幽霊じゃありません!足だってありますから‼

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学園に狂信者の群れができる

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学園に入学した春、やっぱりヒロインに出会ってしまった‼

テンプレ通りにヒロインに出会ってから、王子を含めた攻略対象者達の態度は明らかに異常だった。まるで狂信者のように心酔しきり、ヒロイン以外の人間は虫けらのように扱った。

特に宰相の令息であるセドリック・ハイネの婚約者フィオリーナ・バルクス伯爵令嬢への態度は目に余るものだった。
2人は仲睦まじい婚約者であり、セドリックがフィオリーナを溺愛していると有名だった。
しかし、ヒロインに出会ってからは真逆になり、まるで仇敵に会った如く酷い態度で接するようになってしまった。フィオリーナが少しづつ痩せて、笑顔が無くなっていくのを見て「(ここは乙女ゲームの世界なの、残念だけどセドリックは諦めた方が良いわ。)」と何度言ってあげたかったかわからない。でも、頭がおかしいと思われると思って言えなかった。
結局、2人は1年生の冬に婚約を解消し、フィオリーナ・バルクスは卒業をまたず2年生の夏に辺境伯へ嫁いで行った。ただ、ゲームでは結婚するのは卒業後だったし、相手の辺境伯は老人で後妻として嫁ぐはずだったが、相手は25歳の初婚だった。ゲームの本筋は変わらないのに、現実で起こっていることと、ゲームの知識はほんの少しづつズレて行った。

王子も私を見るとイライラが抑えられなくなるようだった。セドリックほどで無いにしても、婚約者に対しての態度とはおもえないほど冷たかった。何も知らなかったら、凄まじいショックを受けるだろうと思うほど、学園入学前と変わってしまった。予め分かっていた私でも、ドーンと引くくらいで、憎しみの篭った目線は親の仇ですか!?って思うほどだった。
(う~ん、これはまずい。あまり関わらず、王子の目に止まらないようにやり過ごすしかない。)
1度お父様に状況を説明したが、仲良くやりなさい。と相手にしてもくれなかった。 
それというのも、学園では避けて過ごせたが、婚約者として宮廷行事婚約者の苦役参加する時だけ、殺気の視線がやわらいだからだ。(なんて器用なの?これもゲームの強制力なの?)儀礼的な言葉しか交わさなくなった、冷たい横顔をみながら、恋に堕ちなくて本当に良かったとつくづく思った。

王妃教育の為に週2回登城するのに変わりは無かったが、ヒロイン登場後、クリス様は1度も顔を出すことは無かった。代わりに第2王子のアレン様が良く顔を出してくれて労わってくださるようになった。
アレン様は、王族らしく美少年だが男らしい顔付でクリス様とはあまり似ていない。ゲームにも登場していないいわゆるモブキャラだ。2つ年下とは思えない程、落ち着いた雰囲気を持っている。2人きりでお会いして話すことはさすがに無かったが、学園にいる3年間はアレン様と1番親しかったと言える。

攻略対象者は、王子、セドリックの他に騎士団長の息子と左大臣の息子がいる。それぞれに婚約者がいるが、どちらも狂信者と成り果てていた。ヒロインに忠告するよう、私に言ってくる者もいたが「クリス王子のみこころのままに・・・私は何も申せません。」力なく儚げに首を振って断った。(関わると虐めたとか言って難癖つける○○ガイに何を言ってもムダよ。)同じことが何度かあったが、私に言っても無駄だと最後には諦めたようだった。

その代わり、〘アーリス嬢は理不尽な扱いに健気に耐えている淑女のなかの淑女〙や、〘どんなに冷たくされても殿下を愛する一途な人 〙など、美しい誤解が囁かれるようになった。有力貴族を侍らせていたヒロインは虎の威を借る狐の如く、傲慢に振舞っていた。周囲の反感は日増しに高まって行き、その反動で私の評価が上がっていったようだった。
3年生の秋、影で〘アーリス様を見守る会〙なる組織が知らぬうちにできていたことを知った。(私、悪役令嬢のはずなんだけど?)ゲームではなかったことが、少しづつ積み重なっていった。

