃ、気にしねえよな」
こうした迷宮の常識は冒険者が知って行くものだ。一般人には浸透していない。
「もうちょい、冒険者じゃねえ奴らも、知っとくべきだとは思うが、今は大厄災ので一杯一杯だもんなあ」
「それ以外の知識を広げるのは後ね。まずは大厄災を越えないといけないわ」
「だな」
余計な情報を与えることで、混乱を来たす場合もある。そして、知ったかぶりの者達が下手に話を広げる可能性もあった。
「あ~。だから話さないんだ?」
悠がなるほどと笑みを浮かべながら納得する。そして、ニヤニヤと笑った。
「今回のコレも、迷宮への不安に繋がるもんねっ。お話好きなおばちゃん達なら、『そこの迷宮には、最近冒険者があまり行かないって聞くし、大丈夫なの?』とか、不安を煽ってくれそう」
「悠ちゃん……ニヤニヤし過ぎやで」
とても不謹慎な笑みだ。しかし、嫌味な感じがない。悠の人柄のお陰だろう。
「だって~。面白いよね。今回みたいに迷宮の発見におばちゃん達が役に立ったけど、あのお喋りで全く正反対の困ったことをしてくれるかもしれないわけでしょ? 無責任過ぎて笑える~」
「内容より、話すネタをいかに多く用意できるかに命かけとるんよ。話下手で悩んどる若者に五分の一でもお裾分けされるとええんやけどなあ」
会話が続かないとか、話のネタが思い浮かばないとか悩んでいる者はそれなりに居るものだ。そうした人からすれば、羨ましいものかもしれない。無責任に話せるのも才能だろうか。
「あははっ。アレが減ったらおばちゃんの調子が狂いそうっ」
「それはあるかもしれへんな。喋っとらんと息できんって」
「ず~っと話してくるおばちゃんいるもんね。あの体力とか気力は見習いたいよ」
「それは分かる」
「「「「え!?」」」」
同意すれば、一斉に二度見された。
「……なんやねん」
「「いえ……」」
「な、なんでもないわ……」
「気にすんな……」
教師達はすっと目を背け、ヘルナとファルビーラは目を泳がせて愛想笑いを浮かべた。
「あはははっ。リンちゃん。仕方ないよ。リンちゃんもおばちゃんに負けないくらいお喋りじゃん?」
「ウチ、無責任な事は言うとらんはずやけど?」
「うん。それは知ってる。けど、リンちゃんはいつでも体力と気力有り余ってるし!」
「言うほど余裕あらへんけど?」
「うそうそっ。まあ、でも? こっちの人たちよりは余裕でしょ? そういうことだよっ」
「さよか……なんや、納得はでけへんけど、まあええわ」
ふうとここでまた一斉に安堵されては気になるが、それよりも報告の途中だ。
「あの迷宮、明日も悠ちゃんと行ってくるわ。階層の広さからの感覚だと、あと三十くらいやし」
「え? 特級って、百まであったりしないの?」
「決まっとらんで? 階層がバカみたいに広いとこは、五十までとかもあったわ」
「へえ~」
「やから、五十階まで行けば、大体予想は確実やで」
「そうなんだ~。まだまだ経験不足だな~」
「心配すなや。悠ちゃんには、明日以降も一緒に迷宮攻略に行くでな! 全部終わる頃には、感覚も掴めるやろ!」
こればかりは、確かに経験するしかないのだ。しかし、情報を手に入れられる機会は用意されている。
「んん? 全部終わる頃?」
「せやで! パンパカパーン!! おめでとう! 悠ちゃんは見事! 未確認迷宮大陸ツアーのメンバーに選出されました!!」
椅子の上に立って、リンディエールは両手を上に突き上げた。
「うえぇぇぇっ!?」
中々出ない驚きの声が出た。
「聞いてや。この時点までのヒーちゃん探索の結果! なんと二十一の迷宮が新たに発見されましたぁぁぁ!」
「に、二十一!? それこの時点まで? 絶対これ以降も増えるじゃん!? ってかギルド! 仕事して!!」
「しゃあないて。完璧主義のヒーちゃんやもん」
「取りこぼししなさそうだよね」
「二重チェックしてそうやし? 大丈夫や。全部探索終わったら、ヒーちゃんも合流やし」
「大丈夫の意味が不明。不透明! 意義あり!!」
「そんな駄々捏ねてもダメや。受け入れえ」
「うぐっ……スパルタ再びな予感~」
「頑張るで~!」
「お~」
「「「「頑張れ~」」」」
一応、応援だけはくれる一同だった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「それ、様子見じゃないわね」
本当に特級の迷宮が近くにあったとその日夕食が済み、ヘルナ達や引率の教師達との一日の報告会の折に、それを報告した。
「っ、その、特級なんて……危なくありませんか?」
「氾濫が起きたんなら危ないんやけどな。まだ若そうなんよ」
「若い……出現して日が浅いということですか? それだと何か……」
