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6 sideクロード
しおりを挟む「は?」
大事な話があると長兄のシューザ兄さんに呼ばれて久しぶりに帰れば、兄さんは無表情に俺は"破門"されると言った。
「聞こえなかったのか?破門だ。書類は提出済みだ」
兄さんの呆れた様な顔を見て俺は怒りが湧く。ふざけるな!貴族で無くなったらハリエットと結婚出来ないじゃないか!そうだ!タリス家だって黙っていないはずだ!!
「兄さん!タリス家との婚約がなくなっても良いのか!」
「無くなったよ。お前のせいでな」
俺の背後から聞こえたのは次兄のヴォルフ兄さんだった。騎士団に所属しているヴォルフ兄さんは、昔から体格が良く無口で威圧感があり苦手な存在。ヴォルフ兄さんの登場で無意識に体は強張った。
「相手から正式にお前との婚約破棄の連絡がきた。婚約が失くなればお前の様なお荷物を我が家に置いておく理由は無い」
シューザ兄さんの言葉に驚いてヴォルフ兄さんから視線を戻すと、そこには家族の情など全く見えず俺を汚いモノの様に見ている兄がいた。は?……なんだよその目は……婚約破棄?あいつは俺にベタぼれだろう?
「バカな!ハリエットは俺に惚れているはずだ!!無理矢理、破棄させる気か」
「気持ち悪い勘違いだそうだ」
興奮して大きな声になっている俺とは対象的な静かな声で、ヴォルフ兄さんがあり得ない事を言った。
「気持ち悪い?誰が……」
「ハリエット嬢から直接言われた。お前に恋愛感情なんて無いのだとさ。そんな気持ち悪い誤解は止めてくれと言われた」
「誤解……何が誤解なんだよ」
兄さん二人の言葉が理解出来ない。破門だの婚約破棄だの立て続けに言われて……しかも、ハリエットが俺を気持ち悪いと言った?そんなバカな。アイツは何時も俺が何をしようが文句も言わずただ……
「お前の後始末をしていたのは婚約者と次期当主としての義務と責任からだ」
「次期当主?誰……ハリエットが?俺だろう?」
「お前の頭は空っぽか?何度、教えれば覚えるんだ?お前は入婿予定者であって血縁者では無いから相続権は無い」
予定者?俺で決まってたのだろう?だからアイツは面倒臭いお茶会やパーティーの同伴を……
「ハリエット嬢は今頃、お前以外の候補者と面会している。最悪、ヴォルフは候補者から外されるだろうな」
は?俺の他にも候補者?聞いて無いぞ。しかも、ヴォルフ兄さんも候補者だったのか?
頭に疑問符だらけになった俺に、シューザ兄さんが大きなため息を吐く音が聞こえて体が震えた。シューザ兄さんは普段は温厚だが一度、見切りをつけると一切の容赦は無い。俺はどうなるんだ?本当に破門なのか?破門されたら俺の生活はどうなるんだ?
「兄弟の最後の別れの時にごめんなさいね」
考えが纏まらない俺を無視して今度は義姉が部屋に入って来ると、シューザ兄さんの横に立った。この義姉も苦手だ。俺を何時も刺すような鋭い視線で見ているから、常に監視されている気分にさせられる。そんな義姉は俺にニタリと悪意ある笑みを向けた後、シューザ兄さんの耳元で話し始めた。何を話しているか聞こえないがシューザ兄さんの俺を見る目が鋭くなる。俺にとって良くない事だけは理解出来た。
「はぁ……タリス家の特産が何か知っているか?」
「は?特産って結婚もしていないのに知らないよ」
「入婿の癖にお相手の事を知ろうともなさらないのね」
義姉の突っかかる言い方にカチンときたが事実、知らないので何も言えなかった。
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