2 / 7
2.
しおりを挟む
番選び当日。職員から渡された発情剤を飲み、個室に運ばれる。
個室にあるのはベッドと会場を映し出すためのモニター、そして自分の身体を慰めるためのおもちゃである。
飲み物など欲しいものがある時は頼めば持ってきてもらえるらしい。僕は一度も頼ったことはない。一年目からずっとSランクのユイさんに選ばれているため、番選びが始まってすぐに外に出されるのである。
ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。
それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じて、何度も次を望んだ。一年にたった数日でもいいから選んで欲しかった。
オメガは相手を選べない。モニター越しのアルファに選んでもらうしかない。
番選び自体に参加してもらえなければモニター越しにすら見てもらえなくて、薬で馬鹿になる頭で必死に会場内からユイさんの姿を探すんだ。
今日もモニター越しに彼の姿を見つけた。
他のアルファよりずっとキラキラしているからすぐに気づく。すると今まで以上に身体が火照っていく。
早く僕を選んで。外に連れ出して。
そんな思いで指で後ろの穴を弄った。
--けれどユイさんは僕を選んではくれなかった。
ああ、やっぱり若くて可愛い子がいいんだな。デビューしたばかりの子はまだ誰にも抱かれたことはないから人気なのだ。彼も四年間同じオメガを抱き続けて飽きたのだろう。悲しいけれど、どこか納得している自分がいた。
部屋にやってきたのは初めて見るアルファ。
かっちゃんと同じくらいの身長の彼は僕の肌をじいっと見つめた。その目には一切の性欲はなく、けれども熱心な目でじいっと値踏みをしている。
ユイさん以外の人に抱かれたくない。
けれど受け入れる以外の選択肢がない。涙が溢れそうになるのをぐっと堪え、彼を見つめる。
「うん、この子にします」
「かしこまりました」
彼は職員から何かを受け取ると、水と一緒に「飲みなさい」と渡してくれた。
そのまま毛布で包まれて車に乗せられた。そのまま揺られることしばらく。徐々に身体から熱は抜けていった。先ほど飲まされたのは抑制剤だったのだ。
「身体どう?」
「えっと……楽、です」
「まだ若干頬が赤いな。でも頭はちゃんと働いているようだから、君を選んだ経緯とやってもらいたいことについて説明させてもらう」
彼はそう告げると、タブレットを取り出した。
「これがうちの会社。化粧品とかエステとかをやっている会社で、今度オメガ向けのエステを開発しようという計画が立ち上がっている。顧客はオメガとその番だから、従来のアルファやベータをメインターゲットにしていたサービスよりも気を遣う必要がある。実際、苦情やちょっとした事件になった例もある。そこで君にはテスターになってもらいたい。アルファ視点の方は我が社の番持ちアルファを採用したから、双方の視点から不快に感じた点をまとめつつ、君にはどんなサービスが良かったか・どこを重点的にやって欲しいかの意見や感想が欲しい」
画面をスライドさせながら見せられた製品は見たことのあるものだった。
確かこれらの製品を出しているのは、大手製薬会社 大柴製薬の系列の会社だったはず。肌荒れにとにかく強くて、一時期僕も愛用していた。
それほど大手の会社の人がまさか番選びに来て、僕を選んでくれるなんて……。とても信じられることではなかった。だから純粋な疑問を投げかける。
「なんで、僕だったんですか?」
「一番美容に力を入れていそうだったから。オメガは肌が綺麗な人やボディラインが良い人もたくさんいるが、君みたいに努力して手に入れているオメガのデータは貴重だ。感想をもらえるにしてもよく分からない子連れてくるより多少知識がある子の方が参考になる」
「なるほど」
見た目ではなく努力を認めてくれたという訳か。
あの部屋でじいっと見ていたのは肌質だったのだろう。妙に納得してしまった。
個室にあるのはベッドと会場を映し出すためのモニター、そして自分の身体を慰めるためのおもちゃである。
飲み物など欲しいものがある時は頼めば持ってきてもらえるらしい。僕は一度も頼ったことはない。一年目からずっとSランクのユイさんに選ばれているため、番選びが始まってすぐに外に出されるのである。
ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。
それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じて、何度も次を望んだ。一年にたった数日でもいいから選んで欲しかった。
オメガは相手を選べない。モニター越しのアルファに選んでもらうしかない。
番選び自体に参加してもらえなければモニター越しにすら見てもらえなくて、薬で馬鹿になる頭で必死に会場内からユイさんの姿を探すんだ。
今日もモニター越しに彼の姿を見つけた。
他のアルファよりずっとキラキラしているからすぐに気づく。すると今まで以上に身体が火照っていく。
早く僕を選んで。外に連れ出して。
そんな思いで指で後ろの穴を弄った。
--けれどユイさんは僕を選んではくれなかった。
ああ、やっぱり若くて可愛い子がいいんだな。デビューしたばかりの子はまだ誰にも抱かれたことはないから人気なのだ。彼も四年間同じオメガを抱き続けて飽きたのだろう。悲しいけれど、どこか納得している自分がいた。
部屋にやってきたのは初めて見るアルファ。
かっちゃんと同じくらいの身長の彼は僕の肌をじいっと見つめた。その目には一切の性欲はなく、けれども熱心な目でじいっと値踏みをしている。
ユイさん以外の人に抱かれたくない。
けれど受け入れる以外の選択肢がない。涙が溢れそうになるのをぐっと堪え、彼を見つめる。
「うん、この子にします」
「かしこまりました」
彼は職員から何かを受け取ると、水と一緒に「飲みなさい」と渡してくれた。
そのまま毛布で包まれて車に乗せられた。そのまま揺られることしばらく。徐々に身体から熱は抜けていった。先ほど飲まされたのは抑制剤だったのだ。
「身体どう?」
「えっと……楽、です」
「まだ若干頬が赤いな。でも頭はちゃんと働いているようだから、君を選んだ経緯とやってもらいたいことについて説明させてもらう」
彼はそう告げると、タブレットを取り出した。
「これがうちの会社。化粧品とかエステとかをやっている会社で、今度オメガ向けのエステを開発しようという計画が立ち上がっている。顧客はオメガとその番だから、従来のアルファやベータをメインターゲットにしていたサービスよりも気を遣う必要がある。実際、苦情やちょっとした事件になった例もある。そこで君にはテスターになってもらいたい。アルファ視点の方は我が社の番持ちアルファを採用したから、双方の視点から不快に感じた点をまとめつつ、君にはどんなサービスが良かったか・どこを重点的にやって欲しいかの意見や感想が欲しい」
画面をスライドさせながら見せられた製品は見たことのあるものだった。
確かこれらの製品を出しているのは、大手製薬会社 大柴製薬の系列の会社だったはず。肌荒れにとにかく強くて、一時期僕も愛用していた。
それほど大手の会社の人がまさか番選びに来て、僕を選んでくれるなんて……。とても信じられることではなかった。だから純粋な疑問を投げかける。
「なんで、僕だったんですか?」
「一番美容に力を入れていそうだったから。オメガは肌が綺麗な人やボディラインが良い人もたくさんいるが、君みたいに努力して手に入れているオメガのデータは貴重だ。感想をもらえるにしてもよく分からない子連れてくるより多少知識がある子の方が参考になる」
「なるほど」
見た目ではなく努力を認めてくれたという訳か。
あの部屋でじいっと見ていたのは肌質だったのだろう。妙に納得してしまった。
98
あなたにおすすめの小説
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
【BL】声にできない恋
のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ>
オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
手切れ金
のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。
貴族×貧乏貴族
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる