「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井

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巨大なうさぎはマイペースにくあ、と口を開けてあくびをひとつした。

「ふあ~。あれえ、着いたあ?」

「エザフォスおじさん遅いよー!」

アエラスがパタパタと周りを飛んでは突いたりしている。

「エザフォス……? ということは」

聞いた事のある名前にリリアは目を開く。

「土の大精霊、エザフォスまかりこしました~。はじめましてえ、花乙女様あ」

エザフォスはよいしょ、と頭を向けて精霊王の腕の中のリリアに挨拶をする。
リリアも慌ててエレスから離れて挨拶をした。

「初めまして、土の大精霊エザフォス。私はリリアよ。よろしくね」

「うんうん知ってるよお。一生懸命来たんだけど遅くなっちゃったあ」

(なんだかのんびりした大精霊ね)

つい、つられてリリアものんびりした気持ちになってしまう。

「エザフォス。お前にしてはかなり急いだのだと理解しているが、人間に流れる時間は異常に早い。大体の事は終わった後だぞ」

「まあね~色々見られなかったのは~残念かな~って思うけどお、何があったかは大体分かってるから大丈夫だよお」

呆れ顔のエレスに対してもエザフォスはのんびりしたものである。

「エザフォスが大きく動けば大地にも影響が出るからな。実体化するのも時間がかかるんだ」

リリアに説明しながらふわりとエレスがエザフォスに手をかざす。
キラキラとした光がエザフォスを包んだ。

「今大地との関わりを薄くした。これで速く動いたとしても大丈夫ではあるのだが……」

歯切れ悪く説明するエレスにフォティアが苦笑いをしながら続ける。

「長い時の中でエザフォス自身がこんな感じだからねえ」

「あんまり意味ないかもー!」

あんまり期待していない様子の精霊達である。

しかし今エザフォスに出会ったばかりのリリアも少しだけ分かるような気がした。

「ところで花精霊祭っていつ~?」

「もう終わったわよ!?」


これで大精霊と精霊王が全て集ったことになる。
そもそも精霊自体が人前に姿を現さないのでこれは大変なことだ。

「大変といえば、目下最優先で対処しなくちゃいけない大変な事があるのよね」

腕を組んで苦悩するリリアにアエラスは興味津々だ。

「なになになにー!?」

「今晩…いいえこれから寝るところがないのよ」

小さいながらも愛着があった小屋は今や見る影もなく瓦礫になっている。
さすがにもうエザフォスは乗っていないが、余計に惨状がよく見えた。
村から献上されたものの大半は小屋には多すぎて未だ荷車に載せたままであり、小屋も勝手に住んでいたものだから失ったものはないといえばない。
しかし実際問題休む場所はなくなってしまった。

「ああ~……ごめんねえ……。僕が何も考えずに出てきてしまったからあ……」

おおきな兎であるエザフォスはそのつぶらな瞳をうるうるとさせている。事態を把握して本気で反省しているらしい。
だが精霊には壊れた小屋を直す術などないし、新しく建てることもできないのだ。

「ううん、いいのよ。元々野宿だって考えていたんだし。ただ新しい家は探さなくっちゃね」

出来ればエザフォスものびのび出来るくらい大きなものがいい。
しかしそれを入手するとなるとどうしたらいいのか全く分からなかった。

(村に下りて相談してみようかしら)

もしかしたら精霊教会経由でなんとかしてくれるかもしれない。
それはリリアが一番最初に思った事なのだが同時に懸念もあった。

(でも精霊教会にお世話になると精霊達の自由が利用されそうで怖い)

精霊の存在の影響力が凄まじい事は、無加護であったリリアでこそ分かるものでもあった。
花精霊祭の後の事は感謝もしているが、その手のひら返しは恐ろしくもあった。
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