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カイロスの鏡
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突然、眩しい光がヘルゼン王の居る付近から放たれた。驚いてそちらを見ると、ヘルゼン王が両手で何かを持っていた。
「今の光は・・・」
「クリス様、何かあったようです。テーブルに戻りましょう。」
テーブルに座り直そうと近づくと、イルギアス様が苦虫を噛み潰したような顔でブツブツ文句を言っているのが聞こえてきた。
「貴方は突然すぎる!何かする場合は、事前に説明をして下さらないと困ります!」
ヘルゼン王は、悪びれる様子もなく取りなした。
「そう怒るな魔法使い。では、先にこれから行うことを説明しよう。今のは、これから行う魔法に必要な"鏡"を用意しただけだ。そなたにはこれから、アノーのテーブルとカイロスの鏡を合わせた応用魔法を行って貰う。」
「カイロス・・・時の神クロノスの別名ですね。ですが、私は"カイロスの鏡"について聞いたことがありません。応用魔法とはどのようなものでしょうか?」
「クロノスとカイロスの違いを先に説明した方が理解が早いだろう。クロノスは、過去から未来へと一定速度の時間〘物理的な時間法則 〙を司っているが、カイロスは人間の内面的な時間を司っている。内面的とは、個人の〘物理的な時間法則の支配を受けない領域〙で刻まれた時間のことだ。
──アノーのテーブルが、記憶と記録の比較で虚偽記憶を確認する物であるならば、カイロスの鏡は虚偽記憶で刻まれた象徴を映し出すことなる。第1王子の眼にしか映らない象徴的な物・・・第1王子には強く執着し、幻の婚約者として投影している象徴がある。第1王子が描いたご令嬢の絵だ。第1王子には、この絵を自らの手で打ち壊すことで、自責の念の底なし沼から這い出てもらう。」
「あの絵ですか・・・」
「数が膨大なので、幾度も繰り返す必要が有るだろう。魔法使い、私は今日、アノーのテーブルとカイロスの鏡をつなげ、そなたへ応用魔法の術を伝える。後日、そなただけでも応用魔法が使えるようにする。後は実際にやらねば分かるまい。」
「わかりました。」
2人の遣り取りを聞いて、驚いた。
(絵ってあの絵よね。打ち壊す?あの絵を?)
今では見慣れてしまったが、初めてあの絵を見た時、戦慄して凍りついたのを思い出す。
その時、クリス様は周りに聞こえないような声で小さく囁いた。
「アーリーの絵を壊すのか・・・」
「・・・ええ。でも本物の私がここにいますわ。それとも、本物より絵が大事ですか?」
「・・・いや、そんなことはないさ。ただ・・・辛いと思っただけだ。」
クリス様の暗い声が、彼の心の闇を表している様で急に心が重くなった。
クリス様に取っては、幻の私との思い出なのだ。私の知らない私・・・絶対負けない!幻なんかに彼を渡してなるものか!
「楽しいことを考えましょう。戻ったら一緒に何をしましょうか?」
「・・・そうだな。アーリーと一緒に何をしよう・・・一緒に旅行にでも行こうか?どこか行きたい所はあるかい?」
クリス様の最後の言葉が聞こえたのか、アレン様が遠慮がちに声をかけてきた。
「それならば、兄上、アーリス嬢。私の立太子式に来てくださいませんか?勿論、状態が落ち着いていたらという前提ですが。」
「立太子式か、だが私が行ったら周りの目があるし迷惑だろう。」
「周りの目など!!私は、兄上に来ていただきたいのです。兄上にとってご迷惑であれば、これ以上言いませんが・・・」
「そうか・・・。」
「クリス様一緒に参りましょう。アレン様の祝典ですし・・・そのような機会を共に過ごして、私達の思い出を1つずつ増やして行きましょう。」
「アーリーがそう言うなら、出席しよう。」
その言葉を聞き、アレン様は嬉しそうに笑った。
私達がそんな話をしている間に、ヘルゼン王がイルギアス様に何やら指示を出していた。
イルギアス様が頷くと、ヘルゼン王が私たちにテーブルから離れるよう促した。
