幽霊じゃありません!足だってありますから‼

かな

文字の大きさ
16 / 44

『夢渡り』と失われた記憶②

しおりを挟む
白い細長い道を更に進んでいくと行き止まりとなった。
目の前には真っ黒で大きな扉が見える。
イルギアス様が扉に触れると、僅かに振動を感じた。 

「目的地に着きました。この扉がアーリス様のに起こった記憶となります。先程の扉とは違って、意識下より深い無意識下に入りますので、私と手を繋いでいただけますか。また、中に入ったら決して手を離さないでください。うっかり離してしまった場合は、手でなくて良いので私にすぐに触れてください。」
真剣なイルギアス様の様子にはいと頷くと手を握った。
「では、参りましょう。」

真っ黒な扉を開けて、中に入ると床が無かった。
周囲は真っ黒で何も見えない。
吸いこまれるように下に落ちて行く感覚だけがあった。
怖すぎて、声も上げられなかった。
イルギアス様と繋いだ手だけが頼りだった。
 
しばらく経つと床に足が着いた感覚があった。やっと底に着いたようだった。
「アーリス様大丈夫ですか?」
「私は大丈夫です。ここは・・・着いたのですか?」
「そうです。少しだけ灯りを灯しましょう。」
いつの間にか消えてしまっていたカンテラに、灯りが再び灯された。イルギアス様がカンテラを掲げて周囲を見廻すと、余り大きくはない部屋で、床の一部が凸凹になっていた。
イルギアス様は私に凸の部分に座るように促した。
「アーリス様、私が誘導しますので目を閉じて集中してください。カンテラも消しますが、私が傍にいますので安心してください。不安になったら、私の手を握ってください。よろしいですか。」
「はい」
「ではゆっくり目を閉じてください。まずはアーリス様が覚えている、最後の記憶に戻ります。ゆっくり・・・ゆっくり・・・」

イルギアス様の言葉を聞きながら、ゆっくり瞼を閉じた。

ーーーーーーーーーーーー

サラサラと自室で手紙を書いている"私"が居る。
手紙を書き終わり、立ち上がった時に首の後ろがチクッとして手をあてたら意識がなくなった。
・・・真っ暗な闇だけを感じる。

──何か匂いはしませんか?声や、触感は?

待って・・・声が聞こえる・・・聞いたことがある声。

──誰か分かりますか?何て言っていますか?

男性で、、私の名前を呼んでる・・・。一緒に逃げようと言ってる・・・誰なの?止めて私は行きたくない!触らないで!

──その男に心当たりがありますか?他に何かされましたか?

私の首を触っている。古語を呟いている見たい・・・。
その声・・・ライディン・・・貴方はライディンなの?

──ライディンとは誰ですか?

学園の時に魔術を教えてくれた友人です。
でも、なぜ彼が私を攫おうとしたのが分からない・・・私達そんな関係じゃ無かったのに・・・

──彼はその他に何をしていますか?

カサカサ音が微かにするけど、何をしているか分からない。
首に掛けられた魔術のせいか、さっきより感覚が遠いの・・・嗚呼っ眠ってしまうわ。

──眠ってください。一旦眠りに着いたら、目覚めた所に飛びます。ゆっくり・・・ゆっくり・・・ゆっくり・・・。
  さあ貴女は今、どこにいますか?

目が開けられないので焦ってる。息苦しい。古い木の匂い。
どこか狭い所に閉じ込められているみたい。怖い!怖い!
誰か助けてって叫びたいけど、声が出せない!

──アーリス様、呼吸が乱れています。一旦深呼吸してください。大丈夫です。私が傍にいますから。

ごめんなさい取り乱してしまって。

──恐ろしい思いをされたのですから当然のことですよ。お気になさらず。・・・その後何があったのですか?

突然、木の箱のような物が開いた音がして・・・
ライディンの声でアーリス様、遅くなってすみません。迎えに来ました。一緒にメシアン国に行きましょうと言ってるのが聞こえる。

嫌よ!絶対嫌!何故なのライディン!
逃げたくても、問い詰めたくても身体がいうことを聞いてくれない。ライディンが古語を呟くのを絶望的な気持ちで聞いていた。

助けを呼びたくても、声が出なくて『誰でも良いから、助けて!このままでは攫われてしまう!助けて‼』心の中で思い切り叫んだ時、彼の声が聞こえた。

──声が聞こえた?誰の声ですか?

突然、頭の中に聞こえて・・・激怒しているような大声だった。
『おのれ魔術師め!エリスのように女を攫おうとしているのか!そうはさせぬぞ!』

私はその言葉を聞いて、助けを求める叫びが天に通じたのかと思って泣きそうになった。

『貴方は誰なの?』
『私はアーサー、アーサー・グランツ』

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

モブ令嬢アレハンドリナの謀略

青杜六九
恋愛
転生モブ令嬢アレハンドリナは、王子セレドニオの婚約者ビビアナと、彼女をひそかに思う侯爵令息ルカのじれじれな恋を観察するのが日課だった。いつまで経っても決定打にかける二人に業を煮やし、セレドニオが男色家だと噂を流すべく、幼馴染の美少年イルデフォンソをけしかけたのだが……。 令嬢らしからぬ主人公が、乙女ゲームの傍観者を気取っていたところ、なぜか巻き込まれていくお話です。主人公の独白が主です。「悪役令嬢ビビアナの恋」と同じキャラクターが出てきますが、読んでいなくても全く問題はありません。あらすじはアレですが、BL要素はありません。 アレハンドリナ編のヤンデレの病み具合は弱めです。 イルデフォンソ編は腹黒です。病んでます。 2018.3.26 一旦完結しました。 2019.8.15 その後の話を執筆中ですが、別タイトルとするため、こちらは完結処理しました。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。

処理中です...