190 / 457
連載
294 警戒していませんでした
しおりを挟む
2015. 12. 3
********************************************
ビアンへの宣言通り、騎士達の宿舎や訓練場を回ったティアは、騎士更生計画について、何か良い案はないかと考えながら歩いていた。
《くぅ~ん……》
マティが少々不安そうに声を出したのにも、今のティアには気付けない。
王都は人が多い。その上、道が広く、人混みの間を縫いながらスルスルと進むティア。無意識に人を避けている為、後を着いていくマティの事などお構いなしだ。
勿論、はぐれた所で気配を辿る事が出来るので、そんな危機感もない。
マティは今、いつもの子犬サイズよりも大きくなっている。お陰で踏み付けられる事はない。そして、その背中には、荷物袋を背負っていた。
《フラム。大丈夫?》
《キュゥ……》
小さな声でその袋に話しかける。そこには、フラムが入っているのだ。
これだけの人混みとなると、ティアの腰では潰されてしまう可能性がある。そこで、マティが背負う事になったのだった。
《はぁ……邪魔だなぁ……》
主の姿が見えないではないかと、人混みにイラつくマティ。
その時、その苛立ちを感じたかのようなタイミングで、袋の中のフラムが身じろいだ。
《キュゥゥゥ……》
《フラム?》
マティは、あまりの人混みにうんざりしていた事もあり、珍しくその気配に気付けなかった。
《あ……》
何気なく顔を上げ、振り向いた先には、その人の手が迫っていたのだ。
その手に頭を掴まれた時、ティアがようやく、少々離れてしまったマティを振り返り、器用に人の波を掻き分けて駆けてきた。
「ごめん。マティ。大丈……………」
そう言って固まったティアは、マティと同じ人物へと目を向けていた。
その人の目には、しっかりとティアの姿が映っている。
「聞くが、これは約束の範囲外だよな?」
明らかに怒りを含んだその声は、なんだか懐かしい。これに素直に謝れば良いのだが、既にティアの中では、この場を誤魔化す為の台詞が準備中だった。
「え~っと…………知ってます?この世にはよく似た人って結構いるんですよ。声は顔の骨格が重要だそうで、顔が似ている人は声の質も似ていると……」
「ティア」
長い付き合いだ。ティアにはその怒りがヒシヒシと感じられる。しかし、やはりそれは受け入れがたいものだ。
「人の頭は都合よくできていて、実際は、ほんの少し似ているだけであっても、頭が勝手に変換し、そう見えるようにしてしまうという事もあるそうで……」
「ティア……」
誤魔化しようがないと理解していても、何とかして回避しようと焦る。だから、こんな時の禁断の台詞が、思わず出てしまった。
「あ~っと……そうだっ、人違いですっ」
「っんっなワケあるかっ!」
「……デスヨネ~……」
そう、その台詞は禁断の台詞。口にしたら最後。負けを認めたも同然なのだ。だが、負けず嫌い、怒られるのが大嫌いなティアは、この後、この相手を倒す、とっておきの台詞を知っていた。
「ティア。どういう事か説明しろ」
「……だって……」
説教モードに入りかけている今、これが最後のチャンスだ。ティアは少し目をそらす。そして、その台詞は発動した。
「ルクスに会いたかったんだもん……」
「っ~っっっ⁉︎」
台詞の最後にかけて下から目線を送ればイチコロだった。
フリーズした今が好機と、ティアはマティと一瞬、目で会話する。この人混みでは、小柄なティアとマティの足には追いつけない。勝ったも同然だと、勝利の笑みを浮かべ、ティアはルクスに背を向け駆け出した。
「っあっ、ティアっ!」
制止の声など聞く気はない。
「ふふん。ちょろいわ」
だが、その一瞬の油断が命取りだった。
「おや、ティアちゃん」
「っへ⁉︎クレアママ⁉︎」
目の前に、腕を広げたクレアがいたのだ。
「何だかよくわからないけど、たまには息子の力になろうかね。ユリ、ミラ、そこの子犬ちゃんを捕まえてくれるかい?」
「はいな」
「任せて」