学園には、貧しいながら優秀な生徒を公爵家が支援して通わせていた。私は将来平民を薬草調合で身を立てようと思っていたので、王妃教育が無い日は薬草調合や、錬金術を研究するグループに顔を出すようになった。その中でも魔術も研究しているライディンと仲良くなった。

この国での魔術とは、今は廃れたものロストテクノロジーであり、不要な物と言われている。学ぶことは止められてはいないが、資料や学ぶ場所などが無いのだ。学ぶならかつて魔術師だった子孫に依頼しなければならない。何故廃れたものとなったのか?ライディンに聞いたその理由は魔法使いと魔術師の違いと"悲劇の王子"の歴史的な背景にあった。

かつて魔法使いが人を奴隷にして使役していた暗黒期と呼ばれる時代があった。魔法を持たない人々は対抗するために、魔力がなくても魔法を発動できる魔法陣を編み出した。そして、魔法使い×魔術師の戦争が起きた。

"悲劇の王子"アーサー・グランツはそんな時代にトバルズ国の第1王子として産まれた。当初の名はアーサー・トバルズ。膨大な魔力を持ち、魔法使いとして戦争にも参戦し英雄として名を馳せた。

しかし、魔術師に婚約者を攫われたことで状況は一変する。アーサーは婚約者を探す為にグランツ侯爵として臣籍へ降った。数々の戦いを経てアーサーが知ったことは、全てが第2王子の策略であり、魔術師によって婚約者が既に亡くなっていたことだった。婚約者が攫われたのは王位継承を巡る骨肉の争いが原因だったのだ。

アーサーは第2王子を殺害し、魔法使い×魔術師の最後にして最大の戦場となった「タヤーナ峡谷の戦い」へ赴くと両陣営に戦いを止めるように説得したが、どちらも応じなかった。アーサーはこれ以上戦いを繰り返してはならないと言い残し、戦場にいた者を巻き込み自爆した。遺言を受け取った従者は自爆前に戦いの場を離脱し、第3王子にその言葉を伝えた。第3王子は後の"平定者パスカル・トバルズ王"となった。

「タヤーナ峡谷の戦い」は最大の戦場だった為、大半の魔法使い、魔術師はその時亡くなった。

以後、理由は不明だが魔法使いが産まれることは非常に稀になり、保有する魔力量も僅かとなっていった。人々はそれを"悲劇の王子の呪い"と呼んだ。

魔術師は魔法陣の知識を詰め込んだ多くの書物を戦争時に焼失した。また、魔法陣は古語で記述する必要があり、古語の知識も必要とする。今は魔術師だった一族の子孫が残った書物を継承しひっそり研究していくこととなった。ライディンも先祖が魔術師だったという。滅多に生まれない微量な魔力量しか持たない魔法使いと、失われた魔法陣の知識。
段々この国では廃れたものとして重要視されなくなっていった。ライディン曰く"悲劇の王子"の遺言を汲んだ平定者が、王家の子孫にそのように導くよう伝えた可能性があるとのことだった。

「私は魔術を究めたいと思っております。隣国のメシアン国には魔術師団がありますし、東の国パタン公国には魔法騎士団があると聞いております。卒業したら、親戚を頼ってメシアン国にまず行こうと思っております。」
「そうなのね。きっとライディンならできるわ。」
ライディンが嬉しそうに笑った。

平民になって女1人で生きていくのは大変なことだ。魔術が使えることができたら、どんなに楽だろう。ライディンにまずは古語から手ほどきを受けることになった。
一応、まだ王子の婚約者の身だからライディンと2人で会うようにしないよう気をつけながら、魔術の研究に傾倒していった。
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