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本編
小さな我が儘 side ランバート
しおりを挟む『……何時になったら自由に買い物出来る様になるのかなぁ』
俺の前で初めて言った本音。我慢する事に慣れた彼女が言う小さな我が儘を、俺は叶える事にした。突然、王都に行くと言い出したから驚いた表情を見せた彼女は最初は渋っていたが、行きたい気持ちが大きいのか少し嬉しそうに支度を始めた。
「この紙の件は師匠に預けようと思うが良いか?」
「はい、お願いします」
彼女が支度をしている間に、紙を師匠に届ける事にして部屋を出た。この時間なら執務室のはず。先触れは出していないが緊急事態だから、そのまま向かう。扉の前にいる騎士に、取り継ぎを頼むと直ぐに了承されて部屋に通された。
「急にどうした?」
「これを見て下さい」
紙を渡し事情を説明すると、師匠の眉間に深いシワが刻まれた。朝の薬品といい紙といい、一日に起きた事を考えると内部犯行以外ありえない。ならば王族の二人に委ねる事が一番のはずだ。
「これがリナの部屋に?」
「はい、黙って差し込まれたから性別も分からないそうです」
「……わざと字体を崩して書いたか……このまま預かるぞ」
師匠の言葉に頷くと、人を呼んで王様に面会の連絡をした。今、王様は城内で会議中らしく、午後イチになりそうらしい。
「何か分かれば連絡する。今日の予定は?」
「イリーナが買い物に行きたいと言ったので、今から街に行きます」
師匠に彼女を街に連れて行く事を伝えると、眉間にシワを寄せ不満気だったが了承した後、机の引き出しから小さな巾着袋を取り出した。
「これをリナに渡してくれ」
中身を尋ねれば金貨が十枚入っているらしい。その袋を師匠は俺の手の上に乗せた。袋と師匠の顔を交互に見ると、不機嫌そうに腕を組んで睨まれる。いや、睨んでないで説明をお願いします。
「何処から出た金ですか?」
「ナダルから城内の魔具の修理代として渡された物だ」
「成る程、それなら彼女も気にせず使えますね」
「どういう意味だ?」
俺の言葉に気になる事でもあるのか、片方の眉がピクッと動く。何でそんなに機嫌が悪いのか分からん。別に今の言葉に深い意味なんかないんだが……ただ
「師匠からの小遣いなら、彼女は間違いなく遠慮するでしょう」
師匠の肩がピクッと動く。どうやら心当たりがあるらしい師匠は、深いため息を吐いた。
「あいつの部屋、何もなかっただろう。いくら言っても買い物しないんだよ」
そうだろうな。俺が金を出すことを嫌がるくらいだ。師匠なら尚更、普段から迷惑掛けてるとか言って欲しい物も言わないだろうな。
「何が買いたいか知らんが、リナはずっと我慢していたから好きな所に連れて行ってやれ」
「はい」
成る程、師匠にも遠慮して買い物に行きたい事を言わなかった……仕方ない、師匠の分まで甘やかしてこよう。俺だけに言った我が儘。そう思うと何だか笑いが止まらない。
「気の抜けた顔をするな。警戒を怠るなよ」
「了解です」
師匠に睨まれながらも部屋を出て、俺は急いで彼女の元へ戻った。
さて、先ずは何処に連れて行こう
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