4 / 101
4 ありえないから
しおりを挟む
その日の夜は、散々だった。
宿題を淡々とこなして、『あー勘違いだったかもしんないなぁ』とか『過剰に反応しちゃったなぁ』とか、そんなことを思った。
思ったけど、どうしてもふとした時に、思い出しては「あ~~~」なんて言ってしまう。
そう、俺に足りないのは落ち着く為のコーヒーかも。
なんて思って、マグカップを持って廊下を歩きながらも。
思い出す。
赤くなった頬を隠そうとするあの表情。あの、瞬間。
「……うわぁっ」
つい、廊下で声を出してしまうと、妹の部屋から、
「うひゃあ!」
と声がした。
しまった。
驚かせた。
どうやら、通話をしながら宿題でもしていた妹が、部屋から飛び出してきた。
「お兄!え、何かあった!?」
どうにも心配させてしまったらしかった。
「なんでもない」
冷静を装おうとした声は、我ながらおかしな声だった。
けど、本当に、何かあったわけじゃない。
ないないないないない。
その夜は、コーヒーを飲んで、なかなか寝付けないのを、コーヒーのせいにした。
ミルクを入れなかったせいで、苦い心地がした。
目を開けると、真っ暗にした部屋の中で、カーテンの隙間から漏れる薄い明かりが天井を照らしていた。
一晩寝たらきっといつも通りだ。
翌日は、予想通り、少しだけスッキリしていた。
だって、あり得ないことなんだから。
ただ、ほら、少女漫画みたいなよくあるシチュエーションで、ケント達が言った変な言葉で、何かおかしな勘違いをしてしまっただけなんだから。
実際、何事もなく、1日は穏やかに進んだ。
幸いなことに、礼央の姿は亮太の席からは見えなかった。
休み時間、立ち上がった時だけ、あの黒いクリクリの頭が見えた。
見える度に、『……居る』って思ってしまうのは、つまり、今までそこに居たかどうか意識したことが無かったからだ。
そう。
“れおくん”が本当にいつもそこに居たことを、今、知ったからで。
深い意味はない。
そんなわけで何度か、黒いクリクリの頭が見えたけれど、それでも目が合うことはなかった。
ほらな。やっぱり。
あの時振り返った時目が合ったのなんて、偶然だったんだって。
ぐーぜん。たまたま。
そりゃそうだよ。
俺の方が前の方の席に居るんだし。
あいつの英語のノート、俺が持ってたんだし。
ノート、見えてたんだって。
俺が変に意識してるんじゃないかって。
それがすごい変なことなんじゃないかって。
そう思って、頭の中で言い訳ばかりを繰り返した。
あの時のあいつの顔だって、きっと何かの見間違いだ。
「うっし、体育体育!」
ケントが気合を入れるのにピョンピョンした。
”賢人“なんていう、その名前に似合わず、頭をすっからかんにすることが好きなやつなのだ。
その隣で柔軟がてらのピョンピョンをしているのはサクだ。
こいつは普通に体育会系。
体育館に、室内用スニーカーのキュッキュッとした音がそこここに響く。
「二人とも元気だな」
一人、気合が入らないのが亮太だ。
上下青色のジャージの、なんと重いこと。
「お前は相変わらずやる気ねーなぁ」
ケントの呆れ顔。
「お前らがやる気出し過ぎなの」
なんでそんなやる気ないやつの友人がこんな体育大好きっ子ばっかなんだろうな……。
そこで、ケントが明るい声を出した。
「お、れおくんじゃん」
ん、あ。
礼央と、目が合った。
◇◇◇◇◇
亮太くん、礼央くん、賢人くん、作くんの4人組です。
宿題を淡々とこなして、『あー勘違いだったかもしんないなぁ』とか『過剰に反応しちゃったなぁ』とか、そんなことを思った。
思ったけど、どうしてもふとした時に、思い出しては「あ~~~」なんて言ってしまう。
そう、俺に足りないのは落ち着く為のコーヒーかも。
なんて思って、マグカップを持って廊下を歩きながらも。
思い出す。
赤くなった頬を隠そうとするあの表情。あの、瞬間。
「……うわぁっ」
つい、廊下で声を出してしまうと、妹の部屋から、
「うひゃあ!」
と声がした。
しまった。
驚かせた。
どうやら、通話をしながら宿題でもしていた妹が、部屋から飛び出してきた。
「お兄!え、何かあった!?」
どうにも心配させてしまったらしかった。
「なんでもない」
冷静を装おうとした声は、我ながらおかしな声だった。
けど、本当に、何かあったわけじゃない。
ないないないないない。
その夜は、コーヒーを飲んで、なかなか寝付けないのを、コーヒーのせいにした。
ミルクを入れなかったせいで、苦い心地がした。
目を開けると、真っ暗にした部屋の中で、カーテンの隙間から漏れる薄い明かりが天井を照らしていた。
