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連載
455 勇敢に果敢に
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2016. 7. 15
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ザランは冒険者ギルドを出ると、のんびりと街を眺めながら待ち合わせの西門へと向かった。
西門に着くと、既にメリのパーティが揃っていた。
「おっ、来たな」
「悪い。待たせたか」
「いいや、俺らが早かっただけだよ。さぁ、いざ出発!」
「「「おぉっ」」」
「おう……」
やる気に満ちた様子に苦笑しながら、ザランはこのメリのパーティについて出発したのだ。
荷物運び用に一頭の馬を連れ、ザランを含めて五人の冒険者一行は、丸一日半ほど歩き続けて目的の場所へとたどり着いていた。
そこは森や山に囲まれた小さな村だった。
「ギルドの調査だと、次にこの村が危ないって事だったが……静かだな」
「避難してるんじゃない?」
「警告はしてるはずだもんな」
「でも、どこに?」
メリ達がそう呟くのも無理はない。普通ならば、そろそろ夕食の支度や、畑仕事でまだ人が外に出ていてもいい時間なのだ。
しかし、家が十数軒あるにも関わらず、外には子どもの姿一つもない。声も聞こえなかった。
だが、ザランには分かった。
「……人は家の中だ。多分、警戒して外に出るのを控えてんだろ。それに、逃げる場所もこの辺りにはねぇしな」
気配は確かに家の中にある。音を極力立てないようにする、張り詰めたものも感じられた。
村を捨て、山や森へ逃げるわけにもいかない。周りにあるのは危険な魔獣が少ない比較的安全な森ではあるが、いない訳ではなく、ザランが感じる気配の中には、幼い子どももいるのだ。安全が保証される場所はなかった。
「そうか。近くに街や村もなかったしな」
「そういえば、ここが危ない理由はそれだったね」
「あぁ、ここが進行方向で唯一の村だっけか」
メリ達が話すのを聞きながらも、ザランは痛いほどの緊張感を村から感じていた。
そして、近付いてくるその気配も感じたのだ。
「ちっ、来やがった。メリ、村を突っ切るぞ。手前で何とかケリを付けるんだ」
「マジ? 本当だっ。みんな、行くぞ!」
そうメリが声を掛けるのを、ザランは背中で聞いていた。既に走り出していたのだ。
村の真ん中を突っ切りながら、視界の端に不安気な村人達の視線を捉えていた。
暗くなってきた家の中から、静かにその目だけが光って見えたのだ。
「ちっ、ヤらせるかよ」
この村を襲わせるわけにはいかない。
村を抜け、しばらくして森の上空にその姿を捉える。
「おい、五頭じゃねぇのかよっ」
「……十……って倍だろ!」
メリも話が違うと能天気ないつもの表情を一変させた。
「ま、まずいよっ」
「ムリだ……」
「メリ、ここは一旦引こうっ」
メリの仲間達も、その数を見て完全に腰が引けていた。
メリも判断を迷っているのが分かる。だが、ザランはグッと手に力を入れると後ろにいるメリ達に構わず駆け出した。
「ザランっ⁉︎」
メリが呼び止める。それに振り向く事なく怒鳴るように言った。
「このまま村を見捨てられるかよっ!」
その大声は、ワイバーンを引き付ける意味もあった。村から引き離す為、右へと進路を変える。
そして、全速力で走りながら、アイテムボックスから拳で握れるほどの火薬の入った爆音玉と呼ばれる威嚇用の玉を取り出す。
これは、少しだけ火花が出るが、大きな破裂音がするもので、引火用の導線に火をつけて魔獣に向かって投げる。
弱い魔獣ならばその音を聞いて逃げていくし、そうでなくても、大きな音に驚いてこちらが逃げる隙を作る事ができるのだ。
一般的には、畑を荒らす害獣を追い払う為に使われたりしていた。
冒険者に至っては、これを離れた場所にいる仲間への合図に使ったりもする。
