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幼馴染達と女の子達
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ホイッスルが鳴って選手達がグラウンドへと戻って行く時、汀は使っていたタオルをベンチに置いたが、それをすかさず手にして高野さんはそれを抱きしめた。
ーああ、あの子はほんとにみーくんの事好きなんだなーと伝わる光景である。
ー羨ましいなぁ…ーそんなことをふと思ってしまった時に、試合開始のホイッスルで我に帰った。
ーなんか今日は変だな俺ー内心苦笑して、また白熱しそうな試合に集中する。
後半は、秋に引退した先輩方は受験疲れもあり既に疲れが見え始めていて、そこをついてはゴールを狙うが、先輩GKは強かった。
このGK先輩はなんとサッカーで進学したほどの実力なので、中々崩せるとは後輩達も思ってはいなかったが、想像以上に敵にしたらダメな先輩だった。
「木村!サイドサイド回れ!」
「いいぞこっちだ、こい!」
声がかかりまくって、どうにか先輩GKの牙城を崩そうと頑張る在校生達。
左からさっきの木村君が回り込み、もらったパスを2.3ドリブルした後ゴール前中央やや右寄りにクロスを上げる。
そこにいたのは汀で、高身長を生かして飛び上がりヘッドでゴールを狙った。
ヘディングでくるからと、先輩GKは決めうちで上からのシュートを想定したように飛び上がったが、汀はそれを瞬間見ていて地面に叩きつけるシュートでGKの足元をねらい、それは思惑通り足元を掠めネットを揺らした。
歓声がグラウンドに響き渡る。
遥翔も大声をあげて飛び上がり、やったー!と歓声に紛れて声をあげた。
かっこよかった。ジャンプした瞬間も、ヘディングのためにボールを見つめる瞬間も、一瞬で地面に叩きつける判断をした瞬間も全てがなぜだか全部見えていた。
「汀ーーーーーー!ナイッシューーー!」
突然声をあげた学校の子じゃない人が汀を呼び捨ててくるのを、周りの人間は驚いて見つめる。
みんなにもみくちゃにされていた汀だったが、その声に気づいて白い歯をニカっとみせて拳をふりあげてくれた。
それに応えて拳を振り上げた遥翔は、周りの視線に気付き
「いや~あはは、幼馴染なんですよ~。いいシュートでしたね」
となんでか周りに説明しながらシュートを称えた。
「あ、ちょっと聞いたことある。本庄が医者目指してる幼馴染がいるって言ってた」
隣にいた女の子がそう言ってくるのにー個人情報言い過ぎですよね~ーと笑いながらーそれですーと答えて、そこだけ随分親しい感じでそれからの試合も観戦できた。
その時にさりげなく得た情報としては、高野さんは彼女ではなく汀のことが好きな子だという。
近々告る予定だと聞いていると、隣にいた女子は言っていたがさっきのをみるともう周り公認だよね、という程らしかった。
「なるほどね」
まあ、そういうこともあるよな、みーくんかっこいいし、などと思いながら1点とってからはより鉄壁になったGKの壁をこじ開けることはできず、その間に疲れていた先輩達は後輩に負けるという不名誉は着たくなかったのか、なんとかもう一点追加して2-1で勝ちをもぎ取った。
実際この恒例の最後の試合で、先輩が負けたり引き分けは今までなかったので、少し焦ったのだろう。それでも勝ったのだから凄い。
試合後、ベンチで先輩後輩全員入り混じって靴を履き替えたり、まだ汗をかいたユニフォームでいるのは肌寒いからと着替えが始まり、各々がタオル等で体を拭きながら談笑していた。
遥翔の所へTシャツを着ながら歩いてきた汀は
「遥翔、悪いんだけど帰りこのままカラオケで先輩達と今度は歌バトルってことになっちゃってさ、1人で帰れるかな。道分からなかったら一度俺送って行くけど」