一晩寝たらきっといつも通りだ。
翌日は、予想通り、少しだけスッキリしていた。
だって、あり得ないことなんだから。
ただ、ほら、少女漫画みたいなよくあるシチュエーションで、ケント達が言った変な言葉で、何かおかしな勘違いをしてしまっただけなんだから。
実際、何事もなく、1日は穏やかに進んだ。
幸いなことに、礼央の姿は亮太の席からは見えなかった。
休み時間、立ち上がった時だけ、あの黒いクリクリの頭が見えた。
見える度に、『……居る』って思ってしまうのは、つまり、今までそこに居たかどうか意識したことが無かったからだ。
そう。
“れおくん”が本当にいつもそこに居たことを、今、知ったからで。
深い意味はない。
そんなわけで何度か、黒いクリクリの頭が見えたけれど、それでも目が合うことはなかった。
ほらな。やっぱり。
あの時振り返った時目が合ったのなんて、偶然だったんだって。
ぐーぜん。たまたま。
そりゃそうだよ。
俺の方が前の方の席に居るんだし。
あいつの英語のノート、俺が持ってたんだし。
ノート、見えてたんだって。
俺が変に意識してるんじゃないかって。
それがすごい変なことなんじゃないかって。
そう思って、頭の中で言い訳ばかりを繰り返した。
あの時のあいつの顔だって、きっと何かの見間違いだ。
「うっし、体育体育!」
ケントが気合を入れるのにピョンピョンした。
”賢人“なんていう、その名前に似合わず、頭をすっからかんにすることが好きなやつなのだ。
その隣で柔軟がてらのピョンピョンをしているのはサクだ。
こいつは普通に体育会系。
体育館に、室内用スニーカーのキュッキュッとした音がそこここに響く。
「二人とも元気だな」
一人、気合が入らないのが亮太だ。
上下青色のジャージの、なんと重いこと。
「お前は相変わらずやる気ねーなぁ」
ケントの呆れ顔。
「お前らがやる気出し過ぎなの」
なんでそんなやる気ないやつの友人がこんな体育大好きっ子ばっかなんだろうな……。
そこで、ケントが明るい声を出した。
「お、れおくんじゃん」
ん、あ。
礼央と、目が合った。
◇◇◇◇◇
亮太くん、礼央くん、賢人くん、作くんの4人組です。
0
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
幼なじみの友達に突然キスされました
光野凜
BL
『素直になれない、幼なじみの恋』
平凡な俺、浅野蒼にはイケメンでクラスの人気者な幼なじみ、佐伯瑛斗がいる。
家族ぐるみの付き合いのせいか、瑛斗は昔から距離感がおかしくて、何かと蒼にベッタリ。けれど、蒼はそれを“ただの友情”だと思っていた。
ある日、初めての告白に浮かれていると、瑛斗から突然キスされて......!?
「蒼のことが好きだ」
「お前が他の奴と付き合うのは耐えられない」
友達だと思っていた関係が一気に変わり、戸惑いながらも瑛人の一途で甘い想いに少しずつ心が揺れていく。
しかし、素直になれない蒼は最後の一歩が踏み出せずにいた。
そんなとき、ふたりの関係に”あるトラブル”が訪れて......。
じれったくて、思わず応援したくなるふたりのピュアな青春ラブストーリー。
「......蒼も、俺のこと好きになってよ」
「好きだ。好きだよ、蒼」
「俺は、蒼さえいればいい」
どんどん甘く、独占欲を隠さなくなる瑛斗に、戸惑いながらも心が揺れていく。
【一途で独占欲強めな攻め × 不器用で素直になれない受け】
君と過ごした最後の一年、どの季節でも君の傍にいた
七瀬京
BL
廃校が決まった田舎の高校。
「うん。思いついたんだ。写真を撮って、アルバムを作ろう。消えちゃう校舎の思い出のアルバム作り!!」
悠真の提案で、廃校になる校舎のアルバムを作ることになった。
悠真の指名で、写真担当になった僕、成瀬陽翔。
カメラを構える僕の横で、彼は笑いながらペンを走らせる。
ページが増えるたび、距離も少しずつ近くなる。
僕の恋心を隠したまま――。
君とめくる、最後のページ。
それは、僕たちだけの一年間の物語。
唇を隠して,それでも君に恋したい。
初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。
大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。
運命なんて知らない[完結]
ななな
BL
Ω×Ω
ずっと2人だった。
起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる