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293 ちょろいみたいです
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2015. 12. 1
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少し遅い昼食を済ませたビアンは、警備の配置確認の為、王宮の奥から順に見回りを始めていた。
配置確認といっても、平時に大きく変わる事はないので、気楽なものだ。
本来の仕事であるエルヴァストの護衛任務がない今、重要ではあるが、比較的自由に動けるものしか与えられてはいない。
「今日の当直のメンバーは確か……」
異常なく見回りを続け、今夜の配置やメンバーを頭に描きながら、注意点がないかも見ていく。同時に、これ以降の王や王妃、大臣達のスケジュールも視野に入れ、変更すべき所がないかもチェックする。
「大臣達の会議……」
会議室の位置から考え、その前からの大臣達のスケジュールを見直す。複雑に入り組んだ通路も多いので、そこのフォローも重要だ。
「西側が手薄だけど大丈夫?」
「うん?西側か……確かに病欠が多いからな……人数的に今日は厳しく………………」
手元の紙に問題点を書きつけていたビアンは、自分は今、何を聞いたのかと足を止めた。
「後は、そっちの左の通路がマズイね。あっちに会議室とかあるじゃん?北の通路が二人くらい余分だと思うから、持って来た方がいいと思う」
「……」
確かにそうだ。死角になる場所が比較的少ない北の通路にしては、人数が多い気がする。感じていた違和感はこれかと頷く。そして、ゆっくりとそれを指摘してくれた者へとビアンは目を向けた。
「……ティアお嬢さん……なぜここに……?」
ビアンの持つ手元の紙を、背伸びをしながら後ろから覗き込むティアに、ビアンは表情を引きつらせていた。
「ちょっと忍び込んでみた」
「……今、昼間ですよね?雲一つない晴天ですよね?なんでこんな奥まで入り込んでるんですかっ!」
ビアンがいるのは、まだ王族も出入りする中央だ。警備もかなり厳しく、それに当たる騎士の数も多い。
「来れちゃったんだよね。私も、こんな奥まで来るつもりなかったんだよ?白月の担当エリアだけ見て回るつもりでさ。なのに……近衛も大丈夫?」
「……」
大丈夫ではないかもしれない。ビアンは、ティアの実力が分からない訳ではない。白月の騎士であっても、ティアの侵入を防ぐ事は出来ないと理解していた。
「お、お嬢さん……一体何をしにここへ来られたんです?」
ティアならば、単に面白そうだったからとか、暇潰しにと言いそうだなと思いながらも、ビアンは確認せずにはいられなかった。
「あのね。騎士の素行調査をしてたんだよ」
「はい?」
ティアはビアンに、午前中にあった騎士達の授業での情けない状況から、これを思い付いたのだと説明した。そして、昼にあった白月の騎士達の素行についても伝える。
「もう、いっその事、紅翼の奴らみたく教育してやろうかとも思ったんだけど、人数が人数じゃん?そんで、一応確認の為、実力とかを見て回ってたの」
「それは……申し訳ない……」
「うん。ビアンさんが謝っても意味ないよ?」
「はい。ですが……頼みますから、アレはやめてくださいっ。確実に何割かは精神的に死にますからっ」
ビアンは、トラウマとも呼べる苦い記憶を思い出した。それは、赤い鞭を振るい、男達を屍のように転がす恐怖の女王様が降臨した悪夢のような朝の光景だ。
「そうだねぇ。根性なさそうな奴らばっかだったし、遊べなさそうなんだよね……」
「騎士で遊ばないでくださいっ!」
まさに、ティアにしてみれば『騎士で遊ぶ』事だ。『騎士と遊ぶ』ではない。どちらもあってはならない事だが、前者の方がティアには合っていた。
「分かってるって。だから、対策をちゃんと考えてるんだよ。遊べるくらいには実力を上げてもらわないとなぁって」
「それは……いえ、いいです……なんでもないです」
ビアンはしっかりとティアの言葉を聞いていた。せめて遊べるようになるようにしたいとティアは言っているのだ。既に、騎士達をどうにかするのは決定事項らしい。