車で送ってはもらったが、中学の学区内である。
近くに祖父母ときたスーパーがあったのも確認できていたし大丈夫だろう。
「平気だよ。楽しんでおいで。学区内だもん歩いて帰れるし」
「なんならあたし達が送ってくよー」
隣で一緒に観戦していたさっきの女の子が割って入ってきてそう言ってくる。
「横山と相澤かよ、もっと心配じゃねーか」
笑ってそういう汀に
「なんでよ!本庄のくせに!」
そう言われるのを、笑って流して、
「って言ってるけどどうする?」
と遥翔に聞いてきた。
「せっかくだから、横山さん?と相澤さんだっけ、と一緒にプリでも撮って帰ろうかな」
割とノリのいい遥翔に意外だなと汀は驚いた。
「悪さすんなよ?」
汀はその言葉を、遥翔にではなく女子2人に言う。
「それはあたし達にいうセリフなの?流石に怒るよ?本庄?でも~この人なら悪さされてもいいかもぉ~~」
少しだけ背の高い遥翔を見上げて、横山さんが腕を掴んでゆらゆらした。
「遥翔です。はるとって呼んでね。悪さはしないけど」
「はると~~可愛い名前~」
横山さんの向こう側にいた相澤さんも横山さんの逆側から遥翔の横に来てやっぱり腕をゆさゆさする。
「おいおい、遥翔は一個上だからな。さんつけろ?」
「本庄だって呼び捨て~」
「俺は幼馴染の特権があるんだよ。じゃあ頼んだ。遥翔、奢らなくていいからね。そんな時ばっか歳上でしょうって言ってくるから」
笑ってそう言いながら手を振って去ってゆく汀にー本庄~~おぼえとけ~ーと下品な中指を立てる女の子に遥翔も笑いながら、ー汀~また後で~ーと声をかけて、女の子と連れ立って歩き始めた。
その後ろ姿を、汀も複雑な気持ちで見送っている。
「本庄君」
呼ばれて向いてみると、高野さんがドリンクを持って立っていた。
「あ、ありがとう」
そのまま横に立ってベンチへ向かう2人を今度は遥翔が、回り込んだ校庭の端からみる。
そしてそのまま校庭を後にした。
遥翔[見て見て、横山さんと相澤さんと撮ったよ]
カラオケもたけなわな頃、汀のLIMEが鳴った。
遥翔からで、そこには猫耳を生やした3人が『にゃー』とでも言ってそうに両手を顔の脇で緩く結んだポーズや、縦に頭を並べてなんとかポール~とか面白おかしく撮られたものが次々添付されてきた。
汀[楽しんでるじゃん。こっちは試合と逆で、先輩音程外す人多くて俺ら優勢]
中の様子を一枚撮って遥翔に送ってやる。
ごちゃごちゃしてて薄暗いし、結果何が何やら分からない画像だ。
お互いそれをニヤニヤしながら見ていたが、
遥翔[先輩たち最高じゃん(笑)ね、これよくない?俺の顔最高でしょ]
そう言って送られてきた画像に、汀は一瞬でモヤっとした。
女子2人に両側からほっぺにちゅうのポーズをとられ真ん中で寄り目になってタコみたいな口をしている遥翔の画像。
いや、別にキスしてるわけじゃないし、イヤイヤしたとしたってこんなの遊びだし確かに遥翔の顔面白いし…え?でもなんかモヤる…な感情がぐるぐると渦巻いてくる。
「本庄君、はい」
相変わらず隣にいる高野さんが、次の番になっていた汀にマイクを向けてきたが、ムカついていた汀は
「今はいいから」
とちょっと冷たく言ってしまった。
驚いた顔をしている高野さんを庇うように、同級生が
「おいおい本庄、お前の番だっつの。歌わないのは無しだからな。今はいいからじゃないのよほれ」
とマイクを差し出してくる。
言われてハッと高野さんをみるが、苦笑いをしていてちょっとかわいそうだった。
「あ、ごめんね。ちょっとLIMEで嫌なこと言われて、高野さん関係ないのにねごめん」
「ううん、こっちこそ急に声かけたし」
態度が戻った汀に安心して、高野さんは笑ってくれて、それに応えるように
「8番本庄汀!白日歌います!」
