[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ

文字の大きさ
95 / 107
本編

思うが故に side ランバート

しおりを挟む
 イリーナが休む部屋を出た俺は、ギルマスと長い廊下を黙って歩きはじめると、魔力を広げて人払いをした。片眉を上げ怪訝な表情で様子を伺うギルマスに向き直った。

「犯人の事だ……元侯爵当主の男で、雷系魔法を使う」

「……俺とは、ちっとばかし相性がわりぃな」

 少しなどと強がっているが、ギルマスは水系魔法。無属性の俺とは違い相性は最悪だ。

「で?他にもあんだろう」

「複数個の魔具を所持しているが、何を持っているか未だに把握出来ていない」

「はぁ?」

 貴族は基本的に王家に敵対心が無い事を示す為に、魔具を管理・保管する書類が必ずある。ところが元当主の男は個人で隠れて魔具を製造、所持をしていた事が発覚した。現当主の息子やその家族も誰も知らず、行方不明になり部屋を調べて見付かった魔具は違法の攻撃魔具。部屋に残されていたものは全て未完成のものばかりだった。

「なんだそいつは……とち狂ってらぁ……素人が簡単に造れる物じゃねぇだろう」

「あぁ、師匠とイリーナが城の連中と確認したが暴発の危険が高いらしい」

「街中で使われたら……無関係なヤツラが巻き込まれるじゃねぇか!!」

 普段は飄々と人を煙でまく様な男が本気で怒りを露にしている。ギルマスの家族は違法魔具の暴発で亡くなっているから当然か……

「……まさか……お嬢ちゃんの囮ってのは……」

「自分が暴発に巻き込まれる覚悟で言った事だ」

 小さな声で“マジか”と呟いたギルマスが黙って俯いている。歩みを止めたギルマスを見詰めているとグッと拳を握り締めた。

「詳しい話を聞かせろ」

「詳しいも何も今のが全てだ。イリーナは街中で戦闘に成ることを避けたいだけだ」

 そう答えた俺にギルマスは俯いたまま頭を横に振った。

「ちげぇよ、犯人の事を教えろ」

 そう言うと俺の胸ぐらを掴んで今にも殴りかかりそうな勢いだった。珍しいな、普段、冷静でいろと口煩いクセに。

「落ち着け。最近の特徴は分かっていない」

「何故だ?貴族なら姿絵ぐらいあんだろう?」

「十年以上前だが、王兄と揉めて追放された貴族の事件を覚えているか?」
 
 ギルマスが黙って頷いた後、目を見開いて俺に視線を向けた。気付いたか……あの事件の後、自ら姿絵を破棄し男は表舞台から姿を消した。

「……その男……髪は銀髪か?」

「あぁ、師匠と外見が似ているらしい。眼の色も同じ銀」

「そいつは俺の獲物だ」

「は?何を……」

 男の外見を聞いてギルマスの態度が一瞬で変わった。殺気を垂れ流し瞳には怒りの色が浮かぶ。

「やっと見つけた……暴発の……俺のかたき

 “敵”の一言で理解した。ギルマスの家族が巻き込まれた魔具暴発事件。多くの市民が巻き込まれ三人が亡くなり、多くの負傷者が出たその事件の犯人は未だ不明のまま。目撃者はギルマスと少年の二人だけで、銀髪に長身と魔力が高い事だけしか情報が無く、少年は顔を見ていたがまだ幼い八歳の彼の情報は相手にされなかったと聞いている。

「三年前の事件の犯人なら大問題になるぞ」

「そんなのは、お偉いさんのヤルこった。ゲーリーを呼び出す。アイツなら分かるはずだ」

「ゲーリー?……あぁ、目撃者の少年か。分かった。師匠に伝える」

 ギルマスは片手を上げて答えると、そのまま屋敷を出て街に戻った。三年前の事件の犯人捜しに侯爵家が圧力を掛けていたら……犯人を知ってて隠蔽した事になる。イリーナの予想通りギルドに隠れているなら今日か明日には動きがあるだろう……証拠集めに時間は掛けられないな。

「……また、徹夜で仕事かよ」

 ため息と共に溢れた愚痴は誰もいない廊下に消えた。さて、先ずは師匠に今の話を伝えますか。




目撃者の少年の名前を変更しました

ガイル→ゲーリー
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜

大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。 みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。 「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」 婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。 「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。 年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。

死を望まれた王女は敵国で白い結婚を望む。「ご安心ください、私もあなたを愛するつもりはありません」

千紫万紅
恋愛
次期女王として王位継承が内定していたフランツェスカ。 だが戦況の悪化を理由に父王に争いの最前線に送られた。 それから一年、命からがら王都へ戻った彼女を待っていたのは労いの言葉ではなく、敵国・シュヴァルツヴァルトの王太子への輿入れ命令。 しかも父王は病弱な異母妹アリーシアを王妃に据え、フランツェスカの婚約者レナードを王にするという。 怒りと絶望の中フランツェスカはかつて敵将であったシュヴァルツヴァルト王太子・フリードのもとへお飾りの妻として嫁ぐことを決意する。 戦地での過去を封じ、王族としての最後の務めを果たすために。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...