「予想よりも低いんだもん。これは骨が折れるわ……」
なんの苦労もせず、ここまで来たであろうティアだ。ビアンにはこれを否定する事ができなかった。
「とりあえず、次は騎士の宿舎に行ってみよっかな。訓練の様子を確認してから考えるよ。そんじゃぁ、お邪魔しましたぁっ。あ、これ使って」
「え?」
ティアがビアンへと差し出したのは、王宮の現在の警備配置を細かく示した紙だった。
「見取り図も合ってるでしょ?我ながら正確に書けたと思うんだぁ。警備が手薄な場所と、今回使った侵入経路も書いといたから、見直しとくと良いよ」
「……こ、こんな堂々と……」
「うん。軽いね。中庭なんてガラ空き。笑っちゃった」
「……………参考にさせていただきます……」
「そうして」
肩を落とすビアンの事など気にする事なく、ティアはあっという間にその姿を消していた。
「恐ろしい子だ……」
そんな呟きは、静かな廊下に吸い込まれていったのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
サクヤ「……」
ウル「どうかしました?」
サクヤ「うん……ティアが消えた」
ウル「へ?あ、確かに……いつものお二人と一緒でしたよね?」
サクヤ「そう。それも……学園街からも出たみたいで……」
ウル「っ何の為にっ⁉︎」
サクヤ「それなんだよ……あっちは王都……?」
ウル「!っ何の為に⁉︎」
サクヤ「う~ん……騎士かな」
ウル「騎士?」
サクヤ「あのへなちょこ共を見て、イラついたと見た」
ウル「イラっ……それではまさかっ、城を攻めに行ったんじゃっ⁉︎」
サクヤ「……あり得そうなんだよね……城に向かってる……」
ウル「ふっ……」
サクヤ「あ、ウルっ⁉︎ちょっ、しっかり!」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
悪夢が現実に……と思ったでしょうね……。
すんなり入れてしまったようです。
不安な城ですね。
まぁ、ティアちゃんだから出来たのだと思いますが、やはり危機感は足りないでしょう。
現状把握も、もう終わります。
騎士更生計画はどうなるのか。
では次回、一日空けて3日です。
よろしくお願いします◎
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少し遅い昼食を済ませたビアンは、警備の配置確認の為、王宮の奥から順に見回りを始めていた。
配置確認といっても、平時に大きく変わる事はないので、気楽なものだ。
本来の仕事であるエルヴァストの護衛任務がない今、重要ではあるが、比較的自由に動けるものしか与えられてはいない。
「今日の当直のメンバーは確か……」
異常なく見回りを続け、今夜の配置やメンバーを頭に描きながら、注意点がないかも見ていく。同時に、これ以降の王や王妃、大臣達のスケジュールも視野に入れ、変更すべき所がないかもチェックする。
「大臣達の会議……」
会議室の位置から考え、その前からの大臣達のスケジュールを見直す。複雑に入り組んだ通路も多いので、そこのフォローも重要だ。
「西側が手薄だけど大丈夫?」
「うん?西側か……確かに病欠が多いからな……人数的に今日は厳しく………………」
手元の紙に問題点を書きつけていたビアンは、自分は今、何を聞いたのかと足を止めた。
「後は、そっちの左の通路がマズイね。あっちに会議室とかあるじゃん?北の通路が二人くらい余分だと思うから、持って来た方がいいと思う」
「……」
確かにそうだ。死角になる場所が比較的少ない北の通路にしては、人数が多い気がする。感じていた違和感はこれかと頷く。そして、ゆっくりとそれを指摘してくれた者へとビアンは目を向けた。
「……ティアお嬢さん……なぜここに……?」
ビアンの持つ手元の紙を、背伸びをしながら後ろから覗き込むティアに、ビアンは表情を引きつらせていた。
「ちょっと忍び込んでみた」
「……今、昼間ですよね?雲一つない晴天ですよね?なんでこんな奥まで入り込んでるんですかっ!」
ビアンがいるのは、まだ王族も出入りする中央だ。警備もかなり厳しく、それに当たる騎士の数も多い。
「来れちゃったんだよね。私も、こんな奥まで来るつもりなかったんだよ?白月の担当エリアだけ見て回るつもりでさ。なのに……近衛も大丈夫?」
