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連載
542 子ども好きなお兄さんです
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2016. 12. 16
**********
ティアは周りにディムースの外の者がいないと確認してから魔術で二十代半ば頃の姿へ変わる。
それと同時に、髪と瞳を変えていた魔術は解けてしまう。
「……っ……ティア……その髪は……」
そう。ティアの髪が昔のように赤い色になったと、ファルには話していなかったのだ。
「母様に夢で会ったって言ったでしょ? その時、変わっちゃったんだ。懐かしいでしょ?」
「……あぁ……マティかと思った……」
「ふふっ、うん。みんなにもそう言われた。結構嬉しいかも」
手を後ろで組み、笑うと、ファルが頭を撫でた。
「……よく似合う……」
昔を懐かしむように、愛おしむように、ファルは優しく微笑んだ。
「……他に変化はないか?……体調も平気か……?」
ふっと笑みを消すと、今度は心配しだした。
「平気だよ。ただ、ちょっと急激に魔力が増えたけどね」
「……そうか……ハイヒューマンになったんだな……」
「なんで分かるの?」
あっさりとファルが断定した事を不思議に思った。
「……強い魂と魔力の波動……マティと同じ……」
「へぇ……」
ファルは勘が鋭い。根拠のない事でも、感覚で理解し、答えを見つける。今回も、そんな感覚の話なのだろうと思った。しかし、今まで外れた事もないのだ。
「……辛い時は言え……側にいる……」
「うん」
ファルも、サティアが決断した時、側にいられなかった事を悔いている。言葉にする事が苦手なファルが、わざわざこう言う程だ。さすがにティアも、肝に銘じるしかない。
それから、ティアはファルと手合わせをした。体の大きさも、慣れたものだ。記憶にあるマティアスの動きを真似て、ファルとも良い勝負になった。
そんなティアとファルを見ていたトゥーレは、圧倒されているようだ。
「なっ、なんて……っ」
しばらくして、満足したティアとファルは、笑い合いながら武器を下ろす。
「ははっ、ファル兄ってば、昔より容赦しなくなった」
「……その姿だからだ……」
「あ~……子ども相手って思っちゃうんだね。ファル兄は子ども好きだから……」
武骨な体。ほとんど感情が乗らない表情。それらは、子どもにとって怖いものだ。しかし、ファルは瞳で語る。
金の縁取りが美しいその瞳が、子どもを愛おしいと言っている。その瞳に魅せられ、怖い人と認識されないのだ。
だから、このディムースでも、ファルは子ども達に最も人気があった。
何より、数少ない言葉が全て真実だったからかもしれない。子どもは案外、大人の嘘を暴く。
「……子どもでなくても、ティアは好きだ……」
「う、うん……ドキッとするじゃん……」
本当だと分かるから、余計に照れてしまうティアだ。
「……そういえば、イルとカイはどうした……」
ファルは、娘と同じ名前のイルーシュと、その双子のカイラントと遊ぶのが楽しかったらしい。
「サルバの屋敷にいるよ。トゥーレも連れて、会いに行ってやってよ」
「……そうしよう……」
どこまでも子どもに甘いファルだ。
「そういえば、お祖父様は? ゲイルさんも家にいなかったんだけど」
その気になればティアは気配を探れるのだが、そうそう敵でもない人の気配を探るような無粋なまねはしない。
「……ゼノとゲイルなら、妖精王のダンジョンだ……」
「……お祖父様……本当に悔しかったんだ……」
ゼノスバートは、ベリアローズがAランクの冒険者になった事で、孫に先を越されたと悔しがっているようなのだ。
「よりにもよって、琥珀じゃなくて赤白なんて……焦ってるなぁ……」
「……死ぬ事はないから大丈夫だ……」
「そうだね……」
妖精が管理しているダンジョンの中は、安全だ。唯一考えられる死因は、リアル過ぎる魔獣や罠によるショック死くらい。根性のない者は直ぐに逃げ出すので、まずないだろう。
ただし、リタイアすれば、手持ちの荷物の中から何かが消える。そこで半狂乱になるのは無関係だ。
「お祖父様は間に合わないかなぁ」
「……対抗戦か……」
「そう。メンバー考え中なの。まだ人数決まってないけどね」
近く開催される騎士と冒険者の対抗戦。それをティアは見据えているのだ。
**********
舞台裏のお話。
トゥーレ「……赤い髪なんて、はじめて見た……」
町人「見事な赤い髪っすねぇ。赤髪の冒険者の話を思い出しますよ」
トゥーレ「赤髪……?」
町人「知らないんで? 書館にあるんで、読んでみるといいですよ」
トゥーレ「そうなのか……ありがとう」
町人「オススメは、竜人族の戦士と出会う話っすね。この前聞いたら、ファル兄貴の事でしたよ」
トゥーレ「ファル師匠の?」
町人「ええ。物語に語られる方を実際に見られるのは、とても感慨深いものです」
トゥーレ「……女神もな……」
町人「はい?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
生きていますからね。
ファル兄は普段、他の人とはそれほどお話しませんが、ティアちゃんとは一生懸命喋ります。
ゼノじぃちゃんは訓練中だそうです。
では次回、一日空けて18日です。
よろしくお願いします◎
