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あんたのものは私のものよ3
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翌日地下室から解放され、改めてバーンズ侯爵家の舞踏会に招かれたことを話す。
「なんだと!? よくやったステラ!」
歴史ある家門になればなるほど、人付き合いには慎重になる。
バーンズ侯爵家ともなれば、長年親交のないグレアム家がいまさら接点を持つのも難しい。
社交界の華であるブリジットですら新興貴族や古なじみとつるんでいる。
伯爵に戻ることを悲願としている両親は、先日の騒ぎもすっかり忘れたように顔を真っ赤にして喜んでいた。
「まさかステラがあのお茶会で人脈を作れるとはな!」
「あら私は信じてましたよ。さあステラ。ドレスを選ばなくては」
「えっ、いいのですか?」
母親に頷かれ、ステラは思わず興奮で胸が高鳴った。
生命維持に必要な物以外を、自分のために買ってもらえるなんて何年ぶりだろう。
もうすっかり成長したというのに、幼子のような気持ちになった。
今から一緒に仕立屋に出かけるのだろうかとそわそわする。
しかしその期待はすぐに脆くも崩れ去る。
背を押され連れていかれたのは、ブリジットのドレッシングルームだった。
ステラのように部屋に備え付けられたクローゼットではなく、一部屋まるごと使っているそこにはドレスやアクセサリー、大きな姿見まである。
「お母さま……?」
「さあ、バーンズ家のご令嬢はどういうものが好みかしら。きちんと引き立て役になれるようにしなければね。ブリジットにはお父様から話を通してあげるから」
母親は微笑みながらあれやこれやとドレスを選んでいる。
無意識のうちに、ブリジットのお気に入りは避けているようだ。
シンプルで装飾が少なめなものはブリジットの好みではないので、数着選び出してこの中から選びなさいと言われた。
(そうだった。私、浮かれてたのね)
ハウンドと出会ってから珍しいことが続いたからかもしれない。
今回もいつもと違うことが起きかもると思って、思い違いをしていた。
綺麗に磨かれた姿見に映るのは、みすぼらしく貧相な少女だ。
ブリジットがドレスを自分のものだと主張するのも、今では自然なことのように思える。
「侯爵家と仲良くできれば良い縁談が来るかもしれないから、とにかく控えめにしておきなさい。あなたは顔も性格もきついから、口を開いたらだめよ」
「……はい」
母親の言うことは正しいように思えた。
期待していた分打ちのめされたステラには、反発する元気も残っていない。
ドレスはこれがいいわね、と渡される。
色は派手で装飾が少ない。
ステラの好みではないデザインだった。
しかしあの光にまみれた会場では、派手な色の方が周囲に紛れることだろう、と無理やり飲み下す。
試着してみるものの、あまりにも似合っていない。
ステラはドレスに完全に負けているし、ドレス自体の良さも消えていた。
お互いを殺し合っているような悲惨な結果だった。
夜会用ドレスだから肩や鎖骨が出ているのは当たり前なのだが、サイズを調整したところで印象は変わらないのがありありと見て取れる。
「本当、ブリジットと違って飾りがいがないわね。ちょっと可哀そうかと思ってたけれど、買ってももったいないから買わなくて正解だったわね。デリック君を取られちゃったのもあなたのせいよ?」
ふうやれやれ、と一仕事終えたといったように母親はため息をついた。
使用人にサイズ直しを命じて、おやつでも食べにいったのだろう。
こんなに雑な準備でセシリアの舞踏会に向かっていいのだろうか。
申し訳なさと恥ずかしさで顔を上げられない。
不義理を晒すような真似をするなら、体調不良だと言って参加しないほうがいいのではないだろうか。
(ああでも、ハウンドが我が家に目をつけているから婚約者を見つけて諦めてもらわないと……)
使用人が悩むように胸元を仮止めしていくのをぼんやりと見つめる。
鏡に映る自分を見ていると、エスコートを申し出てくれたハウンドもこの姿を見ることになるのだと思い出した。
(彼に見られたく、ない)
彼には恥ずかしいところばかり見られている。
セシリアに誘われた時には希望に思えた舞踏会だが、どんどん気持ちが落ち込んでいく。
ハウンドは魔法のように必要な物を提供してくれたが、魔法はもう解ける時間なのだろう。
フェアリーゴッドマザーの魔法で馬車やドレスやガラスの靴を手に入れても、本人に魅力がなければ王子様には見初められない。
いいや、とステラは考えを打ち消すように頭を振る。
(魔法がないならないで、今までどおりよ。できることをやるだけだわ)
