「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

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小さな小屋の中はやはり清潔とは言えなかった。
カビて、煤まみれで長年の汚れが蓄積していた。

さらに先ほどまで使っていた大男達の性格を反映してか乱雑に物が転がって、壊れて、惨憺たる状態である。

しかしリリアはそんな事が気にならなかった。
いや、気にしたかったのだがそれが出来ない。

リリアと精霊王は向かい合っているが、彼があまりにも美しすぎてそこがゴミ溜めの中であろうが意味のある絵画のようになってしまうのだ。

気を抜くと目の前の美貌に見惚れてしまうのでリリアは手の甲をつねったりして冷静を保たねばならなかった。
それでも自然と目が惹き付けられてしまうのだ。

そんなリリアを見て精霊王はくつくつと笑う。

「そんなに珍しいか、私の顔は」

「そういうつもりじゃ!……ないんですけど……」

彼が「暗いだろう」と言って手をかざすと、蝋もないのに灯りがあらゆる所に出現した。
急に明るくなったことでリリアは自分がどうしようもなく汚れていることに気が付いた。
ただでさえ忌むべき存在なのに、さらに今は泥だらけだ。

恥ずかしい。

なんだか情けなくなってリリアは泣きそうになる。

そういえばなぜ向かい合って座っているのだろう。そこでリリアはハッとした。

このお方は精霊様なのだから、私は床に伏して頭を垂れるべきなのでは!?
それにまだお礼も言ってない!

「すみません!!」

リリアは椅子から降り、ガバッと精霊王の足元へ額づいた。

「申し訳ございません精霊様!私のような忌むべき無加護の者が精霊様の御前を穢すなど失礼を致しました!」

「乙女?」

「先ほどは助けて頂き本当にありがとうございます。お礼……出来るかは分かりませんが、その、もしお望みであれば私の命を、捧げます」

「乙女よ」

軽やかな衣擦れの音と共にひんやりとした指がリリアのおとがいをすくう。
床に頭をこすりつけていたリリアはされるがまま精霊王を見上げた。


「麗しき私の乙女。なぜそんな事を言う」
「お、おやめください、精霊様。……穢れてしまいます」

リリアは震えながらそう絞りだす。
悪魔。罪人。穢れた存在。
それがリリアに与えられてきた言葉だった。
蔑みと拒絶の視線がリリアに向けられるものだった。

けれど今、目の前の美しい存在はリリアに慈愛の視線を投げかける。

「助けた命は大切にしてほしいものだ。乙女、名は?」

「リリア……」

「リリア。お前はもう私と契約しているのだから」

「はい……。……はい?」

ぼんやりしていたリリアはその一言で我に返った。
目の前の精霊は今「契約した」と言わなかっただろうか。
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