[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

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本編

魔王の過去 *暴力表現あり

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 廊下を挟んだ向かいの部屋で三人が話し合っている時、私はまだ寝ていた。

 正確には夢うつつ?転移魔法の魔力を感じて起きたけど身体が動かない。何だろう……誰か呼んでる。

『巫女、迷惑掛けてすまんな』

誰?何処かで聞いた声がする。顔が見たいのに、目の前は真っ白で目を開けているはずなのに何も見えない。

『我々が何を想って戦いを始め……そして、終わりにしたいか知っていて欲しい』

戦いを始めた?何を知っていて欲しいの?



 急に目の前が暗くなると、私は誰かの目線で何処の森の中にいた。他の人の肩に乗って見ているみたいに、私の意思とは無関係に話が進む。どうやら私は男性の肩の上にいるらしい。奥さんらしい女性と一緒に暮らしていて、女性はもうすぐ赤ちゃんが産まれそうだった。

『ルル、大人しくしてたか?』

『心配性ね。大丈夫よ。この子もお利口さんにしてたわ』

 女性の体調を気にする男性と、微笑みながらお腹を撫でて語る女性。とても幸せな普通の夫婦だ。魔物だと言う事を除けば……


『キャー!止めて!私達は何もしてないわ!』

『嘘をつくな!家畜を襲ったのも、畑を滅茶苦茶にしたのもお前らだろう!!』

 場面が変わり何処からか人間が何人も家に来て、壁を壊し家の中の物を盗んで行く。その人間の男性の一人が魔物の女性のお腹を足で強く踏みつけた。一人がやると次から次に他の人も踏みつける。
 目を反らしたく光景が目の前にあった。でも、魔物の男性は人間の男達に押さえつけられ、手足を何かで斬られたのか動けなかった。

『ルル!止めろ!自分達は関係無い!止めろ……止めろ!!』

 男性の叫びと共に魔力が爆発する。魔物の大きな魔力で周囲の人間や建物は吹き飛んでしまった。軽症の数人が逃げて行くのを横目で見ながら男性は女性の元に行くと、彼女は口から血を流し息絶える寸前だった。

『っ……ナゼだ……こんな事……』

『あなた……』

『ルル!もう話すな!何処か別の場所で静かに暮らそう……それが良い』

『愛してるわ……この子をお願い……ね』

『ルル?……う……嘘だろ?……ルル……嫌だ……逝くなルル!!』

 動かなくなった女性の手を握り締めた男性の激しい慟哭が響く。女性の身体が砂の様にサラサラと崩れていく。お腹の子供も助からなかったのか、彼の手元には大小二個の魔石だけが残っていた。

 どれくらい時間が経ったか分からない。いつの間にか泣き止んだ男性は、二つの魔石をジッと見ていたかと思うと、そのまま口に入れて飲み込んだ。

『これで三人、いつも一緒にいられる……そして、一緒に奴らを殺そうな……お前達がいない世界に意味はないからな』

 自分のお腹を擦り魔石に語りかける様に話す男性の眼に、激しい復讐の炎が灯る。彼が最初にしたことは、家を襲撃した人間を殺す事だった。
 一つの村を消すと騎士団が魔物討伐として派遣された。その騎士団を返り討ちにすると、ギルドからも討伐隊が派遣される。その繰り返しをしているうちに、人間に家族や仲間を殺された魔物が彼の元に集まり一緒に復讐を始めた。更に集まった魔物に怨みのある人間も討伐隊に加わり規模が大きくなった。
 人間より長生きな魔物は、いつしか魔王と呼ばれる様になっていた。人が老いて逝く中、復讐を果たしたはずがその子孫に自分が怨まれ戦いが終わらない。長生きとはいえ魔物だって老いていく。老いて戦いが出来なくなった仲間や手足を失った者。多くの傷付いた同胞達に魔王は、戦いを止めて静かに暮らす事を決意した。


『我が倒されれば人間も納得するだろう……巻き込んで済まなかった』

 集まった仲間の前でそう言って謝った魔王は、一つの街を結界で囲み魔物だけが暮らす国造りを始めた。建物が出来て後は結界で囲むだけどなった時、フッと遠くから黒い塊が近付いてきた。

『我が主よ……これは……何だ?』

『お前も話を聞く気になったか』

『……我は認めない……認めんぞ!』

 眩しい光の爆発の後、目の前に広がっていたのは瓦礫の山と倒れた同胞。何が起きたか一瞬、理解出来なかった。いや、理解したくなかった。

 その後はランバートさんから聞いた話と同じだった。二人の意見は対立し、いつしか二人の戦いになった。



『また、大切な者を護れなかったのだ……頼む奴を止めてくれ。そして、我が子の魔石を浄化して欲しい。父は待っていると伝えてくれ』

 あぁ、貴方は魔王さんだったのね。分かったよ。必ず伝えるよ。だから、後ろにいる奥さんと一緒に待っててね。

『……ルル!』

『お帰りなさい、旦那様』

 互いに強く抱き合う二人を見ながら、私はやっと身体を起こした。

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