ザランは走りながらそれに火をつけると、振り向いてワイバーンに投げつけた。
《グルァァァァッ!》
「よっし。こっちだっ!!」
これでワイバーンを完璧にこちらへ引き付ける事ができる。そう思った。
「なにっ⁉︎」
しかし、ザランを標的に定め、追って来たのは半分だけだったのだ。
「どういうことだっ」
ザランなど最初から目に入っていないと、半数はそのまま脇目も振らず村へ向かって行く。
だが、なぜだと考えている余裕はなかった。
《グルァァァァ!!》
「クソっ!」
ワイバーンは一気に急降下してザランに襲いかかる。ドラゴンよりも小さいとはいえ、人の数倍の大きさだ。
ザランは背から大剣を抜くと、向かって来たワイバーンを切りつける。
「ちっ、堅ってぇな……」
剣に当たった時の音は、硬質な武具に当たったような高音だった。
それでも何度か切りつけ、吐き出される風のブレスを避けると、ワイバーンが着地した。
何度も低空飛行を仕掛けるより良いと考えたのかもしれない。目標を常に定めておきたかったのだろう。
五頭のワイバーンは今、ザラン一人を取り囲んでいた。
「何だよこの状況っ」
ザランもワイバーンよりも小回りが利くとはいえ、一度に相手ができる余裕はない。これはAランクの実力があっても可能なことではないだろう。
絶体絶命だと冷や汗を拭ったその時だった。
《ずど~んっ》
《グガっ!!》
「は?」
何かが物凄い勢いでワイバーンを跳ね飛ばしたのだ。
《もういっか~いっ》
《グガァァァ!》
「……おい……」
再び駆け戻って弾丸のようにワイバーンを跳ね飛ばしていくのが何者なのか。そんなものは、その色を見なくても分かったかもしれない。
「……マティ……」
思わずその名が口をついて出る。呆れ過ぎて脱力感が半端ない。
《お待たせサラちゃんっ。正義の味方っ、サラちゃん愛好会の副会長、マティ参上っ!》
「……」
助かったとか、ありがとうなんて言葉は死んでも言いたくなかった。
************************************************
舞台裏のお話。
エル「……」
ビアン「エ、エル様……」
エル「ビアン」
ビアン「はっ、はいっ!」
エル「最近、ティアの気持ちが分かるんだ……」
ビアン「それは……騎士達に……」
エル「もういっその事、使い物にならなくなっても、全員の心を折る勢いで……うん」
ビアン「あの……今何をお考えで……」
エル「お前達。全員で私にかかってこい」
騎士達「「「……」」」
ビアン「エル様っ!」
エル「うるさいぞ、ビアン。焦れったい上に、覇気がなさ過ぎてうっかり寝てしまいそうなんだよ。次の仕事もあるんだ」
隊長「全員を相手になさるのは無理かと……私はエル様の剣の腕を知りませんし……」
エル「構わん。ティアには事後報告になるが、ダメとは言わんだろう」
隊長「ティア……? どなたです?」
ビアン「っ、あ、あ~……なんでもありません。ちょっ、エル様⁉︎」
エル「良いからかかってこい。おキレイな型の練習など、学生にしか本来許されんものだ。実戦あるのみ。さぁ、来い」
騎士A「来いって……なぁ……」
騎士B「まさか王子相手になど……」
騎士C「怪我などされたら……」
エル「……おい、隊長。先ずは隊長からっ」
ビアン「あぁ~っ、き、君達」
騎士達「「「はい」」」
ビアン「今年で五年目だったか。君達三人が先ず相手を。自分の実力を出し切るつもりで行きなさい」
騎士A「はぁ……ですが……」
ビアン「大丈夫だ。寧ろ君達が怪我をしないように気をつけなさい」
騎士B「本当によろしいので?」
ビアン「心配ない」
騎士C「……分かりました。お願いします」
エル「よし。なら来い」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
エル兄ちゃんが騎士達の心を折ります。
サラちゃんはいじられるだけの人ではありませんでしたね。
男気溢れる頼もしい冒険者です。
勇敢に挑んでいく人です。
こんなサラちゃんをマティが助けないはずありません。
