「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

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気を取り直して食事を作ろうと改めてリリアは食材を見る。

「新鮮な魚もあるからこれから使いましょう。良いお魚だからシンプルな味付けにしたいわね。塩で味付けして食べる直前にさっと炎レモンを絞るときっと美味しいわ。こっちの葉物はサラダにしましょう。ああ、新鮮な野菜がたっぷりのサラダなんて人生初めてじゃないかしら。すごく贅沢だわ!」

食材の詰まった荷台を見てあれやこれやとテンション上がっているリリアを、エレスとブライアンが微笑ましく見つめていた。

「はしゃいでいるリリアも可愛い。今日の食事もだ楽しみだ」

「そ、そうですね。おいしそうです」

精霊王から話しかけられているのか、大きな独り言なのか分からないが無視するよりはとブライアンは答えた。
エレスからは一瞥もない会話である。

「いつまでいるつもりだ、人間」

それは疑問ではなく、当然のごとく帰れという意味である。
リリアもリリアのご飯も精霊が独占したいのだ。
人間に渡すものなど何もない。
ブライアンは教会式の最敬礼をし、お腹を空かせながら山を後にした。



そうして数日穏やかに過ごしているある日の事。
リリアは地響きで目が覚めた。

「な、なに!?」

古い小屋が振動で壊れてしまうのではないかと思うほどの地震だ。
事実天井からはパラパラと土埃なのか漆喰なのか分からないが落ちてきている。
壁にも今まさに目に見える程のヒビが入っている。

精霊たちはのんびりしているから最悪な事にはならないだろうが普段感じたことのない事態にリリアは慌てて小屋の外に出た。
幸い開けて上から落石があるとも思えない場所だ。とりあえずは安全だろう。
地響きはなおも続いている。

「結構長いわね。それになんだか、どんどん大きくなっていってるっていうか……近くなってるような気がしない?」

「そうだろうな」

不安がるリリアを落ち着けるように精霊王が抱きしめる。
長衣に隠れて普段は見えないがしっかりした腕を感じるとリリアは知らずほっとした。

「のんびりしていると思っていましたが、彼なりに急いでいたようですね」

「どうだかねえ。『近くになってから急いだ』の方がまだありそうじゃないか」

「ねえ、これ大丈夫なの!?」
たまらずリリアがそう叫んだ時、ミシリと何か決定的な音がした。
直後ドォッとすさまじい音がする。

「きゃああああ!!!」

目の前で小屋が壊れた。

「あ」

精霊王も精霊達も「やべ」という顔である。

「家がー!!!」

村から逃げるように辿り着き、掃除をしたり日々を過ごし皆と料理を囲み愛着の出てきた小屋は木っ端みじんだ。
叫んでしまうのも仕方ない。

「……あら?」

よくよく目を凝らして土煙の中に巨大な何かが見える。

「な、何かいるの?」

「ああ。怯えずとも良い」

エレスが手をかざすと突風がすべてを拭き流す。
現れたのは随分渋い声をした、のんびりしたあくびだった。

「う、うさぎ? なのかしら……」

そこにいたのは巨大な茶色いうさぎだった。
小屋は壊れ、その瓦礫の上にうさぎが鎮座している。

大きさにさえ目を瞑れば健康的な野ウサギだが、否が応でもその存在感が目に飛び込んでくる。
小屋のように、いや下手をすると小屋よりも大きいかもしれない大きさのうさぎだ。
非常に大きく、とてもふわふわしている。
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