嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中

文字の大きさ
5 / 7

5.

しおりを挟む
「分かった。一度だけ会ってあげる。といっても僕は選ばれるのを待つだけだし、他の人に選ばれたら断れないけど」
「それは大丈夫。相手はSランクで、オメガを選んだのは今回が初めてだから。このリボンを見える位置につけておいて欲しいってさ」
「ん、分かった」

 モニター越しでも人違いだと気づくだろう。選ぶ・選ばないはアルファ側の自由。沢山のオメガの中からすぐに僕が候補だと判断してもらえるようにとリボンを受け取る。

 当日はブラウスを着て、首につけておけばいいか。

 渡されたのはかっちゃんの髪よりも少しだけ明るい緑色のリボンだった。

 よく晴れた日に太陽の光を浴びたかっちゃんの髪の色とよく似ている。普段は暗めだけどお日様の元だと色を変えるんだ。

 僕が二番目に大好きな色。一番はかっちゃんでも譲れない。銀色の、ユイさんの髪の色。

 もう見ることは出来なくともきっとこの順位が生涯変わることはない。そのくらい初めて見たときから衝撃的だったのだ。

 ああ、こんな綺麗な人いるんだって。一度抱かれたらあの色を忘れられるはずがない。
 その日の夜に食事と一緒に出された避妊薬は今まで飲んだどんな薬よりも不味かった。毎年飲んでいるはずなのに。ここ数日、美味しい食事ばかり食べていたからかな。あまりの不味さに涙が溢れた。

 他の誰かがユイさんの話をするのを聞きたくなかった。
 だからかっちゃんの作業を手伝うことにした。

「手伝わせてごめん」
「いいよ。気にしないで」

 かっちゃんは例のアルファのために、オメガの情報を集めるようになったのだ。そして一冊の本にまとめるのだと。個人で見ていると分からなくても、まとめてデータとして見れば新しく気づくこともあるんじゃないかと。

 なんともかっちゃんらしい理由である。

 二人でせっせと情報をまとめていると、次第に他のオメガが集まるようになった。
 手伝うから、まとめ終わったものをコピーさせて欲しいと言うのだ。

 施設の外に出れば、中の友人と再会することは難しい。だから彼らは卒業アルバムのようなものをほしがった。といっても写真だって残せないから、人物絵が得意な子がそれぞれの顔の絵を描いてくれた。


 一年後にはそこそこの厚さのものが出来て、かっちゃんの二人で番選びの前に紙を折ってまとめていく。

 製本作業なんて初めてだ。穴を開けて紐を通すだけだけど、スキンケアをする暇なんてないほど。大変だったけど、笑顔で受け取ってくれたから報われたような気分になった。

 お手製アルバムを受け取ったオメガのうち、数日後に会えなくなる子は何人いるのだろう。

 みんながアルバムを抱えていなくなってくれれば良いのに。
 施設の外で、大事にされながら幸せに暮らしてくれれば良いのにと。そんな夢みたいなことを考えながら眠りに就いた。


 今年は誰に選ばれるのか。
 人違いなのは確実だが、去年かっちゃんを選んだ人に選ばれたらお土産でも持たされて返されるのだろう。そうして欲しいような、誰でもいいから抱いて欲しいような。大柴さんみたいな人だと一年間変に考え込んでしまいそうだよなぁと。

 そんなことを思いながらリボンを結んで会場へと向かった。

 発情剤を飲めばすぐに身体が熱くなる。
 いつもよりも効きがいい。薬の成分が変わったのだろうか。黒服の腕の中に倒れ込めばそのまま意識を手放した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

【BL】声にできない恋

のらねことすていぬ
BL
<年上アルファ×オメガ> オメガの浅葱(あさぎ)は、アルファである樋沼(ひぬま)の番で共に暮らしている。だけどそれは決して彼に愛されているからではなくて、彼の前の恋人を忘れるために番ったのだ。だけど浅葱は樋沼を好きになってしまっていて……。不器用な両片想いのお話。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。

下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。 文章がおかしな所があったので修正しました。 大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。 ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。 理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、 「必ず僕の国を滅ぼして」 それだけ言い、去っていった。 社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

処理中です...