全員が距離を取ると、音もなくテーブルの足が外れ、天板の円卓だけが床にある状態になり、そのまま泉がふた周りくらい大きくなった。
ヘルゼン王は泉に近づくと、手に持った何かを泉つけるように置いた。
それは姿見の形をした鏡のミニチュアだった。
そのまま、イルギアス様に手で合図すると両手を掲げたイルギアス様は何かを呟いた。すると、グングン姿見は大きくなり、あっという間に見上げるほど大きくなった。鏡の成長が止まると、ヘルゼン王は泉の中に入り鏡面に触れた。懐から金色の鍵を出し鏡面に差し込むと扉を開ける様な仕草をした。
その途端、ザワっと空気が1段重くなったような感覚がした。
ヘルゼン王は「どうやら、上手く繋がったようだ。」
と呟くと私達に手招きをした。
「第1王子、ご令嬢、鏡の前に来てくれ。第2王子は泉の外に居るように。」
鏡の前に行くと、手を繋ぐように言われクリス様と恋人繋ぎをして次の指示を待った。
鏡を覗くと、海のように深い藍色に、時々光が反射して鏡の奥が果てしなく続いているように見える。鏡の中には私達2人だけが映っていた。
「第1王子、これからカイロスの鏡にそなたの見た幻の象徴が映ってくる。そなたが見た幻の婚約者との思い出を描いた絵だ。幻を追い続けるのか、目の前の本物の婚約者を選ぶか選択するのだ。本物の婚約者を選ぶなら、鏡を叩いて絵を打ち壊せ。
──ご令嬢、第1王子が惑ったら泣きわめいても、脅してもいい、口付けてもいい。こちら側に引き戻せ。今日全てを打ち壊せないと思うが、諦めるな。必ず上手く行くと信じるのだぞ。」
私達が頷くと、ヘルゼン王は泉の外に出た。
泉の中には、鏡の前にクリス様と私、鏡の裏にはイルギアス様が立っていた。
「では、始めます。」
イルギアス様の言葉と共に、鏡面が歪み変化していった。
鏡の中は、まるで合わせ鏡のドロステ効果と同じように、同じ画面が幾つも無限に広がっているように見える。但し、私が映るはずの位置には、私ではなく、色々な姿の私の絵が映っていた。
1番手前に出てきた絵に見覚えがあった。それは初めて絵をみたあの日・・・「幽霊じゃありません!足だってありますから‼」と叫んだ日に、光条の間で見た婚礼式の正装をしたクリス様と紫のドレスを着た私の絵だった。嬉しそうに微笑む2人をクリス様がどんな気持ちで描いたのか、胸が痛い。けれど、だからこそ壊さなければならない。
クリス様は、拳を握りしめていたがその手は震えていた。幸せな2人の幻を消すことに恐怖心が消えないようだった。
「クリス様、私、足があるんですよ。」
わざと戯けた様に脚をあげて、意識をこちらに向けさせる。
「遠い東洋の国では、死んだら足が無くなるって話があるんですよ。迷信ですけど私は信じてて・・・可笑しいですよね。ヘルゼン王を見るとちゃんと足がありますし・・・ふふっ。でも、足があるし、ちゃんと私は生きています。クリス様が私としたかったこと、やりたかったこと、全て私と一緒に成し遂げましょう。私はこの絵のクリス様よりもっと貴方を幸せにしたい。だから未来を共に生きましょう。」
「ああ、そうだねアーリー。私も君を幸せにしたい。ずっと共に生きて行きたい。」
そういうと、クリス様は息を深く吸って、握った拳で鏡を叩いた。一度では壊れず、10数回繰り返すと粉々に割れて消えていった。
そして、別の絵が手前に現れ同じように壊していくことを繰り返した。一度で壊れる物もあれば、数度で壊れる物もある。それでわかったのは、クリス様の思い入れが強い物はなかなか壊れず、強くない物は簡単に壊れることだった。
どれくらいその作業を繰り返していたか分からなくなってきた頃、チリン、チリンと鈴の音が辺り一面に響いてきた。だんだんと強く力強く響いてくる。
「この鈴はタイムリミットの合図です。これ以上は危険なので、今日はこれまでにしましょう。」
泉から離れるよう説明され、アレン様の隣に移動する。イルギアス様が手を翳すと、一瞬のうちに泉と鏡が消え去った。残るのは、真っ白なアノーのテーブルと椅子だけとなった。
