婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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謎の男の奇妙な執着5

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 女性はマリオンと名乗った。
 この店『マリオン』名前だ。彼女はトップデザイナー、つまり支配人でありここは彼女の店だという。
 うろたえるステラなどものともせず手際よく採寸を進めていく。

「非常識よねえ、婚約者でもない女性の服をあつらえるなんて。私、お嬢さんのこと考えなさいって注意したのだけれど」

 ふふ、と心底おかしそうにマリオンは笑う。

「このことは絶対に外に漏らさないで、話を合わせてくれですって。その代わり見返りを頂いたの。いい商売だわ」

 さっき揉めていたのはそういうことだったのか、と納得がいく。
 しかし内容にはまったく納得できない。
 自分のあずかり知らぬところで妙な話が進んでいる。

「じゃあ好きな色って、まさか」

「あなたのドレスの色に決まっているわ。あとで生地持ってくるから。さて、採寸は終わりね」

 採寸が終わればカーテンを開けられる。
 そこには既に色んな薄紅色の生地が並べられており、ハウンドが面白そうに説明を受けていた。

「お疲れ様です、ステラ様。この生地なんかどうです? 最近発明された織方らしいですよ」

「は、ハウンドさん! 困るわ、こういうの……」

 この男に微笑まれ囁かれると押し切られそうだ。そう直感したステラは目をつぶって声を張った。

「困る? どうしてです? ステラ様は、私を利用して全てを手に入れるべきですよ」

 (私の心の中の決意を見透かしてるような言い方しないで!)

「でも、そんなことをしてもらう理由がないもの」

「私にはあるんです。あなたに受け取ってもらいたい。ただの私のわがままです」

 真剣な視線を向けられて、ステラは困惑したように眉根を寄せた。
 ハウンドの言い分が分からない。

 (私を騙したいから?)

 だからここまで真実味を持たせた演技をするのだろうか。
 きっと他の人にもこういうことしているのよ、と自分に言い聞かせてステラは視線を逸らす。 

「口止め料も貰っているから味方しておくけど、ドレスもらっておいた方がいいんじゃないかしら? 今のドレスじゃ困ることも多いでしょう」

 マリオンの言い分はもっともだった。仕立屋の立場から見えるものが多いのだろう。
 困っているからこそハウンドを利用しようとしたのだ。

 結局、もしドレスのことでステラの立場を悪くするならマリオンがとりなしてくれることになった。
 ハウンドは「リスクを減らす堅実な様子が素敵です」と特に気にする様子もない。
 むしろにっこりと優雅に微笑んでステラの耳元に口を寄せた。

「困った時は助ける、と言ってくださいましたよね。今、ドレスを受け取ってもらえなくて困っているんです。哀れな私を助けてくれますか?」

 約束ですよね、とささやかれ昨日の発言をさっそく後悔した。
 ハウンドはどんな手段でも自分の意思を通すだろう。
 観念したステラは大人しくドレスを受け取ることにした。

(この人のほうがおねだりが上手だわ)

「……分かりました。約束は果たします。で、でも薔薇色は勘違いしていただけで……他の色にしてもらえますか?」

 二人共もちろん、と頷いてくれた。
 ハウンドは「好きな色を選んでいいんです」と言ってくれたし、マリオンは流行りの色を教えてくれた。

 ステラは安堵と共に惨めさで身体が縮んだような気になった。
 美しくも可愛らしい色は、自分には似合わないとステラは思っている。
 では何色が、と言われると困ってしまう。

「特にないのなら白はどうかしら。リボンの色で印象を変えられるし、染め直せばまた別のドレスになるわ」

 なるほど、とステラは納得しそれで作ってもらうことにした。
 白はブリジットも初の舞踏会に着ていったはずだ。
 初々しさが演出できるのなら、きっと婚約者探しにも有利だろう。

 色の次はドレスの形だった。
 デイ・ドレスだけでもとにかく沢山あるので、ステラは目を回してしまう。
 疲れ始めたステラを見かねて、ハウンドがマリオンに何かを相談し始めた。
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