では次回、一日空けて17日です。
よろしくお願いします◎
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ザランは冒険者ギルドを出ると、のんびりと街を眺めながら待ち合わせの西門へと向かった。
西門に着くと、既にメリのパーティが揃っていた。
「おっ、来たな」
「悪い。待たせたか」
「いいや、俺らが早かっただけだよ。さぁ、いざ出発!」
「「「おぉっ」」」
「おう……」
やる気に満ちた様子に苦笑しながら、ザランはこのメリのパーティについて出発したのだ。
荷物運び用に一頭の馬を連れ、ザランを含めて五人の冒険者一行は、丸一日半ほど歩き続けて目的の場所へとたどり着いていた。
そこは森や山に囲まれた小さな村だった。
「ギルドの調査だと、次にこの村が危ないって事だったが……静かだな」
「避難してるんじゃない?」
「警告はしてるはずだもんな」
「でも、どこに?」
メリ達がそう呟くのも無理はない。普通ならば、そろそろ夕食の支度や、畑仕事でまだ人が外に出ていてもいい時間なのだ。
しかし、家が十数軒あるにも関わらず、外には子どもの姿一つもない。声も聞こえなかった。
だが、ザランには分かった。
「……人は家の中だ。多分、警戒して外に出るのを控えてんだろ。それに、逃げる場所もこの辺りにはねぇしな」
気配は確かに家の中にある。音を極力立てないようにする、張り詰めたものも感じられた。
村を捨て、山や森へ逃げるわけにもいかない。周りにあるのは危険な魔獣が少ない比較的安全な森ではあるが、いない訳ではなく、ザランが感じる気配の中には、幼い子どももいるのだ。安全が保証される場所はなかった。
「そうか。近くに街や村もなかったしな」
「そういえば、ここが危ない理由はそれだったね」
「あぁ、ここが進行方向で唯一の村だっけか」
メリ達が話すのを聞きながらも、ザランは痛いほどの緊張感を村から感じていた。
そして、近付いてくるその気配も感じたのだ。
「ちっ、来やがった。メリ、村を突っ切るぞ。手前で何とかケリを付けるんだ」
「マジ? 本当だっ。みんな、行くぞ!」
そうメリが声を掛けるのを、ザランは背中で聞いていた。既に走り出していたのだ。
村の真ん中を突っ切りながら、視界の端に不安気な村人達の視線を捉えていた。
暗くなってきた家の中から、静かにその目だけが光って見えたのだ。
「ちっ、ヤらせるかよ」
この村を襲わせるわけにはいかない。
村を抜け、しばらくして森の上空にその姿を捉える。
「おい、五頭じゃねぇのかよっ」
「……十……って倍だろ!」
メリも話が違うと能天気ないつもの表情を一変させた。
「ま、まずいよっ」
「ムリだ……」
「メリ、ここは一旦引こうっ」
メリの仲間達も、その数を見て完全に腰が引けていた。
メリも判断を迷っているのが分かる。だが、ザランはグッと手に力を入れると後ろにいるメリ達に構わず駆け出した。
「ザランっ⁉︎」
メリが呼び止める。それに振り向く事なく怒鳴るように言った。
「このまま村を見捨てられるかよっ!」
その大声は、ワイバーンを引き付ける意味もあった。村から引き離す為、右へと進路を変える。
そして、全速力で走りながら、アイテムボックスから拳で握れるほどの火薬の入った爆音玉と呼ばれる威嚇用の玉を取り出す。
これは、少しだけ火花が出るが、大きな破裂音がするもので、引火用の導線に火をつけて魔獣に向かって投げる。
弱い魔獣ならばその音を聞いて逃げていくし、そうでなくても、大きな音に驚いてこちらが逃げる隙を作る事ができるのだ。
一般的には、畑を荒らす害獣を追い払う為に使われたりしていた。
冒険者に至っては、これを離れた場所にいる仲間への合図に使ったりもする。
ザランは走りながらそれに火をつけると、振り向いてワイバーンに投げつけた。
《グルァァァァッ!》
「よっし。こっちだっ!!」
これでワイバーンを完璧にこちらへ引き付ける事ができる。そう思った。
「なにっ⁉︎」