「これで今日は終いとなる。第2王子、そなたのおかげで助かった。礼を言う。今後はもう、あの3人だけで大丈夫だ。」
「兄上を助けていただいてありがとうございました。」
「いや・・・いいのだ。そなたとは不可思議な奇縁だが、もうこうして言葉を交わすことはないだろう。この国を頼んだぞ。次代のトバルズ王よ」
「はい。必ずこの国を守ります。」
「精霊、そなた達にも感謝する。」
『使者~』
『女神様によろしくね~』
そういうと、精霊達は小人の姿からキラキラした光の玉になり、アレン様の肩辺りからスウッと入り込んで消えていった。
「魔法使い、もう少し時間はあるか?」
「数分程度なら問題ありません」
「第1王子、魔法使い、戻ったらできる限り絵を描く行為は止めることだ。絵を描くことで傷を拡げることになる。習性で直ぐに止まらない場合は時間を徐々に短くすることだ。完全に止めることができれば、それだけ快復が早くなる。
──第1王子、カイロスはチャンスも司る神だ。この機会を取り逃がすな。必ず克服しろ。」
2人が頷くと、今度は私に向かって頭を下げた。
「そなたが姿を消したのは、私に遠因があった。現国王が代わって謝罪していたが・・・悪かった。そなたが幸せになるよう、心から願っている。」
そしてまた軽く頭を下げると、ではな、と言って手を振った。
「ヘルゼン王、本当にありがとうございました。女神様にも感謝の意をお伝えください。」
そうお礼を述べた直後、またこの世界がつよく揺さぶられ、ブレたような衝撃が走った。こうしてヘルゼン王は姿を消した。
「ふぅ、・・・それでは皆様戻りましょう。」
イルギアス様が、両手を空に掲げると、虹色の空から金色の羽根を持つ大きな鳥が舞い降りてきた。
「皆様、この鳥の羽根に掴まってください。決して離してはなりません。」
全員が鳥に掴まると、イルギアス様が唄うように詠唱した。それに釣られるかのように、金色の鳥が空へと飛び立った。
もうすぐ虹色の空にぶつかると思った時、目の前が真っ暗になった。
「今の光は・・・」
「クリス様、何かあったようです。テーブルに戻りましょう。」
テーブルに座り直そうと近づくと、イルギアス様が苦虫を噛み潰したような顔でブツブツ文句を言っているのが聞こえてきた。
「貴方は突然すぎる!何かする場合は、事前に説明をして下さらないと困ります!」
ヘルゼン王は、悪びれる様子もなく取りなした。
「そう怒るな魔法使い。では、先にこれから行うことを説明しよう。今のは、これから行う魔法に必要な"鏡"を用意しただけだ。そなたにはこれから、アノーのテーブルとカイロスの鏡を合わせた応用魔法を行って貰う。」
「カイロス・・・時の神クロノスの別名ですね。ですが、私は"カイロスの鏡"について聞いたことがありません。応用魔法とはどのようなものでしょうか?」
「クロノスとカイロスの違いを先に説明した方が理解が早いだろう。クロノスは、過去から未来へと一定速度の時間〘物理的な時間法則 〙を司っているが、カイロスは人間の内面的な時間を司っている。内面的とは、個人の〘物理的な時間法則の支配を受けない領域〙で刻まれた時間のことだ。
──アノーのテーブルが、記憶と記録の比較で虚偽記憶を確認する物であるならば、カイロスの鏡は虚偽記憶で刻まれた象徴を映し出すことなる。第1王子の眼にしか映らない象徴的な物・・・第1王子には強く執着し、幻の婚約者として投影している象徴がある。第1王子が描いたご令嬢の絵だ。第1王子には、この絵を自らの手で打ち壊すことで、自責の念の底なし沼から這い出てもらう。」
「あの絵ですか・・・」
「数が膨大なので、幾度も繰り返す必要が有るだろう。魔法使い、私は今日、アノーのテーブルとカイロスの鏡をつなげ、そなたへ応用魔法の術を伝える。後日、そなただけでも応用魔法が使えるようにする。後は実際にやらねば分かるまい。」
「わかりました。」
2人の遣り取りを聞いて、驚いた。
(絵ってあの絵よね。打ち壊す?あの絵を?)
