知らないだけで。

どんころ

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13 完結

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「気が付いた?」
「…ぁ…」
声が出ない僕に稜くんがベッドサイドに用意してあったお水を渡してくれる。
「ごめんね、無理させた。」
「だいじょうぶ。ぼくもほしかったから、」
稜くんがぎゅっと抱き寄せてくれる。
そっと僕のお腹に手を当てる稜くんに嬉しくなって、その上に自分の手を重ねた。
「できたかな。」
αとΩの発情期の受精率は99%と言われている。
「美鶴に似て可愛い子だといいな。」
「稜くんに似てても可愛いよ。」
「どうだろう?」






発情期から2週間後の診察で妊娠してると言われて、稜くんと新婚生活をしていた家に慌てて戻った。
Ωの妊娠出産はパートナーのαがいる方が安定するからだ。
父と兄は話が違うと稜くんに文句を言いに行きそうなくらい怒っていたので、僕が子供産みたかったから頼んだと説明した。
まだ何か言いたそうな2人に上目遣いで、僕に似た赤ちゃん生まれるかなぁ?と聞くとそれ以上追求されなかった。
どうやら2人は僕の上目遣いに弱いらしい。
だんだんと扱い方がわかってきた。

稜くんは相変わらず好きとか直接的な言葉をくれる事はほとんどないけれど、それでもその視線で、体温で僕を大切にしてくれていることは伝わってくる。
ただ自分で決めたのか、節目の日には必ず愛してると口に出して伝えてくれる。
その少し恥ずかしそうにしながらも、一生懸命言葉で伝えようとしてくれる稜くんがとても愛おしい。

出産は里帰りすることが決まっていて、稜くんも一緒に実家に転がり込むらしい。
会社まで遠くなるよと言っても、2人の顔が見たいと言って聞かなかった。
お手伝いさん雇うから里帰りしないのはダメかな、なんて言い出すのを見かねた母が僕の部屋は十分広いから稜くんも泊まったら?と言ってくれて話しがまとまった。
妊娠も出産も初めてのことだらけだけど、稜くんが隣にいればなにも怖くない。
これからも大変なこともあるかもしれないけれど、稜くんとなら乗り越えていける。
もうこの手を離したりしない。
どんなことがあっても、諦めたりなんかしてあげないと決めたから。
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