[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

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本編

消えない何か

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 薬を飲んで暴走は落ちついたけど、涙が止まらず足元の覚束ない私は、結局、ランバートさんに抱き上げられて部屋へ戻った。机の上に借りてきた本を置いた彼は、私にベッドで休む様に言っだけど眠れそうにない。

「寝れなくても休んだ方が良い」

「でも……その……何か」

 何か聞かれても答えられないけど、足元からジワリと得体の知れない何かが近付く様な感じが消えない。無意識に両腕で足を擦る。気持ち悪い

「オーウェン殿に診て貰おう。彼なら何か分かるかも知れない」

「オーウェンさんが?」

 ランバートさんの話では、オーウェンさんはエルフの中でも博識の人で、ほぼ全ての魔法を習得し剣も魔法で造ったらしい。

「魔力や医学の知識は師匠以上だ。師匠には言いたくないんだろう?」

 確かに師匠には言いたくない。でも、他の人では分からない可能性が高い。

「分かりました。お願いします」

 直ぐに戻ると言って、彼は部屋を出て行った。部屋に置いてある茶器でお茶を入れて温まろうと思ったけど、足が重くて歩き辛い。早く早くと思うと余計に足が動かず、自分の身体なのに人形の足でも動かしているような感覚だ。たった五歩、歩いただけで全力で走った後の様な疲れを感じる。茶葉を取ろうと手を伸ばした時、大きな音をたててドアが開いた。驚いて振り向いたまま動けない私を見たオーウェンさんの眉間にシワが寄る。もう来たんだと思った時には、部屋に入った彼に手を掴まれた。

「これは……呪詛……小僧、聞きたい事がある。そこで待っていろ」

 私から目を放さずにそう言うと、ベッドに座る様に言われた。ベッドに戻りたくても足が床に固定された様に動かない。どうしよう

「ごめんなさい。足が……動かない」

 オーウェンさんの舌打ちが聞こえて肩が揺れた。どうしよう、怒ってる?

「小僧、手伝え」

 ランバートさんは驚いた様に目を開いた後、黙って頷くと私を抱き上げてベッドに座らせてくれた。

「イリーナ、ズボンを捲るぞ」

 そう言ってオーウェンさんが裾を持ち上げると、朝にはなかった黒い線が浮き上がっていた。え?ナニコレ……蔦が絡み付いてるみたい。

「束縛の呪詛……何があった小僧」

 ランバートさんが図書室の帰りに会った貴族の女性の話をした。彼自身、初めて会う女性なので、名前も住んでる場所も知らないらしい。

「今すぐ調べろ」

 ランバートさんが走って部屋を出て行く姿をボンヤリ見ていると、オーウェンさんが私の名前を呼んだ。

「これは魔力が少なくなっているせいだ。心当たりはあるか?」

「さっき、女性に会った後、暴走しそうになって薬を飲みました」

「最悪なタイミングだ」

 そう言うと服の中から細長い紙を取り出して両足に巻いた。オーウェンさんが教えてくれたのは、魔力暴走を止める薬のリスク。あの薬は、薬液が魔力を吸い取る事で、暴走で爆発的に増えた過剰な魔力を抑える。短期間に続けて服用すると稀に魔力切れを起こす事がある。今、私は魔力切れ寸前まで減っていて、呪詛の抵抗力が落ちている状態になっていた。

「小僧への呪詛が、弾かれてお前にいった。おそらく女が無意識にかけたモノだ」

 気持ち悪い原因が分かった安堵とは別に、また、モヤっとしたモノが心に沸き上がる。呪詛をかけてまでランバートさんが欲しいかと思うと余計にモヤっとした。

「この紙は呪詛を吸い取り、一時的だが進行を止める。今日中に解いてやるから待て」

 オーウェンさんの言葉に、私が頷くと彼は手のひらに丸薬を乗せた。今朝、貰った丸薬とは違う蒼い色をしていた。え?この色は、ちょっと……コレ……飲む?

「これは魔力回復薬だ。飲んで寝ろ」

 水と丸薬を渡されて恐る恐る口に入れて飲み込んだ。今朝と同じ無味無臭だったけど、何か眠い。
 逆らえない強烈な眠気がくる中、オーウェンさんに促されてベッドに横たわる。彼が何か言ってるけど、私の耳に届く前に眠りに落ちた。



「お前は無自覚か……小僧は報われんな」


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