今では見慣れてしまったが、初めてあの絵を見た時、戦慄して凍りついたのを思い出す。
その時、クリス様は周りに聞こえないような声で小さく囁いた。
「アーリーの絵を壊すのか・・・」
「・・・ええ。でも本物の私がここにいますわ。それとも、本物より絵が大事ですか?」
「・・・いや、そんなことはないさ。ただ・・・辛いと思っただけだ。」
クリス様の暗い声が、彼の心の闇を表している様で急に心が重くなった。
クリス様に取っては、幻の私との思い出なのだ。私の知らない私・・・絶対負けない!幻なんかに彼を渡してなるものか!
「楽しいことを考えましょう。戻ったら一緒に何をしましょうか?」
「・・・そうだな。アーリーと一緒に何をしよう・・・一緒に旅行にでも行こうか?どこか行きたい所はあるかい?」
クリス様の最後の言葉が聞こえたのか、アレン様が遠慮がちに声をかけてきた。
「それならば、兄上、アーリス嬢。私の立太子式に来てくださいませんか?勿論、状態が落ち着いていたらという前提ですが。」
「立太子式か、だが私が行ったら周りの目があるし迷惑だろう。」
「周りの目など!!私は、兄上に来ていただきたいのです。兄上にとってご迷惑であれば、これ以上言いませんが・・・」
「そうか・・・。」
「クリス様一緒に参りましょう。アレン様の祝典ですし・・・そのような機会を共に過ごして、私達の思い出を1つずつ増やして行きましょう。」
「アーリーがそう言うなら、出席しよう。」
その言葉を聞き、アレン様は嬉しそうに笑った。
私達がそんな話をしている間に、ヘルゼン王がイルギアス様に何やら指示を出していた。
イルギアス様が頷くと、ヘルゼン王が私たちにテーブルから離れるよう促した。
全員が距離を取ると、音もなくテーブルの足が外れ、天板の円卓だけが床にある状態になり、そのまま泉がふた周りくらい大きくなった。
ヘルゼン王は泉に近づくと、手に持った何かを泉つけるように置いた。
それは姿見の形をした鏡のミニチュアだった。
そのまま、イルギアス様に手で合図すると両手を掲げたイルギアス様は何かを呟いた。すると、グングン姿見は大きくなり、あっという間に見上げるほど大きくなった。鏡の成長が止まると、ヘルゼン王は泉の中に入り鏡面に触れた。懐から金色の鍵を出し鏡面に差し込むと扉を開ける様な仕草をした。
その途端、ザワっと空気が1段重くなったような感覚がした。
ヘルゼン王は「どうやら、上手く繋がったようだ。」
と呟くと私達に手招きをした。
「第1王子、ご令嬢、鏡の前に来てくれ。第2王子は泉の外に居るように。」
鏡の前に行くと、手を繋ぐように言われクリス様と恋人繋ぎをして次の指示を待った。
鏡を覗くと、海のように深い藍色に、時々光が反射して鏡の奥が果てしなく続いているように見える。鏡の中には私達2人だけが映っていた。
「第1王子、これからカイロスの鏡にそなたの見た幻の象徴が映ってくる。そなたが見た幻の婚約者との思い出を描いた絵だ。幻を追い続けるのか、目の前の本物の婚約者を選ぶか選択するのだ。本物の婚約者を選ぶなら、鏡を叩いて絵を打ち壊せ。
──ご令嬢、第1王子が惑ったら泣きわめいても、脅してもいい、口付けてもいい。こちら側に引き戻せ。今日全てを打ち壊せないと思うが、諦めるな。必ず上手く行くと信じるのだぞ。」
私達が頷くと、ヘルゼン王は泉の外に出た。
泉の中には、鏡の前にクリス様と私、鏡の裏にはイルギアス様が立っていた。
「では、始めます。」
イルギアス様の言葉と共に、鏡面が歪み変化していった。
鏡の中は、まるで合わせ鏡のドロステ効果と同じように、同じ画面が幾つも無限に広がっているように見える。但し、私が映るはずの位置には、私ではなく、色々な姿の私の絵が映っていた。
