[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
93 / 107
本編

ギルドに行きたかったのに……

しおりを挟む
 一日ゆっくり寝たら魔力は回復したけど、肺はまだ回復していないらしい。長い距離を歩くと息があがり、長く話すと咳が出た。オーウェンさんが言うには肺の損傷は完治するまで時間が掛かるらしい。それでも部屋を荒らされてから二日たった今日は、ギルドマスターに約束していた魔具の作り方を纏めていた。

「苦しくないか?」

「大丈夫です」

 私の体調を心配する彼は、何度も確認しする。昨日、城内の図書室に一人で行って暫く咳が続いたせいでかなり過保護になった。うーん、自分が悪いのは分かっているけど……今は椅子に座ってますが?

 元侯爵の男性は相変わらず行方不明のまま。皆を巻き込んでオトリ作戦を考えていたけど、肝心のオトリ役の私が動けなくて一向に進まない。オーウェンさんは魔法薬でも治せない事が腹が立つと言って、薬の研究の為に森に戻った。その際、幾つかの薬を渡されだけど、治癒力を高めるだけだから本人的には納得出来ないとか。いや、普通に治癒力を高めるって凄いんですけどね。

「……これで大丈夫」

「そうか」

 書き終わった書類を纏めて袋に入れると、ランバートさんに渡す。本当は私が直接届けたかったけど、今は馬車での移動も辛かった。王都は人が多いから空気が悪いってオーウェンさんも言って外出禁止になってしまった。あー、ジッとしているの辛い。

「明日の午後にギルドに持って行くよ」

 書類を収納しながら彼がそう言った。明日か……やっぱり自分で説明したいし、魔具の開発と製造している人の話も聞きたいなぁ。お義父様以外の人が作ったり修理している所を見たこともないし……

「一緒に行くのは……」

「駄目だ」

駄目だと分かっていたけど一応、聞いてみたらあっさり断られる。そんなに即答で断らなくても良いのに……

コン、コン

 扉を叩く音がしたけど外から何も聞こえない状況に、ランバートさんの眼が鋭くなった。二人で扉を見詰めていると、もう一度、扉を叩く音が聞こえた。

「はい、何方ですか?」

 外からの応答はなく私の代わりにランバートさんが静かに扉に近付くと取っ手に手を掛けた。少し待っても外から声は聞こえない。再び、扉を叩く音が聞こえたと同時に彼は扉を一気に開けた。
 急に開いた扉に驚いた表情をして立っていたのはマスターだった。ランバートさんは無言でマスターの腕を掴むと、床に引き倒した。

「おわ!?っ……痛たたた……よう勇者じゃねぇか」

「おっさん……帰れ」

 え?ちょっと!なんで追い返そうとしてんの!!いや、いや、いや、マスターも暇じゃないし用が無きゃここまで来ないし!マスターもヘラヘラ笑って気にしてないけど良いの!?

「ひでぇ扱いだな。あー痛い。歳は取りたくないね」

「要件を言え」

 床に倒れた時に腰を打ったのか、手で擦りながら私の向かいの椅子に座った。その後ろでランバートさんが腕を組んで睨み付けているけど、マスターは全く気にする様子はなく魔具の作り方を纏めたか尋ねられた。

「はい、ランバートさんに預けてあります」

「そうか今、渡してくれ。そして、お嬢ちゃんは暫くギルドに来んな」

 マスターの言葉に驚いていると、ヘラヘラとした笑いを消したマスターが一枚の紙を取り出した。

「これが今朝、うちに入っていた」

 その紙には私を襲って怪我させる事を依頼すると書いてある。特徴がオレンジの髪とか手段は選ばないとか物騒な事も書いてある。

「はっきりした時間は分からねぇが、従業員が出勤した五時には入っていた」

「そんな朝から仕事させてるのかよ。鬼だな」

ちげーよ!泊まりの奴らの朝食と夜間と早朝限定依頼があるからだ」

 ランバートさんとマスターのやり取りを聞きながら、私は静かに考えていた。もし私が外出しなかったとして相手は諦める?……いや、諦めないし更に過激になりそう。

「お嬢ちゃんは危ねぇから、うちに来んな。犯人捜しはこっちでやっとくから」

「え?嫌です」

 マスターの言葉に、即答で返したら二人が絶句した。え?黙るとこ?だって私は悪いことしてないのに
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」

千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。 だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。 それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。 しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。 怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。 戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...