人混みで自由に動けないマティは、あっという間に、クレアが頼んだ女達によって捕まっていた。
「あっ、マティっ」
「ほい。ティアちゃんも捕まえた」
「ふぎゅっ」
マティを気にしていたティアも、こうしてクレアのキツイ抱擁を受けてあっけなく捕まったのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
トーイ「随分、増えたな」
チーク「ああ、一週間でこれなら、ひと月もすれば落ち着くんじゃないか?」
ツバン「はい。おじさん、串焼き五つだったね」
冒険者A「おう。また来るぜ」
三バカ「「「お待ちしてま~す」」」
冒険者B「いい匂いだなぁっ」
トーイ「ありがとうございます。一本、どうですか?」
冒険者B「いや、三本頼む」
トーイ「はいっ。ただいま」
チーク「お包みしますか?」
冒険者B「おっ、包んでくれんのか?なら、あと五本追加してくれっ」
チーク「ありがとうございます。ご一緒にお飲み物はいかがです?」
冒険者B「もしかして、その入れ物ごと買えるのか?」
ツバン「そうですよ。その分、少し値段が上がりますが、何度か使えますし、創工師と魔工師が研究して作った最新技術で、中に入れた飲み物の温度を入れた時とほとんど変わらず保ちます」
冒険者B「すげぇな!なら、それももらう」
三バカ「「「ありがとうございましたっ」」」
ツバン「さすがは、ティア様。物凄い売り上げだよっ!」
トーイ「だなっ!」
チーク「怖いぐらいだ!」
三バカ「「「商売っていいな!」」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
彼らは、バレンで違う道に目覚めています。
捕獲されました。
少し反省が必要ですよね。
学校をサボってはいけません。
でも、補導がないのはいいですね。
それだけ、学校に行けない子ども達も多いという事ではありますが……。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
********************************************
ビアンへの宣言通り、騎士達の宿舎や訓練場を回ったティアは、騎士更生計画について、何か良い案はないかと考えながら歩いていた。
《くぅ~ん……》
マティが少々不安そうに声を出したのにも、今のティアには気付けない。
王都は人が多い。その上、道が広く、人混みの間を縫いながらスルスルと進むティア。無意識に人を避けている為、後を着いていくマティの事などお構いなしだ。
勿論、はぐれた所で気配を辿る事が出来るので、そんな危機感もない。
マティは今、いつもの子犬サイズよりも大きくなっている。お陰で踏み付けられる事はない。そして、その背中には、荷物袋を背負っていた。
《フラム。大丈夫?》
《キュゥ……》
小さな声でその袋に話しかける。そこには、フラムが入っているのだ。
これだけの人混みとなると、ティアの腰では潰されてしまう可能性がある。そこで、マティが背負う事になったのだった。
《はぁ……邪魔だなぁ……》
主の姿が見えないではないかと、人混みにイラつくマティ。
その時、その苛立ちを感じたかのようなタイミングで、袋の中のフラムが身じろいだ。
《キュゥゥゥ……》
《フラム?》
マティは、あまりの人混みにうんざりしていた事もあり、珍しくその気配に気付けなかった。
《あ……》
何気なく顔を上げ、振り向いた先には、その人の手が迫っていたのだ。
その手に頭を掴まれた時、ティアがようやく、少々離れてしまったマティを振り返り、器用に人の波を掻き分けて駆けてきた。
「ごめん。マティ。大丈……………」
そう言って固まったティアは、マティと同じ人物へと目を向けていた。
その人の目には、しっかりとティアの姿が映っている。
「聞くが、これは約束の範囲外だよな?」
明らかに怒りを含んだその声は、なんだか懐かしい。これに素直に謝れば良いのだが、既にティアの中では、この場を誤魔化す為の台詞が準備中だった。
