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リリアの着ているドレスと似た桃色の、肩が大きく露出したドレスを纏っていつもより可愛らしさが強調されている。
キャロルはいつも濃い色の服を着ており、それが彼女の性格と髪色が相まって非常に魅力的だった。
彼女自身もハッキリした性格と色が自分に合っていると普段から豪語していた。
事実、キャロルの身に着ける物は彼女によく似合っていた。だがそれをおしてでも淡い桃色のドレスを着ているという事は、花精霊祭には流行の色などがあるのだろう。
「でもま、こんな所でつむじ風なんて珍しいけど丁度良く風が出てくれたおかげで助けられたわ。感謝してよね」
「ありが、とう」
(キャロルが助けてくれた……!?)
リリアの頭の中は混乱に次ぐ混乱だった。
記憶の中とは違い、目の前のキャロルはどこか小ざっぱりしていて頼りがいすら感じられる。
(私以外にはこんな風に接していたのかしら)
村にいたころからリリアはキャロルに、無加護とは別に個人的な恨みを持たれていたような気がしていた。
その恨みが何かは分からなかったが、今のキャロルを見るにその感覚はあまり外れていなさそうだ。
幼少期はブライアンと一緒に遊んでいたくらいにはキャロルとも付き合いがあるので恨まれる心当たりもそれなりにある。
(でもキャロルのおかげで助かったんだもの。エレスも風を止めてくれたみたいだし)
「助かったわキャロル。本当にありがとう」
「ん? 私の事知ってる……の……?」
「えっ」
(そうだった、私だってこと知らないんだったわ)
しかし、にこにこと笑っていたキャロルの表情は既に強張っていた。
事態に気付いたらしく、じわじわと顔が強張り、歯を食いしばってリリアをにらみつける。
「あんた……!」
失言に気を取られていたリリアと、興奮したキャロルでは何もかもが違っていた。
キャロルは素早く腕を伸ばすとリリアの目元のレースと被っていた帽子をはぎ取る!
「あ……!」
「あんたは……リリア!」
帽子の中に納まっていた黒髪がふわりと肩に落ち、リリアの黒目が見開かれる。
(バレた!)
「なんで、なんであんたがここにいるのよ!」
激高したキャロルはリリアの黒髪を隠していた帽子とレースをぐしゃりと握り潰した。
そして地面に叩きつけると、ドレスと同じ桃色のヒールでぐりぐりと踏みつける。
「何してるの!?」
「いなくなってせいせいしたと思ってたのに! 無加護のくせに厚かましく花精霊祭に参加して! 自分だって分からなければ参加してもいいと思ったの!?」
帽子もレースもどんどん泥まみれになっていく。
「やめて! 私の事はなんて言っても良いけど、でもそれは」
「ブライアンに用意してもらったんでしょ!? 知ってるわよ!」
肩で息を切らしてキャロルは叫んだ。
「ブライアンはあんたが村を出る前からそのドレスを作ってたのよ。どんなにねだってもお金を用意しても私に はくれなかったんだから! 大事そうにしてたから王都からの注文かと思っていたのに、なんで……なんであ んたが着てるのよ!」
その言葉でリリアは腑に落ちた事があった。
(それで桃色を着ているんだわ)
キャロルはブライアンが本当に好きなのだ。
愛や恋はよく分からないリリアだが、苛烈な感情には村でも見覚えがある。
正直、リリアも彼女がブライアンに優しくされている所はあまり見た事がない。
リリアに対しても勿論ひどい態度だったが、大人に良い顔をする割に一度見下した相手へはひどくあたるのがブライアンだった。
だがキャロルは今日精霊王役のブライアンの花乙女になる事を夢見ているのだろう。
だから今回の花精霊祭で、大切にされていたリリアのドレスに近い色のドレスを着ているのだ。
(私を巻き込まないでちょうだい)
リリアはなんだかどっと疲れてしまった。
『なんだこの人間は。さっきから不愉快な存在が多すぎるが一度まとめて綺麗にした方が良くないか? 乙女』
「エレスはちょっと黙ってて。あと何もしないでちょうだい」
「なによ、ぶつぶつ言っちゃって気持ち悪い」
『……』
「エレス、落ち着いて!」
精霊の機嫌はリリアもよく分からない。
言って聞いてくれているだけありがたいのだから煽るようなことをしないでほしい所である。
「どうせ花冠もブライアンから奪ったんでしょ? 出しなさいよ。あんたにはもったいないから、私が管理してあげる」
はい、と手を出す彼女にリリアは困惑した。
「花冠は受け取らなかったわ。私には必要ないもの。嘘だと思うならドレスの中まで調べてくれて構わないわ」
「はあ?」
「確かにブライアンは私に花冠をくれようとしたわよ。でも今まで私にひどい事したのに受け取ろうなんて思わない。欲しいのなら私じゃなくてブライアンに言うことね」
眉尻を吊り上げるキャロルにきっぱりとリリアは言い返した。
「無加護のくせに生意気言って……!」
キャロルはいつも濃い色の服を着ており、それが彼女の性格と髪色が相まって非常に魅力的だった。
彼女自身もハッキリした性格と色が自分に合っていると普段から豪語していた。
事実、キャロルの身に着ける物は彼女によく似合っていた。だがそれをおしてでも淡い桃色のドレスを着ているという事は、花精霊祭には流行の色などがあるのだろう。
「でもま、こんな所でつむじ風なんて珍しいけど丁度良く風が出てくれたおかげで助けられたわ。感謝してよね」
「ありが、とう」
(キャロルが助けてくれた……!?)
