「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

文字の大きさ
26 / 77

25

しおりを挟む
「あら?」

リリアとエレスが小屋に戻ると不思議な生物がいた。

不思議な生物とはいえ見た目は鳥だ。
ミドリスズメのような鳥だがそれよりも各段に美しい、エメラルドグリーンの羽を持っている。

その鳥が、小屋の周りを高速でぐるぐる回っていた。
不審な鳥はどんどんヒートアップしているのか、鳥というより緑色の軌跡にしか見えなくなっていく。

「な、何!?」

普通に飛んでいたら長い尾羽も優雅だと思えるだろうが、目の前の光景のあまりの異常さに恐怖の方を感じる。
と、エレスが困ったようにため息をついた。

「アエラス」

「あっ王様!」

エレスが呼びかけると怪しい鳥は何事もなかったかのように二人の目の前で停空する。
近くで見るとその美しさがよく分かる。羽ばたく度に羽がキラキラと光を反射して輝いていた。
そして可愛い少年のような声でどんどん喋る。

「王様久しぶり! ずっと呼んでたのに全然反応ないからボクもー王様死んじゃったのかなって思ったよ! まっ王様がのんびりなのは今に始まったことじゃないけどね! むしろちょっと早めじゃない? やる気のある王様めっずらしい!」

「相変わらず気忙しいな。お前に比べたら全てが呑気に見えるだろう。私の乙女が驚いてるぞ」

「あっ王様の乙女だ! こんにちはっ! そうだったボクあなたに会いに来たんだよ!」

「こんにちは……」

鳥はすごい勢いで喋るのでリリアは圧倒されるばかりだ。

「リリア。これは風の大精霊アエラスだ」

「大精霊?」

そういえばエレスの話の中にちらっと大精霊という存在が出てきていたような気がする。
だが精霊事情に疎いリリアにはよく分からない存在だ。

「まっ大精霊ってのは人間が勝手に呼んでるだけだけどね!大精霊って言っても風の精霊は全部ボクだからさ!」

「今はリリアにも見えるように鳥の姿を取っているが、アレの言う通り風を司る精霊だ。風の精霊の中でも意思を持つ者が大精霊と呼ばれている」

「王様は力が強すぎるからね! いつもはボク達四大精霊が細かい調整してるんだよ!」

「あら? でも小屋を掃除した時に風の力を使っていなかったかしら」

「あれは別に大精霊の意識というわけではなくただの力と感情の流れにすぎない」

「どういうこと?」

「王様ここ掃除したの!? あははは! 疲れたでしょ!」

風の大精霊アエラスはその場でくるくる回りながらおかしそうに笑う。
精霊王に掃除を手伝ってもらった事が改めて申し訳なくなる。

「やっぱりあんな事させちゃいけなかったんだわ」

「何を言う。私はリリアの精霊でリリアは私の乙女なのだから、リリアがする事は私もする」

どんな理屈なのだろう、とリリアは思うがエレスの中では通る理論らしい。
思い返せば力を貸してくれた時には嬉しそうだったし、今も手伝いたそうにしているのだから精霊とはそういうものなのかもしれない。

「風の流れや小さい感情はどこにでもあるよ! でも目的を成す程の意識を持てるのはそれらが多く集まっている場合なんだ!」

「えっと、精霊はどこにでもいるけど意思を持てる程に集まったら大精霊…?」

「そう! だからこうして『見える姿を取る』事や『話す』事が出来るんだよ! もうすぐ火精霊フォティア水精霊ウォネロも来るんじゃないかな、土精霊エザフォスはいつか分かんないけど!」

土精霊エザフォスは私より寝ているからな」

ふふ、とエレスがリリアに笑いかける。

「まあ、それじゃあ何年後になるか分からないわね」

どうやらこの小さな小屋は賑やかになるようだ。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。

里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。 でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!! 超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。 しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。 ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。 いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——? 明るく楽しいラブコメ風です! 頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★ ※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。 ※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!! みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*) ※タイトル変更しました。 旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』

女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです

珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。 その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。 ※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。  お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。 絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。 王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。 最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。 私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。 えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない? 私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。 というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。 小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。 pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。 【改稿版について】   コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。  ですが……改稿する必要はなかったようです。   おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。  なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。  小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。  よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。   ※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。 ・一人目(ヒロイン) ✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前) ◯リアーナ・ニクラス(変更後) ・二人目(鍛冶屋) ✕デリー(変更前) ◯ドミニク(変更後) ・三人目(お針子) ✕ゲレ(変更前) ◯ゲルダ(変更後) ※下記二人の一人称を変更 へーウィットの一人称→✕僕◯俺 アルドリックの一人称→✕私◯僕 ※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。 しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。 「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」 そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。 実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。 落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。 一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。 ※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております

処理中です...