「え~っと…………知ってます?この世にはよく似た人って結構いるんですよ。声は顔の骨格が重要だそうで、顔が似ている人は声の質も似ていると……」
「ティア」
長い付き合いだ。ティアにはその怒りがヒシヒシと感じられる。しかし、やはりそれは受け入れがたいものだ。
「人の頭は都合よくできていて、実際は、ほんの少し似ているだけであっても、頭が勝手に変換し、そう見えるようにしてしまうという事もあるそうで……」
「ティア……」
誤魔化しようがないと理解していても、何とかして回避しようと焦る。だから、こんな時の禁断の台詞が、思わず出てしまった。
「あ~っと……そうだっ、人違いですっ」
「っんっなワケあるかっ!」
「……デスヨネ~……」
そう、その台詞は禁断の台詞。口にしたら最後。負けを認めたも同然なのだ。だが、負けず嫌い、怒られるのが大嫌いなティアは、この後、この相手を倒す、とっておきの台詞を知っていた。
「ティア。どういう事か説明しろ」
「……だって……」
説教モードに入りかけている今、これが最後のチャンスだ。ティアは少し目をそらす。そして、その台詞は発動した。
「ルクスに会いたかったんだもん……」
「っ~っっっ⁉︎」
台詞の最後にかけて下から目線を送ればイチコロだった。
フリーズした今が好機と、ティアはマティと一瞬、目で会話する。この人混みでは、小柄なティアとマティの足には追いつけない。勝ったも同然だと、勝利の笑みを浮かべ、ティアはルクスに背を向け駆け出した。
「っあっ、ティアっ!」
制止の声など聞く気はない。
「ふふん。ちょろいわ」
だが、その一瞬の油断が命取りだった。
「おや、ティアちゃん」
「っへ⁉︎クレアママ⁉︎」
目の前に、腕を広げたクレアがいたのだ。
「何だかよくわからないけど、たまには息子の力になろうかね。ユリ、ミラ、そこの子犬ちゃんを捕まえてくれるかい?」
「はいな」
「任せて」
人混みで自由に動けないマティは、あっという間に、クレアが頼んだ女達によって捕まっていた。
「あっ、マティっ」
「ほい。ティアちゃんも捕まえた」
「ふぎゅっ」
マティを気にしていたティアも、こうしてクレアのキツイ抱擁を受けてあっけなく捕まったのだった。
************************************************
舞台裏のお話。
トーイ「随分、増えたな」
チーク「ああ、一週間でこれなら、ひと月もすれば落ち着くんじゃないか?」
ツバン「はい。おじさん、串焼き五つだったね」
冒険者A「おう。また来るぜ」
三バカ「「「お待ちしてま~す」」」
冒険者B「いい匂いだなぁっ」
トーイ「ありがとうございます。一本、どうですか?」
冒険者B「いや、三本頼む」
トーイ「はいっ。ただいま」
チーク「お包みしますか?」
冒険者B「おっ、包んでくれんのか?なら、あと五本追加してくれっ」
チーク「ありがとうございます。ご一緒にお飲み物はいかがです?」
冒険者B「もしかして、その入れ物ごと買えるのか?」
ツバン「そうですよ。その分、少し値段が上がりますが、何度か使えますし、創工師と魔工師が研究して作った最新技術で、中に入れた飲み物の温度を入れた時とほとんど変わらず保ちます」
冒険者B「すげぇな!なら、それももらう」
三バカ「「「ありがとうございましたっ」」」
ツバン「さすがは、ティア様。物凄い売り上げだよっ!」
トーイ「だなっ!」
チーク「怖いぐらいだ!」
三バカ「「「商売っていいな!」」」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
彼らは、バレンで違う道に目覚めています。
捕獲されました。
少し反省が必要ですよね。
学校をサボってはいけません。
でも、補導がないのはいいですね。
それだけ、学校に行けない子ども達も多いという事ではありますが……。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。