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社交界の噂2
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派手できれいなものが好きなブリジットはハウンドの顔が大変好みだった。
デリックの顔も上の中だとブリジットは考えているが、別格のハウンドの前だと誰であれ路傍の石に見える。
(あれほどの顔と社交術を持っていてどうしてステラに構うのかしら……)
先日のレイクランドでのことを思い出す。
男女問わず、ハウンドに群がり気を引こうとしていた。
彼は手慣れた様子で集団を相手取り、紳士的かつウィットに富んだ言い回しで場を楽しませていた。
ハウンドに微笑まれて名前を呼ばれるとそれだけで主人公になったかのような心地がして誰もかれもが舞い上がる。
しかし彼が愛情を示した場合、そんなものではないことを知っている。
ステラに向けているような、異常ともいえる執着をブリジットは手に入れるため無策というわけにはいかなかった。
湖を見るのにエスコートしてほしいという名目でブリジットはハウンドの腕にすがったのだ。
(あの時の視線……今思い出しても背筋が凍るわ)
一瞬のことだったし角度的にブリジットにしか分からなかっただろう。
逆光のなか、腕についた虫を見るようなあの目。
すぐに人好きのする微笑を湛えて、あくまで穏やかにエスコートを断られたためまるで幻覚のように思えるがあれはまぎれもなく現実だった。
(……私たちに見えないように、ステラにもあんな恐ろしい態度を取っているのかしら。だからステラはハウンドになびかないのだとしたら納得はできるわね。男慣れしていないステラがハウンドからのアプローチを受け流せるわけないもの)
実際のところ、ステラは慣れていなさすぎて詐欺を疑って拒絶していたのだがブリジットにはそこまでは分からなかった。
ハウンドがあの一瞬だけ表出した嫌悪感を、周囲の誰も気づいてはいなかった。
となれば、周囲が気づいていないだけでステラはハウンドに脅されていても不思議ではないのではないだろうか。
(可能性としてはありえる範囲のはずよ)
ブリジットはそれに賭けるしかなかった。
もし本当に『ハウンドがステラを愛していた』なら、理由も分からないブリジットにはなすすべがない。
ハウンドがパーティーに出席するときにステラがいないことはあれど、ステラが出席するときは必ずハウンドがいる。
今日もそうだ。
ステラは一生懸命いろんな人に話しかけているが、ハウンドが後ろでにらみを利かせているからか成果は芳しくないらしい。
もっとも、ブリジットに言わせればステラの社交術ではハウンドがいようがいまいが結果は変わらないように思えた。
しかし、ブリジットからするとステラの涙ぐましいともいえる努力をハウンドが邪魔していることは確実だろう。
「で、でもブリジット様。ハウンド様が本気のわけはありませんわ。どう見ても不釣り合いですもの」
「そうですわ! ステラ嬢もそれを分かっているから中途半端に遊んだりされないのでしょう? だって、お相手探しに必死で少しでも傷があればチャンスをつかめないのですもの」
「婚約者が決まっていないと多少の良い思いもできないなんて大変ですわね」
ほほほ……と友人たちが笑うが、ブリジットはむしろ眉間のしわを深くする。
彼女たちがあげつらったステラの短所は、淑女らしく隙がないステラを褒めているにすぎないからだ。
そんなブリジットを見て、友人達は再度目配せをする。
それぞれ気まずそうに小さく頷くと、「そ、それではこの辺で失礼いたしますわ」と足早に去っていった。
ふんと鼻を鳴らしてまたシャンパンを喉に流す。
ブリジットにとって彼女たちは自分を引き立たせるアクセサリーにすぎない。
それなのに不愉快な言葉をしゃべり続けるのなら、いないほうがましだというものだ。
「……そうよ。いなくなればいいんだわ」
ブリジットはにやりと笑って会場をあとにした。
デリックの顔も上の中だとブリジットは考えているが、別格のハウンドの前だと誰であれ路傍の石に見える。
(あれほどの顔と社交術を持っていてどうしてステラに構うのかしら……)
先日のレイクランドでのことを思い出す。
男女問わず、ハウンドに群がり気を引こうとしていた。
彼は手慣れた様子で集団を相手取り、紳士的かつウィットに富んだ言い回しで場を楽しませていた。
ハウンドに微笑まれて名前を呼ばれるとそれだけで主人公になったかのような心地がして誰もかれもが舞い上がる。
しかし彼が愛情を示した場合、そんなものではないことを知っている。
ステラに向けているような、異常ともいえる執着をブリジットは手に入れるため無策というわけにはいかなかった。
湖を見るのにエスコートしてほしいという名目でブリジットはハウンドの腕にすがったのだ。
(あの時の視線……今思い出しても背筋が凍るわ)
一瞬のことだったし角度的にブリジットにしか分からなかっただろう。
逆光のなか、腕についた虫を見るようなあの目。
すぐに人好きのする微笑を湛えて、あくまで穏やかにエスコートを断られたためまるで幻覚のように思えるがあれはまぎれもなく現実だった。
(……私たちに見えないように、ステラにもあんな恐ろしい態度を取っているのかしら。だからステラはハウンドになびかないのだとしたら納得はできるわね。男慣れしていないステラがハウンドからのアプローチを受け流せるわけないもの)
実際のところ、ステラは慣れていなさすぎて詐欺を疑って拒絶していたのだがブリジットにはそこまでは分からなかった。
ハウンドがあの一瞬だけ表出した嫌悪感を、周囲の誰も気づいてはいなかった。
となれば、周囲が気づいていないだけでステラはハウンドに脅されていても不思議ではないのではないだろうか。
(可能性としてはありえる範囲のはずよ)
ブリジットはそれに賭けるしかなかった。
もし本当に『ハウンドがステラを愛していた』なら、理由も分からないブリジットにはなすすべがない。
ハウンドがパーティーに出席するときにステラがいないことはあれど、ステラが出席するときは必ずハウンドがいる。
今日もそうだ。
ステラは一生懸命いろんな人に話しかけているが、ハウンドが後ろでにらみを利かせているからか成果は芳しくないらしい。
もっとも、ブリジットに言わせればステラの社交術ではハウンドがいようがいまいが結果は変わらないように思えた。
しかし、ブリジットからするとステラの涙ぐましいともいえる努力をハウンドが邪魔していることは確実だろう。
「で、でもブリジット様。ハウンド様が本気のわけはありませんわ。どう見ても不釣り合いですもの」
「そうですわ! ステラ嬢もそれを分かっているから中途半端に遊んだりされないのでしょう? だって、お相手探しに必死で少しでも傷があればチャンスをつかめないのですもの」
「婚約者が決まっていないと多少の良い思いもできないなんて大変ですわね」
ほほほ……と友人たちが笑うが、ブリジットはむしろ眉間のしわを深くする。
彼女たちがあげつらったステラの短所は、淑女らしく隙がないステラを褒めているにすぎないからだ。
そんなブリジットを見て、友人達は再度目配せをする。
それぞれ気まずそうに小さく頷くと、「そ、それではこの辺で失礼いたしますわ」と足早に去っていった。
ふんと鼻を鳴らしてまたシャンパンを喉に流す。
ブリジットにとって彼女たちは自分を引き立たせるアクセサリーにすぎない。
それなのに不愉快な言葉をしゃべり続けるのなら、いないほうがましだというものだ。
「……そうよ。いなくなればいいんだわ」
ブリジットはにやりと笑って会場をあとにした。
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