嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中

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 番選び当日。職員から渡された発情剤を飲み、個室に運ばれる。
 個室にあるのはベッドと会場を映し出すためのモニター、そして自分の身体を慰めるためのおもちゃである。

 飲み物など欲しいものがある時は頼めば持ってきてもらえるらしい。僕は一度も頼ったことはない。一年目からずっとSランクのユイさんに選ばれているため、番選びが始まってすぐに外に出されるのである。

 ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。
 それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じて、何度も次を望んだ。一年にたった数日でもいいから選んで欲しかった。

 オメガは相手を選べない。モニター越しのアルファに選んでもらうしかない。
 番選び自体に参加してもらえなければモニター越しにすら見てもらえなくて、薬で馬鹿になる頭で必死に会場内からユイさんの姿を探すんだ。

 今日もモニター越しに彼の姿を見つけた。
 他のアルファよりずっとキラキラしているからすぐに気づく。すると今まで以上に身体が火照っていく。

 早く僕を選んで。外に連れ出して。
 そんな思いで指で後ろの穴を弄った。


 --けれどユイさんは僕を選んではくれなかった。
 ああ、やっぱり若くて可愛い子がいいんだな。デビューしたばかりの子はまだ誰にも抱かれたことはないから人気なのだ。彼も四年間同じオメガを抱き続けて飽きたのだろう。悲しいけれど、どこか納得している自分がいた。

 部屋にやってきたのは初めて見るアルファ。
 かっちゃんと同じくらいの身長の彼は僕の肌をじいっと見つめた。その目には一切の性欲はなく、けれども熱心な目でじいっと値踏みをしている。

 ユイさん以外の人に抱かれたくない。
 けれど受け入れる以外の選択肢がない。涙が溢れそうになるのをぐっと堪え、彼を見つめる。

「うん、この子にします」
「かしこまりました」

 彼は職員から何かを受け取ると、水と一緒に「飲みなさい」と渡してくれた。
 そのまま毛布で包まれて車に乗せられた。そのまま揺られることしばらく。徐々に身体から熱は抜けていった。先ほど飲まされたのは抑制剤だったのだ。

「身体どう?」
「えっと……楽、です」
「まだ若干頬が赤いな。でも頭はちゃんと働いているようだから、君を選んだ経緯とやってもらいたいことについて説明させてもらう」

 彼はそう告げると、タブレットを取り出した。

「これがうちの会社。化粧品とかエステとかをやっている会社で、今度オメガ向けのエステを開発しようという計画が立ち上がっている。顧客はオメガとその番だから、従来のアルファやベータをメインターゲットにしていたサービスよりも気を遣う必要がある。実際、苦情やちょっとした事件になった例もある。そこで君にはテスターになってもらいたい。アルファ視点の方は我が社の番持ちアルファを採用したから、双方の視点から不快に感じた点をまとめつつ、君にはどんなサービスが良かったか・どこを重点的にやって欲しいかの意見や感想が欲しい」

 画面をスライドさせながら見せられた製品は見たことのあるものだった。
 確かこれらの製品を出しているのは、大手製薬会社 大柴製薬の系列の会社だったはず。肌荒れにとにかく強くて、一時期僕も愛用していた。

 それほど大手の会社の人がまさか番選びに来て、僕を選んでくれるなんて……。とても信じられることではなかった。だから純粋な疑問を投げかける。

「なんで、僕だったんですか?」
「一番美容に力を入れていそうだったから。オメガは肌が綺麗な人やボディラインが良い人もたくさんいるが、君みたいに努力して手に入れているオメガのデータは貴重だ。感想をもらえるにしてもよく分からない子連れてくるより多少知識がある子の方が参考になる」
「なるほど」

 見た目ではなく努力を認めてくれたという訳か。
 あの部屋でじいっと見ていたのは肌質だったのだろう。妙に納得してしまった。
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