リリアの頭の中は混乱に次ぐ混乱だった。
記憶の中とは違い、目の前のキャロルはどこか小ざっぱりしていて頼りがいすら感じられる。
(私以外にはこんな風に接していたのかしら)
村にいたころからリリアはキャロルに、無加護とは別に個人的な恨みを持たれていたような気がしていた。
その恨みが何かは分からなかったが、今のキャロルを見るにその感覚はあまり外れていなさそうだ。
幼少期はブライアンと一緒に遊んでいたくらいにはキャロルとも付き合いがあるので恨まれる心当たりもそれなりにある。
(でもキャロルのおかげで助かったんだもの。エレスも風を止めてくれたみたいだし)
「助かったわキャロル。本当にありがとう」
「ん? 私の事知ってる……の……?」
「えっ」
(そうだった、私だってこと知らないんだったわ)
しかし、にこにこと笑っていたキャロルの表情は既に強張っていた。
事態に気付いたらしく、じわじわと顔が強張り、歯を食いしばってリリアをにらみつける。
「あんた……!」
失言に気を取られていたリリアと、興奮したキャロルでは何もかもが違っていた。
キャロルは素早く腕を伸ばすとリリアの目元のレースと被っていた帽子をはぎ取る!
「あ……!」
「あんたは……リリア!」
帽子の中に納まっていた黒髪がふわりと肩に落ち、リリアの黒目が見開かれる。
(バレた!)
「なんで、なんであんたがここにいるのよ!」
激高したキャロルはリリアの黒髪を隠していた帽子とレースをぐしゃりと握り潰した。
そして地面に叩きつけると、ドレスと同じ桃色のヒールでぐりぐりと踏みつける。
「何してるの!?」
「いなくなってせいせいしたと思ってたのに! 無加護のくせに厚かましく花精霊祭に参加して! 自分だって分からなければ参加してもいいと思ったの!?」
帽子もレースもどんどん泥まみれになっていく。
「やめて! 私の事はなんて言っても良いけど、でもそれは」
「ブライアンに用意してもらったんでしょ!? 知ってるわよ!」
肩で息を切らしてキャロルは叫んだ。
「ブライアンはあんたが村を出る前からそのドレスを作ってたのよ。どんなにねだってもお金を用意しても私に はくれなかったんだから! 大事そうにしてたから王都からの注文かと思っていたのに、なんで……なんであ んたが着てるのよ!」
その言葉でリリアは腑に落ちた事があった。
(それで桃色を着ているんだわ)
キャロルはブライアンが本当に好きなのだ。
愛や恋はよく分からないリリアだが、苛烈な感情には村でも見覚えがある。
正直、リリアも彼女がブライアンに優しくされている所はあまり見た事がない。
リリアに対しても勿論ひどい態度だったが、大人に良い顔をする割に一度見下した相手へはひどくあたるのがブライアンだった。
だがキャロルは今日精霊王役のブライアンの花乙女になる事を夢見ているのだろう。
だから今回の花精霊祭で、大切にされていたリリアのドレスに近い色のドレスを着ているのだ。
(私を巻き込まないでちょうだい)
リリアはなんだかどっと疲れてしまった。
『なんだこの人間は。さっきから不愉快な存在が多すぎるが一度まとめて綺麗にした方が良くないか? 乙女』
「エレスはちょっと黙ってて。あと何もしないでちょうだい」
「なによ、ぶつぶつ言っちゃって気持ち悪い」
『……』
「エレス、落ち着いて!」
精霊の機嫌はリリアもよく分からない。
言って聞いてくれているだけありがたいのだから煽るようなことをしないでほしい所である。
「どうせ花冠もブライアンから奪ったんでしょ? 出しなさいよ。あんたにはもったいないから、私が管理してあげる」
はい、と手を出す彼女にリリアは困惑した。
「花冠は受け取らなかったわ。私には必要ないもの。嘘だと思うならドレスの中まで調べてくれて構わないわ」
「はあ?」
「確かにブライアンは私に花冠をくれようとしたわよ。でも今まで私にひどい事したのに受け取ろうなんて思わない。欲しいのなら私じゃなくてブライアンに言うことね」
眉尻を吊り上げるキャロルにきっぱりとリリアは言い返した。
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