1番手前に出てきた絵に見覚えがあった。それは初めて絵をみたあの日・・・「幽霊じゃありません!足だってありますから‼」と叫んだ日に、光条の間で見た婚礼式の正装をしたクリス様と紫のドレスを着た私の絵だった。嬉しそうに微笑む2人をクリス様がどんな気持ちで描いたのか、胸が痛い。けれど、だからこそ壊さなければならない。
クリス様は、拳を握りしめていたがその手は震えていた。幸せな2人の幻を消すことに恐怖心が消えないようだった。
「クリス様、私、足があるんですよ。」
わざと戯けた様に脚をあげて、意識をこちらに向けさせる。
「遠い東洋の国では、死んだら足が無くなるって話があるんですよ。迷信ですけど私は信じてて・・・可笑しいですよね。ヘルゼン王を見るとちゃんと足がありますし・・・ふふっ。でも、足があるし、ちゃんと私は生きています。クリス様が私としたかったこと、やりたかったこと、全て私と一緒に成し遂げましょう。私はこの絵のクリス様よりもっと貴方を幸せにしたい。だから未来を共に生きましょう。」
「ああ、そうだねアーリー。私も君を幸せにしたい。ずっと共に生きて行きたい。」
そういうと、クリス様は息を深く吸って、握った拳で鏡を叩いた。一度では壊れず、10数回繰り返すと粉々に割れて消えていった。
そして、別の絵が手前に現れ同じように壊していくことを繰り返した。一度で壊れる物もあれば、数度で壊れる物もある。それでわかったのは、クリス様の思い入れが強い物はなかなか壊れず、強くない物は簡単に壊れることだった。
どれくらいその作業を繰り返していたか分からなくなってきた頃、チリン、チリンと鈴の音が辺り一面に響いてきた。だんだんと強く力強く響いてくる。
「この鈴はタイムリミットの合図です。これ以上は危険なので、今日はこれまでにしましょう。」
泉から離れるよう説明され、アレン様の隣に移動する。イルギアス様が手を翳すと、一瞬のうちに泉と鏡が消え去った。残るのは、真っ白なアノーのテーブルと椅子だけとなった。
「これで今日は終いとなる。第2王子、そなたのおかげで助かった。礼を言う。今後はもう、あの3人だけで大丈夫だ。」
「兄上を助けていただいてありがとうございました。」
「いや・・・いいのだ。そなたとは不可思議な奇縁だが、もうこうして言葉を交わすことはないだろう。この国を頼んだぞ。次代のトバルズ王よ」
「はい。必ずこの国を守ります。」
「精霊、そなた達にも感謝する。」
『使者~』
『女神様によろしくね~』
そういうと、精霊達は小人の姿からキラキラした光の玉になり、アレン様の肩辺りからスウッと入り込んで消えていった。
「魔法使い、もう少し時間はあるか?」
「数分程度なら問題ありません」
「第1王子、魔法使い、戻ったらできる限り絵を描く行為は止めることだ。絵を描くことで傷を拡げることになる。習性で直ぐに止まらない場合は時間を徐々に短くすることだ。完全に止めることができれば、それだけ快復が早くなる。
──第1王子、カイロスはチャンスも司る神だ。この機会を取り逃がすな。必ず克服しろ。」
2人が頷くと、今度は私に向かって頭を下げた。
「そなたが姿を消したのは、私に遠因があった。現国王が代わって謝罪していたが・・・悪かった。そなたが幸せになるよう、心から願っている。」
そしてまた軽く頭を下げると、ではな、と言って手を振った。
「ヘルゼン王、本当にありがとうございました。女神様にも感謝の意をお伝えください。」
そうお礼を述べた直後、またこの世界がつよく揺さぶられ、ブレたような衝撃が走った。こうしてヘルゼン王は姿を消した。
「ふぅ、・・・それでは皆様戻りましょう。」
イルギアス様が、両手を空に掲げると、虹色の空から金色の羽根を持つ大きな鳥が舞い降りてきた。
「皆様、この鳥の羽根に掴まってください。決して離してはなりません。」
全員が鳥に掴まると、イルギアス様が唄うように詠唱した。それに釣られるかのように、金色の鳥が空へと飛び立った。
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