「なんだと!? よくやったステラ!」
歴史ある家門になればなるほど、人付き合いには慎重になる。
バーンズ侯爵家ともなれば、長年親交のないグレアム家がいまさら接点を持つのも難しい。
社交界の華であるブリジットですら新興貴族や古なじみとつるんでいる。
伯爵に戻ることを悲願としている両親は、先日の騒ぎもすっかり忘れたように顔を真っ赤にして喜んでいた。
「まさかステラがあのお茶会で人脈を作れるとはな!」
「あら私は信じてましたよ。さあステラ。ドレスを選ばなくては」
「えっ、いいのですか?」
母親に頷かれ、ステラは思わず興奮で胸が高鳴った。
生命維持に必要な物以外を、自分のために買ってもらえるなんて何年ぶりだろう。
もうすっかり成長したというのに、幼子のような気持ちになった。
今から一緒に仕立屋に出かけるのだろうかとそわそわする。
しかしその期待はすぐに脆くも崩れ去る。
背を押され連れていかれたのは、ブリジットのドレッシングルームだった。
ステラのように部屋に備え付けられたクローゼットではなく、一部屋まるごと使っているそこにはドレスやアクセサリー、大きな姿見まである。
「お母さま……?」
「さあ、バーンズ家のご令嬢はどういうものが好みかしら。きちんと引き立て役になれるようにしなければね。ブリジットにはお父様から話を通してあげるから」
母親は微笑みながらあれやこれやとドレスを選んでいる。
無意識のうちに、ブリジットのお気に入りは避けているようだ。
シンプルで装飾が少なめなものはブリジットの好みではないので、数着選び出してこの中から選びなさいと言われた。
(そうだった。私、浮かれてたのね)
ハウンドと出会ってから珍しいことが続いたからかもしれない。
今回もいつもと違うことが起きかもると思って、思い違いをしていた。
綺麗に磨かれた姿見に映るのは、みすぼらしく貧相な少女だ。
ブリジットがドレスを自分のものだと主張するのも、今では自然なことのように思える。
「侯爵家と仲良くできれば良い縁談が来るかもしれないから、とにかく控えめにしておきなさい。あなたは顔も性格もきついから、口を開いたらだめよ」
「……はい」
母親の言うことは正しいように思えた。
期待していた分打ちのめされたステラには、反発する元気も残っていない。
ドレスはこれがいいわね、と渡される。
色は派手で装飾が少ない。
ステラの好みではないデザインだった。
しかしあの光にまみれた会場では、派手な色の方が周囲に紛れることだろう、と無理やり飲み下す。
試着してみるものの、あまりにも似合っていない。
ステラはドレスに完全に負けているし、ドレス自体の良さも消えていた。
お互いを殺し合っているような悲惨な結果だった。
夜会用ドレスだから肩や鎖骨が出ているのは当たり前なのだが、サイズを調整したところで印象は変わらないのがありありと見て取れる。
「本当、ブリジットと違って飾りがいがないわね。ちょっと可哀そうかと思ってたけれど、買ってももったいないから買わなくて正解だったわね。デリック君を取られちゃったのもあなたのせいよ?」
ふうやれやれ、と一仕事終えたといったように母親はため息をついた。
使用人にサイズ直しを命じて、おやつでも食べにいったのだろう。
こんなに雑な準備でセシリアの舞踏会に向かっていいのだろうか。
申し訳なさと恥ずかしさで顔を上げられない。
不義理を晒すような真似をするなら、体調不良だと言って参加しないほうがいいのではないだろうか。
(ああでも、ハウンドが我が家に目をつけているから婚約者を見つけて諦めてもらわないと……)
使用人が悩むように胸元を仮止めしていくのをぼんやりと見つめる。
鏡に映る自分を見ていると、エスコートを申し出てくれたハウンドもこの姿を見ることになるのだと思い出した。
(彼に見られたく、ない)
彼には恥ずかしいところばかり見られている。
セシリアに誘われた時には希望に思えた舞踏会だが、どんどん気持ちが落ち込んでいく。
ハウンドは魔法のように必要な物を提供してくれたが、魔法はもう解ける時間なのだろう。
フェアリーゴッドマザーの魔法で馬車やドレスやガラスの靴を手に入れても、本人に魅力がなければ王子様には見初められない。
いいや、とステラは考えを打ち消すように頭を振る。
(魔法がないならないで、今までどおりよ。できることをやるだけだわ)
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※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)
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