しかし、ザランを標的に定め、追って来たのは半分だけだったのだ。
「どういうことだっ」
ザランなど最初から目に入っていないと、半数はそのまま脇目も振らず村へ向かって行く。
だが、なぜだと考えている余裕はなかった。
《グルァァァァ!!》
「クソっ!」
ワイバーンは一気に急降下してザランに襲いかかる。ドラゴンよりも小さいとはいえ、人の数倍の大きさだ。
ザランは背から大剣を抜くと、向かって来たワイバーンを切りつける。
「ちっ、堅ってぇな……」
剣に当たった時の音は、硬質な武具に当たったような高音だった。
それでも何度か切りつけ、吐き出される風のブレスを避けると、ワイバーンが着地した。
何度も低空飛行を仕掛けるより良いと考えたのかもしれない。目標を常に定めておきたかったのだろう。
五頭のワイバーンは今、ザラン一人を取り囲んでいた。
「何だよこの状況っ」
ザランもワイバーンよりも小回りが利くとはいえ、一度に相手ができる余裕はない。これはAランクの実力があっても可能なことではないだろう。
絶体絶命だと冷や汗を拭ったその時だった。
《ずど~んっ》
《グガっ!!》
「は?」
何かが物凄い勢いでワイバーンを跳ね飛ばしたのだ。
《もういっか~いっ》
《グガァァァ!》
「……おい……」
再び駆け戻って弾丸のようにワイバーンを跳ね飛ばしていくのが何者なのか。そんなものは、その色を見なくても分かったかもしれない。
「……マティ……」
思わずその名が口をついて出る。呆れ過ぎて脱力感が半端ない。
《お待たせサラちゃんっ。正義の味方っ、サラちゃん愛好会の副会長、マティ参上っ!》
「……」
助かったとか、ありがとうなんて言葉は死んでも言いたくなかった。
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舞台裏のお話。
エル「……」
ビアン「エ、エル様……」
エル「ビアン」
ビアン「はっ、はいっ!」
エル「最近、ティアの気持ちが分かるんだ……」
ビアン「それは……騎士達に……」
エル「もういっその事、使い物にならなくなっても、全員の心を折る勢いで……うん」
ビアン「あの……今何をお考えで……」
エル「お前達。全員で私にかかってこい」
騎士達「「「……」」」
ビアン「エル様っ!」
エル「うるさいぞ、ビアン。焦れったい上に、覇気がなさ過ぎてうっかり寝てしまいそうなんだよ。次の仕事もあるんだ」
隊長「全員を相手になさるのは無理かと……私はエル様の剣の腕を知りませんし……」
エル「構わん。ティアには事後報告になるが、ダメとは言わんだろう」
隊長「ティア……? どなたです?」
ビアン「っ、あ、あ~……なんでもありません。ちょっ、エル様⁉︎」
エル「良いからかかってこい。おキレイな型の練習など、学生にしか本来許されんものだ。実戦あるのみ。さぁ、来い」
騎士A「来いって……なぁ……」
騎士B「まさか王子相手になど……」
騎士C「怪我などされたら……」
エル「……おい、隊長。先ずは隊長からっ」
ビアン「あぁ~っ、き、君達」
騎士達「「「はい」」」
ビアン「今年で五年目だったか。君達三人が先ず相手を。自分の実力を出し切るつもりで行きなさい」
騎士A「はぁ……ですが……」
ビアン「大丈夫だ。寧ろ君達が怪我をしないように気をつけなさい」
騎士B「本当によろしいので?」
ビアン「心配ない」
騎士C「……分かりました。お願いします」
エル「よし。なら来い」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
エル兄ちゃんが騎士達の心を折ります。
サラちゃんはいじられるだけの人ではありませんでしたね。
男気溢れる頼もしい冒険者です。
勇敢に挑んでいく人です。
こんなサラちゃんをマティが助けないはずありません。
では次回、一日空けて17日です。
よろしくお願いします◎
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