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ティアは周りにディムースの外の者がいないと確認してから魔術で二十代半ば頃の姿へ変わる。
それと同時に、髪と瞳を変えていた魔術は解けてしまう。
「……っ……ティア……その髪は……」
そう。ティアの髪が昔のように赤い色になったと、ファルには話していなかったのだ。
「母様に夢で会ったって言ったでしょ? その時、変わっちゃったんだ。懐かしいでしょ?」
「……あぁ……マティかと思った……」
「ふふっ、うん。みんなにもそう言われた。結構嬉しいかも」
手を後ろで組み、笑うと、ファルが頭を撫でた。
「……よく似合う……」
昔を懐かしむように、愛おしむように、ファルは優しく微笑んだ。
「……他に変化はないか?……体調も平気か……?」
ふっと笑みを消すと、今度は心配しだした。
「平気だよ。ただ、ちょっと急激に魔力が増えたけどね」
「……そうか……ハイヒューマンになったんだな……」
「なんで分かるの?」
あっさりとファルが断定した事を不思議に思った。
「……強い魂と魔力の波動……マティと同じ……」
「へぇ……」
ファルは勘が鋭い。根拠のない事でも、感覚で理解し、答えを見つける。今回も、そんな感覚の話なのだろうと思った。しかし、今まで外れた事もないのだ。
「……辛い時は言え……側にいる……」
「うん」
ファルも、サティアが決断した時、側にいられなかった事を悔いている。言葉にする事が苦手なファルが、わざわざこう言う程だ。さすがにティアも、肝に銘じるしかない。
それから、ティアはファルと手合わせをした。体の大きさも、慣れたものだ。記憶にあるマティアスの動きを真似て、ファルとも良い勝負になった。
そんなティアとファルを見ていたトゥーレは、圧倒されているようだ。
「なっ、なんて……っ」
しばらくして、満足したティアとファルは、笑い合いながら武器を下ろす。
「ははっ、ファル兄ってば、昔より容赦しなくなった」
「……その姿だからだ……」
「あ~……子ども相手って思っちゃうんだね。ファル兄は子ども好きだから……」
武骨な体。ほとんど感情が乗らない表情。それらは、子どもにとって怖いものだ。しかし、ファルは瞳で語る。
金の縁取りが美しいその瞳が、子どもを愛おしいと言っている。その瞳に魅せられ、怖い人と認識されないのだ。
だから、このディムースでも、ファルは子ども達に最も人気があった。
何より、数少ない言葉が全て真実だったからかもしれない。子どもは案外、大人の嘘を暴く。
「……子どもでなくても、ティアは好きだ……」
「う、うん……ドキッとするじゃん……」
本当だと分かるから、余計に照れてしまうティアだ。
「……そういえば、イルとカイはどうした……」
ファルは、娘と同じ名前のイルーシュと、その双子のカイラントと遊ぶのが楽しかったらしい。
「サルバの屋敷にいるよ。トゥーレも連れて、会いに行ってやってよ」
「……そうしよう……」
どこまでも子どもに甘いファルだ。
「そういえば、お祖父様は? ゲイルさんも家にいなかったんだけど」
その気になればティアは気配を探れるのだが、そうそう敵でもない人の気配を探るような無粋なまねはしない。
「……ゼノとゲイルなら、妖精王のダンジョンだ……」
「……お祖父様……本当に悔しかったんだ……」
ゼノスバートは、ベリアローズがAランクの冒険者になった事で、孫に先を越されたと悔しがっているようなのだ。
「よりにもよって、琥珀じゃなくて赤白なんて……焦ってるなぁ……」
「……死ぬ事はないから大丈夫だ……」
「そうだね……」
妖精が管理しているダンジョンの中は、安全だ。唯一考えられる死因は、リアル過ぎる魔獣や罠によるショック死くらい。根性のない者は直ぐに逃げ出すので、まずないだろう。
ただし、リタイアすれば、手持ちの荷物の中から何かが消える。そこで半狂乱になるのは無関係だ。
「お祖父様は間に合わないかなぁ」
「……対抗戦か……」
「そう。メンバー考え中なの。まだ人数決まってないけどね」
近く開催される騎士と冒険者の対抗戦。それをティアは見据えているのだ。
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舞台裏のお話。
トゥーレ「……赤い髪なんて、はじめて見た……」
町人「見事な赤い髪っすねぇ。赤髪の冒険者の話を思い出しますよ」
トゥーレ「赤髪……?」
町人「知らないんで? 書館にあるんで、読んでみるといいですよ」
トゥーレ「そうなのか……ありがとう」
町人「オススメは、竜人族の戦士と出会う話っすね。この前聞いたら、ファル兄貴の事でしたよ」
トゥーレ「ファル師匠の?」
町人「ええ。物語に語られる方を実際に見られるのは、とても感慨深いものです」
トゥーレ「……女神もな……」
町人「はい?」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
生きていますからね。
ファル兄は普段、他の人とはそれほどお話しませんが、ティアちゃんとは一生懸命喋ります。
ゼノじぃちゃんは訓練中だそうです。
では次回、一日空けて18日です。
よろしくお願いします◎
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