教師達はソワソワしている。近くにまず聞いたこともほぼない特級の迷宮があると知れば、少し怖くなっても仕方がないだろう。彼らには太刀打ちできないと分かりきっている。
これにファルビーラが頬杖をついて説明する。
「氾濫ってえのは、長く人が入らなかったり、出現する魔獣なんかが溜まると起きんだよ。出来て数年はまずない」
「そう……なのですか」
「まあ、冒険者でもなけりゃ、気にしねえよな」
こうした迷宮の常識は冒険者が知って行くものだ。一般人には浸透していない。
「もうちょい、冒険者じゃねえ奴らも、知っとくべきだとは思うが、今は大厄災ので一杯一杯だもんなあ」
「それ以外の知識を広げるのは後ね。まずは大厄災を越えないといけないわ」
「だな」
余計な情報を与えることで、混乱を来たす場合もある。そして、知ったかぶりの者達が下手に話を広げる可能性もあった。
「あ~。だから話さないんだ?」
悠がなるほどと笑みを浮かべながら納得する。そして、ニヤニヤと笑った。
「今回のコレも、迷宮への不安に繋がるもんねっ。お話好きなおばちゃん達なら、『そこの迷宮には、最近冒険者があまり行かないって聞くし、大丈夫なの?』とか、不安を煽ってくれそう」
「悠ちゃん……ニヤニヤし過ぎやで」
とても不謹慎な笑みだ。しかし、嫌味な感じがない。悠の人柄のお陰だろう。
「だって~。面白いよね。今回みたいに迷宮の発見におばちゃん達が役に立ったけど、あのお喋りで全く正反対の困ったことをしてくれるかもしれないわけでしょ? 無責任過ぎて笑える~」
「内容より、話すネタをいかに多く用意できるかに命かけとるんよ。話下手で悩んどる若者に五分の一でもお裾分けされるとええんやけどなあ」
会話が続かないとか、話のネタが思い浮かばないとか悩んでいる者はそれなりに居るものだ。そうした人からすれば、羨ましいものかもしれない。無責任に話せるのも才能だろうか。
「あははっ。アレが減ったらおばちゃんの調子が狂いそうっ」
「それはあるかもしれへんな。喋っとらんと息できんって」
「ず~っと話してくるおばちゃんいるもんね。あの体力とか気力は見習いたいよ」
「それは分かる」
「「「「え!?」」」」
同意すれば、一斉に二度見された。
「……なんやねん」
「「いえ……」」
「な、なんでもないわ……」
「気にすんな……」
教師達はすっと目を背け、ヘルナとファルビーラは目を泳がせて愛想笑いを浮かべた。
「あはははっ。リンちゃん。仕方ないよ。リンちゃんもおばちゃんに負けないくらいお喋りじゃん?」
「ウチ、無責任な事は言うとらんはずやけど?」
「うん。それは知ってる。けど、リンちゃんはいつでも体力と気力有り余ってるし!」
「言うほど余裕あらへんけど?」
「うそうそっ。まあ、でも? こっちの人たちよりは余裕でしょ? そういうことだよっ」
「さよか……なんや、納得はでけへんけど、まあええわ」
ふうとここでまた一斉に安堵されては気になるが、それよりも報告の途中だ。
「あの迷宮、明日も悠ちゃんと行ってくるわ。階層の広さからの感覚だと、あと三十くらいやし」
「え? 特級って、百まであったりしないの?」
「決まっとらんで? 階層がバカみたいに広いとこは、五十までとかもあったわ」
「へえ~」
「やから、五十階まで行けば、大体予想は確実やで」
「そうなんだ~。まだまだ経験不足だな~」
「心配すなや。悠ちゃんには、明日以降も一緒に迷宮攻略に行くでな! 全部終わる頃には、感覚も掴めるやろ!」
こればかりは、確かに経験するしかないのだ。しかし、情報を手に入れられる機会は用意されている。
「んん? 全部終わる頃?」
「せやで! パンパカパーン!! おめでとう! 悠ちゃんは見事! 未確認迷宮大陸ツアーのメンバーに選出されました!!」
椅子の上に立って、リンディエールは両手を上に突き上げた。
「うえぇぇぇっ!?」
中々出ない驚きの声が出た。
「聞いてや。この時点までのヒーちゃん探索の結果! なんと二十一の迷宮が新たに発見されましたぁぁぁ!」
「に、二十一!? それこの時点まで? 絶対これ以降も増えるじゃん!? ってかギルド! 仕事して!!」
「しゃあないて。完璧主義のヒーちゃんやもん」
「取りこぼししなさそうだよね」
「二重チェックしてそうやし? 大丈夫や。全部探索終わったら、ヒーちゃんも合流やし」
「大丈夫の意味が不明。不透明! 意義あり!!」
「そんな駄々捏ねてもダメや。受け入れえ」
「うぐっ……スパルタ再びな予感~」
「頑張るで~!」
「お~」
「「「「頑張れ~」」」」
一応、応援だけはくれる一同だった。
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