宣言して立ち上がり、あの高音の歌をどう歌うのかみんな興味津々だったが、それはもうネタでしかなく、汀は見事に外しまくってお笑いの道を選んでいった。
「引っ込め音痴ー」
色々言われるのに手を挙げて応えて、最後まで歌い切ったのは立派だ。
ーああ、あの子はほんとにみーくんの事好きなんだなーと伝わる光景である。
ー羨ましいなぁ…ーそんなことをふと思ってしまった時に、試合開始のホイッスルで我に帰った。
ーなんか今日は変だな俺ー内心苦笑して、また白熱しそうな試合に集中する。
後半は、秋に引退した先輩方は受験疲れもあり既に疲れが見え始めていて、そこをついてはゴールを狙うが、先輩GKは強かった。
このGK先輩はなんとサッカーで進学したほどの実力なので、中々崩せるとは後輩達も思ってはいなかったが、想像以上に敵にしたらダメな先輩だった。
「木村!サイドサイド回れ!」
「いいぞこっちだ、こい!」
声がかかりまくって、どうにか先輩GKの牙城を崩そうと頑張る在校生達。
左からさっきの木村君が回り込み、もらったパスを2.3ドリブルした後ゴール前中央やや右寄りにクロスを上げる。
そこにいたのは汀で、高身長を生かして飛び上がりヘッドでゴールを狙った。
ヘディングでくるからと、先輩GKは決めうちで上からのシュートを想定したように飛び上がったが、汀はそれを瞬間見ていて地面に叩きつけるシュートでGKの足元をねらい、それは思惑通り足元を掠めネットを揺らした。
歓声がグラウンドに響き渡る。
遥翔も大声をあげて飛び上がり、やったー!と歓声に紛れて声をあげた。
かっこよかった。ジャンプした瞬間も、ヘディングのためにボールを見つめる瞬間も、一瞬で地面に叩きつける判断をした瞬間も全てがなぜだか全部見えていた。
「汀ーーーーーー!ナイッシューーー!」
突然声をあげた学校の子じゃない人が汀を呼び捨ててくるのを、周りの人間は驚いて見つめる。
みんなにもみくちゃにされていた汀だったが、その声に気づいて白い歯をニカっとみせて拳をふりあげてくれた。
それに応えて拳を振り上げた遥翔は、周りの視線に気付き
「いや~あはは、幼馴染なんですよ~。いいシュートでしたね」
となんでか周りに説明しながらシュートを称えた。
「あ、ちょっと聞いたことある。本庄が医者目指してる幼馴染がいるって言ってた」
隣にいた女の子がそう言ってくるのにー個人情報言い過ぎですよね~ーと笑いながらーそれですーと答えて、そこだけ随分親しい感じでそれからの試合も観戦できた。
その時にさりげなく得た情報としては、高野さんは彼女ではなく汀のことが好きな子だという。
近々告る予定だと聞いていると、隣にいた女子は言っていたがさっきのをみるともう周り公認だよね、という程らしかった。
「なるほどね」
まあ、そういうこともあるよな、みーくんかっこいいし、などと思いながら1点とってからはより鉄壁になったGKの壁をこじ開けることはできず、その間に疲れていた先輩達は後輩に負けるという不名誉は着たくなかったのか、なんとかもう一点追加して2-1で勝ちをもぎ取った。
実際この恒例の最後の試合で、先輩が負けたり引き分けは今までなかったので、少し焦ったのだろう。それでも勝ったのだから凄い。
試合後、ベンチで先輩後輩全員入り混じって靴を履き替えたり、まだ汗をかいたユニフォームでいるのは肌寒いからと着替えが始まり、各々がタオル等で体を拭きながら談笑していた。
遥翔の所へTシャツを着ながら歩いてきた汀は
「遥翔、悪いんだけど帰りこのままカラオケで先輩達と今度は歌バトルってことになっちゃってさ、1人で帰れるかな。道分からなかったら一度俺送って行くけど」
車で送ってはもらったが、中学の学区内である。
近くに祖父母ときたスーパーがあったのも確認できていたし大丈夫だろう。
「平気だよ。楽しんでおいで。学区内だもん歩いて帰れるし」
「なんならあたし達が送ってくよー」
