婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井

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真実と薔薇の庭5

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 まだ滑舌も甘い高い声でステラは一生懸命に大人たちを見つめる。

「ステラ、何をしているの! 邪魔をしないの!」

 グレアム夫人、ステラの母親が慌ててステラを引き戻そうとするが、わざわざ証言をすると出てきたのだから誰も幼い正義感を無下には出来なかった。
 フィンリー家当主はグレアム夫人を落ち着かせ、ステラに話をするように求めた。

「かばんをおいていたお部屋はろうかのつきあたりにありますわ。わたしはお母さまといっしょにとなりの部屋にいましたの。そうですわよね」

 ステラは母親だけでなく、近くにいた夫人たちにも同意を求めた。

「間違いありませんわ。私たちのおしゃべりを待っている間、彼女はソファに座っていました」

 グレアム夫人を含めた三人ほどの女性が同意する。

「とびらはずっと開いていました。ソファはろうかの方を向いていたのでわたしはずうっとろうかを見ていましたわ。デリック様がおっしゃった時間、あの方はろうかをとおっていません」

 ステラはまっすぐにハウンドの方を見る。
 ハウンドはその青色の光に射抜かれて、心臓がざわついた。
 今までいろんなものがどうだってよかったハウンドの怠惰な心臓が、星の光を浴びて動き始める。

「て、てきとうなこと言うな!」

 ステラが何を見たのか遅れて理解したデリックがステラの口をふさごうと掴みかかる。
 大人が動く前に、近くにいたハウンドが止めた。不気味さすらあるハウンドに割り込まれてデリックは思わずたじろいだ。

「彼女の証言はまだ終わってないだろう」

 ステラは見たものを説明するのに一生懸命で、彼らの攻防には気づかなかったらしい。

「その代わり、別の人はみました」

 ステラのその一言に、デリックはばくりと心臓が止まったように思った。
 全身からサーッと熱がひいていく。
 デリックの父親が戸惑ったようにステラに尋ねる。

「『別の人』というのは、誰だね」

「デリックです。かれがじぶんでこの方のかばんにメダルを入れたんじゃないかしら」

「ち、ちがう! そいつは嘘つきだ!」

「なによ、うそなんかついていないわ。わたしの家にかけてちかえるもの」

 デリックは焦って証言など取るに足らないものだと主張するが、ステラも怯まない。
 青い顔をして焦っているデリックと、落ち着いているステラとハウンドを見ればどちらが正しいのかは一目瞭然だった。

 そもそもステラに嘘をつく理由はないのだ。
 アロガンスハート家当主は呆気にとられ周囲を見渡している。

「いやあ、ははは……うちの娘が申し訳ない」

 騒動に気付いたグレアム家当主、ステラの父親が慌ててステラを引きずり戻そうとする。トラブルに巻き込まれたくないの一心だったがもはや手遅れだ。
 フィンリー家当主は深いため息をついて口を開いた。

「……お待ちください。彼女の証言は重要です。デリック。彼女の言葉は本当か?」

 聞いているというよりは確認でしかない父親の言葉に、デリックは顔を真っ赤にして肩を震わせた。
 そうしてしゃくりあげながらぼろぼろと泣き出した。

「……そういうことだな」

 フィンリー家当主はデリックの頭を押さえ、自らも軽く頭を下げる。

「彼の言い分も聞かず申し訳ございませんでした。まさか不出来な息子がこんなことをするとは……」

「え、えっと……いえいえ、お気になさらずフィンリーさん……。ほら、ハウンドももういいな?」

「ええ。楽しいご歓談を中断してしまい申し訳ございませんでした。僕は気にしていませんので」

 疑いの晴れたハウンドは、喜ぶでもなくやはりどうでもよさそうだった。

 彼の興味はもはやデリックや大人たちではなく、毅然と声をあげたステラの方に向いている。
 周囲の大人たちもしょせんは子供の喧嘩だとまたそれぞれの会話に散っていった。

「あ……っ、待って!」
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