「……」
大丈夫ではないかもしれない。ビアンは、ティアの実力が分からない訳ではない。白月の騎士であっても、ティアの侵入を防ぐ事は出来ないと理解していた。
「お、お嬢さん……一体何をしにここへ来られたんです?」
ティアならば、単に面白そうだったからとか、暇潰しにと言いそうだなと思いながらも、ビアンは確認せずにはいられなかった。
「あのね。騎士の素行調査をしてたんだよ」
「はい?」
ティアはビアンに、午前中にあった騎士達の授業での情けない状況から、これを思い付いたのだと説明した。そして、昼にあった白月の騎士達の素行についても伝える。
「もう、いっその事、紅翼の奴らみたく教育してやろうかとも思ったんだけど、人数が人数じゃん?そんで、一応確認の為、実力とかを見て回ってたの」
「それは……申し訳ない……」
「うん。ビアンさんが謝っても意味ないよ?」
「はい。ですが……頼みますから、アレはやめてくださいっ。確実に何割かは精神的に死にますからっ」
ビアンは、トラウマとも呼べる苦い記憶を思い出した。それは、赤い鞭を振るい、男達を屍のように転がす恐怖の女王様が降臨した悪夢のような朝の光景だ。
「そうだねぇ。根性なさそうな奴らばっかだったし、遊べなさそうなんだよね……」
「騎士で遊ばないでくださいっ!」
まさに、ティアにしてみれば『騎士で遊ぶ』事だ。『騎士と遊ぶ』ではない。どちらもあってはならない事だが、前者の方がティアには合っていた。
「分かってるって。だから、対策をちゃんと考えてるんだよ。遊べるくらいには実力を上げてもらわないとなぁって」
「それは……いえ、いいです……なんでもないです」
ビアンはしっかりとティアの言葉を聞いていた。せめて遊べるようになるようにしたいとティアは言っているのだ。既に、騎士達をどうにかするのは決定事項らしい。
「予想よりも低いんだもん。これは骨が折れるわ……」
なんの苦労もせず、ここまで来たであろうティアだ。ビアンにはこれを否定する事ができなかった。
「とりあえず、次は騎士の宿舎に行ってみよっかな。訓練の様子を確認してから考えるよ。そんじゃぁ、お邪魔しましたぁっ。あ、これ使って」
「え?」
ティアがビアンへと差し出したのは、王宮の現在の警備配置を細かく示した紙だった。
「見取り図も合ってるでしょ?我ながら正確に書けたと思うんだぁ。警備が手薄な場所と、今回使った侵入経路も書いといたから、見直しとくと良いよ」
「……こ、こんな堂々と……」
「うん。軽いね。中庭なんてガラ空き。笑っちゃった」
「……………参考にさせていただきます……」
「そうして」
肩を落とすビアンの事など気にする事なく、ティアはあっという間にその姿を消していた。
「恐ろしい子だ……」
そんな呟きは、静かな廊下に吸い込まれていったのだった。
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舞台裏のお話。
サクヤ「……」
ウル「どうかしました?」
サクヤ「うん……ティアが消えた」
ウル「へ?あ、確かに……いつものお二人と一緒でしたよね?」
サクヤ「そう。それも……学園街からも出たみたいで……」
ウル「っ何の為にっ⁉︎」
サクヤ「それなんだよ……あっちは王都……?」
ウル「!っ何の為に⁉︎」
サクヤ「う~ん……騎士かな」
ウル「騎士?」
サクヤ「あのへなちょこ共を見て、イラついたと見た」
ウル「イラっ……それではまさかっ、城を攻めに行ったんじゃっ⁉︎」
サクヤ「……あり得そうなんだよね……城に向かってる……」
ウル「ふっ……」
サクヤ「あ、ウルっ⁉︎ちょっ、しっかり!」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
悪夢が現実に……と思ったでしょうね……。
すんなり入れてしまったようです。
不安な城ですね。
まぁ、ティアちゃんだから出来たのだと思いますが、やはり危機感は足りないでしょう。
現状把握も、もう終わります。
騎士更生計画はどうなるのか。
では次回、一日空けて3日です。
よろしくお願いします◎
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