隣で一緒に観戦していたさっきの女の子が割って入ってきてそう言ってくる。
「横山と相澤かよ、もっと心配じゃねーか」
笑ってそういう汀に
「なんでよ!本庄のくせに!」
そう言われるのを、笑って流して、
「って言ってるけどどうする?」
と遥翔に聞いてきた。
「せっかくだから、横山さん?と相澤さんだっけ、と一緒にプリでも撮って帰ろうかな」
割とノリのいい遥翔に意外だなと汀は驚いた。
「悪さすんなよ?」
汀はその言葉を、遥翔にではなく女子2人に言う。
「それはあたし達にいうセリフなの?流石に怒るよ?本庄?でも~この人なら悪さされてもいいかもぉ~~」
少しだけ背の高い遥翔を見上げて、横山さんが腕を掴んでゆらゆらした。
「遥翔です。はるとって呼んでね。悪さはしないけど」
「はると~~可愛い名前~」
横山さんの向こう側にいた相澤さんも横山さんの逆側から遥翔の横に来てやっぱり腕をゆさゆさする。
「おいおい、遥翔は一個上だからな。さんつけろ?」
「本庄だって呼び捨て~」
「俺は幼馴染の特権があるんだよ。じゃあ頼んだ。遥翔、奢らなくていいからね。そんな時ばっか歳上でしょうって言ってくるから」
笑ってそう言いながら手を振って去ってゆく汀にー本庄~~おぼえとけ~ーと下品な中指を立てる女の子に遥翔も笑いながら、ー汀~また後で~ーと声をかけて、女の子と連れ立って歩き始めた。
その後ろ姿を、汀も複雑な気持ちで見送っている。
「本庄君」
呼ばれて向いてみると、高野さんがドリンクを持って立っていた。
「あ、ありがとう」
そのまま横に立ってベンチへ向かう2人を今度は遥翔が、回り込んだ校庭の端からみる。
そしてそのまま校庭を後にした。
遥翔[見て見て、横山さんと相澤さんと撮ったよ]
カラオケもたけなわな頃、汀のLIMEが鳴った。
遥翔からで、そこには猫耳を生やした3人が『にゃー』とでも言ってそうに両手を顔の脇で緩く結んだポーズや、縦に頭を並べてなんとかポール~とか面白おかしく撮られたものが次々添付されてきた。
汀[楽しんでるじゃん。こっちは試合と逆で、先輩音程外す人多くて俺ら優勢]
中の様子を一枚撮って遥翔に送ってやる。
ごちゃごちゃしてて薄暗いし、結果何が何やら分からない画像だ。
お互いそれをニヤニヤしながら見ていたが、
遥翔[先輩たち最高じゃん(笑)ね、これよくない?俺の顔最高でしょ]
そう言って送られてきた画像に、汀は一瞬でモヤっとした。
女子2人に両側からほっぺにちゅうのポーズをとられ真ん中で寄り目になってタコみたいな口をしている遥翔の画像。
いや、別にキスしてるわけじゃないし、イヤイヤしたとしたってこんなの遊びだし確かに遥翔の顔面白いし…え?でもなんかモヤる…な感情がぐるぐると渦巻いてくる。
「本庄君、はい」
相変わらず隣にいる高野さんが、次の番になっていた汀にマイクを向けてきたが、ムカついていた汀は
「今はいいから」
とちょっと冷たく言ってしまった。
驚いた顔をしている高野さんを庇うように、同級生が
「おいおい本庄、お前の番だっつの。歌わないのは無しだからな。今はいいからじゃないのよほれ」
とマイクを差し出してくる。
言われてハッと高野さんをみるが、苦笑いをしていてちょっとかわいそうだった。
「あ、ごめんね。ちょっとLIMEで嫌なこと言われて、高野さん関係ないのにねごめん」
「ううん、こっちこそ急に声かけたし」
態度が戻った汀に安心して、高野さんは笑ってくれて、それに応えるように
「8番本庄汀!白日歌います!」
宣言して立ち上がり、あの高音の歌をどう歌うのかみんな興味津々だったが、それはもうネタでしかなく、汀は見事に外しまくってお笑いの道を選んでいった。
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