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17 side ルーベルト殿下
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陛下から許可を貰って話した内容は彼女に衝撃を与えたのか、俯いたまま黙ってしまった。本当は伝えなくても彼女の人生に影響ないと考えた。しかし、あとから聞かされるより今、聞いていた方が納得出来るのではないかと考えての話だった。微かに肩を震わす彼女を慰めたいと伸びそうになる自分の手を、握り締めグッと耐えながら着いた店の入口には友人が出迎えていた。
「シュミットガル令嬢、オーナーが待っている。行こう」
先に馬車を降りて手を差し出せば、そっと小さな手を乗せてくれる。彼女をエスコートして入った店内は、前回とは違って女性が利用出来る専用スペースが設けてあった。
「昨日は嫌な思いをさせて申し訳ありませんでした」
「オーナーさん、気にしないで下さい。私こそ、何も説明せずに帰って申し訳ありません」
謝罪の応酬になりだしそうな二人を止めて、友人自慢の女性用スペースへと彼女を案内する。入口から少し隠れるその場所は子供にも使いやすい小さめの椅子に、ドレスでも座れる広めの椅子。小さな花が飾れた隠れ家の様にも見えた。
「凄いな。一週間でここまで」
「いや、嫁にも怒られてな。主婦も気軽に立ち寄れる様に子供と一緒の空間を考えたんだ」
友人は彼女が帰った話を自宅でしたらしい。奥さんが不思議に思って店を見に来て、開口一番と怒られたのは家具の高さだったようだ。子供と一緒とは考えつかなかったな。
「素晴らしい奥様ですね。こんなにも誠実に意見を出して下さるなんて」
「本当に頭が上がりません。殿下や嫁に言われるまで高さを気にしていなくて、デザインには拘っていたんですが嫁には不評でした」
苦笑いしながら頭を掻く友人は、彼女にきっかけが貰えたとお礼を言っていた。
「そうですね……専用スペースがあるなら、一つ提案ですが……」
そう切り出した彼女は、女性のみが利用出来る時間や曜日を作ってはどうかと言う。何故、女性だけなのか理由を尋ねると、思いもよらない答えだった。
「やはり子供がいると気を使いますし、男性が苦手な方もいらっしゃいます。だから女性だけと男性だけの日を一日づつ作ってはいかがでしょう」
「成る程……異性が苦手な方も人目が気になる方も来れる様にと言う事ですか」
「実験的にやってみて評価を確かめてからでも宜しいかと」
「素晴らしい意見をありがとうございます」
ニコニコと聞こえそうな程笑顔の友人は、前回のお詫びも兼ねて腕によりをかけて料理したと言いながら彼女をテーブルに案内する。手を上げて合図をすると奥から店員がカートを押して現れた。出来立ての湯気か立ち上る皿が並べられる。私の前に並ぶ料理と彼女の前に並ぶ料理には量に差があった。
「嫁に貴方が作る料理は量が多いと言われたんです。女性から見て、この量はどうですか?」
「確かに殿下と同じ量は食べきれませんが、これなら食べそうですわ」
友人が横に控える中、食事を進める。終始笑顔で話す彼女に、不快感は感じず安心していた。
あの人が現れるまでは……
「オーナーいる?営業許可が下りたよ」
ギルドマスターが営業許可証を携えて自ら訪ねてきた。驚く友人を見て笑顔を浮かべる彼は、悪戯が成功した少年の様にも見える。これで自分より歳上なのだから驚きだ。友人に向かって歩き出す彼に気付いた彼女は、今日見ていた中で一番の笑顔をマスターに向けた。
「あら、ガイ。ちゃんとお仕事してるのね」
「え?お嬢!?何してんの!?」
「シュミットガル令嬢、オーナーが待っている。行こう」
先に馬車を降りて手を差し出せば、そっと小さな手を乗せてくれる。彼女をエスコートして入った店内は、前回とは違って女性が利用出来る専用スペースが設けてあった。
「昨日は嫌な思いをさせて申し訳ありませんでした」
「オーナーさん、気にしないで下さい。私こそ、何も説明せずに帰って申し訳ありません」
謝罪の応酬になりだしそうな二人を止めて、友人自慢の女性用スペースへと彼女を案内する。入口から少し隠れるその場所は子供にも使いやすい小さめの椅子に、ドレスでも座れる広めの椅子。小さな花が飾れた隠れ家の様にも見えた。
「凄いな。一週間でここまで」
「いや、嫁にも怒られてな。主婦も気軽に立ち寄れる様に子供と一緒の空間を考えたんだ」
友人は彼女が帰った話を自宅でしたらしい。奥さんが不思議に思って店を見に来て、開口一番と怒られたのは家具の高さだったようだ。子供と一緒とは考えつかなかったな。
「素晴らしい奥様ですね。こんなにも誠実に意見を出して下さるなんて」
「本当に頭が上がりません。殿下や嫁に言われるまで高さを気にしていなくて、デザインには拘っていたんですが嫁には不評でした」
苦笑いしながら頭を掻く友人は、彼女にきっかけが貰えたとお礼を言っていた。
「そうですね……専用スペースがあるなら、一つ提案ですが……」
そう切り出した彼女は、女性のみが利用出来る時間や曜日を作ってはどうかと言う。何故、女性だけなのか理由を尋ねると、思いもよらない答えだった。
「やはり子供がいると気を使いますし、男性が苦手な方もいらっしゃいます。だから女性だけと男性だけの日を一日づつ作ってはいかがでしょう」
「成る程……異性が苦手な方も人目が気になる方も来れる様にと言う事ですか」
「実験的にやってみて評価を確かめてからでも宜しいかと」
「素晴らしい意見をありがとうございます」
ニコニコと聞こえそうな程笑顔の友人は、前回のお詫びも兼ねて腕によりをかけて料理したと言いながら彼女をテーブルに案内する。手を上げて合図をすると奥から店員がカートを押して現れた。出来立ての湯気か立ち上る皿が並べられる。私の前に並ぶ料理と彼女の前に並ぶ料理には量に差があった。
「嫁に貴方が作る料理は量が多いと言われたんです。女性から見て、この量はどうですか?」
「確かに殿下と同じ量は食べきれませんが、これなら食べそうですわ」
友人が横に控える中、食事を進める。終始笑顔で話す彼女に、不快感は感じず安心していた。
あの人が現れるまでは……
「オーナーいる?営業許可が下りたよ」
ギルドマスターが営業許可証を携えて自ら訪ねてきた。驚く友人を見て笑顔を浮かべる彼は、悪戯が成功した少年の様にも見える。これで自分より歳上なのだから驚きだ。友人に向かって歩き出す彼に気付いた彼女は、今日見ていた中で一番の笑顔をマスターに向けた。
「あら、ガイ。ちゃんとお仕事してるのね」
「え?お嬢!?何してんの!?」
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